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【完結】天ノ恋慕(旧:太陽の少年は月を討つ)  作者: ねこかもめ
第三章:乖離
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3-22.防人との共同作戦

 ──ウルスリーヴル国、南西


 地表と月を結ぶ鎖の破壊を目論む一行が入国した翌日。


ユウキとアインズは、騎士団と似た役割を持つ

防人の桜華を仲間に加えて鎖へ向かう。


ポリアは戦いに参加させられない為、

城で預かってもらうことに。


「今日の作戦はこう」


天舞音から指示を受けてきた

桜華が、二人にそれを伝達する。


「まず、防人、ユウキ殿たちと私、防人の並びで鎖に向けて進軍。着いたら防人が周囲を警戒。その間に鎖を調べるなり、壊すなりするよ」


バケモノが分散しない島での調査は、

おそらくニューラグーンの時よりも危険が伴う。


天舞音が鎖の破壊に積極的な事もあり、

かなり手厚い支援をしているようだ。


「助かります。それで、鎖の破壊についてなんですけど……」


桜華がユウキらと行動を共にするなら、

月長石や鎖の守護者、例の神殿について話しておく必要があろう。


理解してもらえるかは別にして、とりあえず一通りを説明する。


「あはははははっ、変な神殿に転移? ゴメンねユウキ殿。私、もう御伽噺で喜ぶような歳じゃないの」


「いや、本当ですって」


「戦い前の緊張を、ほぐそうとしてくれたんでしょ? あんがとね」


「ダメだ、全く聞いてない……」


──ま、実際に見れば解るか


何を言っても信じてもらえなそうだと、伝達を諦めたユウキ。


「人の話を聞かないから、客と罪人を間違えるのよ」


そこへ、アインズが水を差した。


「うわ、しつこ!」


「いやぁ傷ついたわ〜」


「あんまりネチっこいと、モテな──」


「……っ!」


──アインズさん?!


無礼な発言をする桜華の両頬を、

アインズは右手の親指とその他で掴んだ。


恐ろしいことに、笑顔のまま。


「なにか?」


「ごご、ごべんだだい」


「ちょっと、仲良くしてくださいよ? これから共闘するんですから」


「心配無いわ、仲良しだもの。ねえ?」


──どこが?!


「ユウキ殿、この人と旅してるの? ちょ〜怖──わわっ! ごめんなさい嘘だってば! 嘘!」


全く懲りる様子のない桜華。


アインズが剣の柄を握ったところを見て、慌てふためいた。


──何なんだ、この人?


防人の中でも、トップの位である桜華。

そんな肩書きとのギャップに、ユウキはただただ混乱している。


──時々、丁寧じゃない言葉が出るし


──もしかして、元ごろつきとか?


──いや、まさかな


「んんっ! とにかく、さっきの作戦で行くから。よろしく!」


「よろしくお願いします、桜華さん」


「ええ、よろしく」


──よかった、ちゃんと協力できそう


「うんうん。親しき仲にも何とやら、だね」


「いやこっちのセリフよ」


──あれ、やっぱダメかも?!




 最後尾の方から笛の音が聞こえた。作戦開始の合図だ。


 先頭の防人——十名ほどから順に進む。


「いよいよね」


「そうですね。またあの場所に飛ばされるかもしれないし、警戒しておかないと」


「ええ。安全な状態で転移するとは限らないしね」


前回はたまたま、バケモノも何も居ない場所に行った。


だが今回はどうだろう。


カマイタチと戦ったフロア以下は、全て崩落した。

いきなり守護者の目前に……なんて事もあり得る。


「ところでお二人は、なんで旅を? 鎖を壊して回ろうなんて、かなり突拍子も無い話だと思うんだけど」


周囲を警戒しながらも、雑談と言った話し方でもって問う。


「えっと、何処から話そうかな……」


話の起点を決めかねている風を装うが、

ユウキが迷っていたのは、自身の出身についてである。


桜華を始めとしたウルスリーヴルの人々が、

バケモノの出現やクライヤマについてどう考えているか。


——まあ、しょうがないか


「僕は……クライヤマの人間なんです」


意を決して告白したユウキ。

激しい緊張に苦しみながら、まずは桜華の反応を伺う。


「うんうん」


——あれ?


 何一つ驚く様子を見せない彼女。

こうも落ち着いていられると、ユウキは逆に驚かされる。

ニューラグーン国王のような反応を想像していたためである。


「クライヤマでは、日の巫女を信仰する形で生活が営まれてました」


「……ました?」


「ええ。ある時、不幸が続いて……巫女様は……」


「……」


もう何度も話したことだが、

やはり思い出すたびに悲しみが呼び起こされる。


涙を堪えながら、少年は続きの説明を再開。


「ここからは何が起きたのか、僕も分かりません。目が覚めたら月が落ちて鎖が刺さり、クライヤマは月の影に覆われて、奴らの産地になってました。クライヤマの住人も、みんな殺されました」


「でも、ユウキ殿は生き残ったんでしょ?」


「はい。殺される直前、アインズさん率いるブライトヒルの騎士の方々が、助けてくれたので」


「へえ……え、率いるって、あなた、偉い人だったの⁈」


「王国騎士団第一部隊長、だけど?」


「そうなんだ……なんか、意外」


「あなたには世界で一番言われたくないわね」


——また始まった


口論が激化する前にと、ユウキは二人を遮ってまた話を始める。


「で、助かった僕は、クライヤマに対する疑念を知ったんです」


「疑念?」


「……ええ。クライヤマの巫女がバケモノを生み出して、世界侵略を目論んでいる……巫女は邪神だって。あれ、ウルスリーヴルでは、そういう話は無いんですか?」


「あ~、まあ聞いたことはあるけどさ。天舞音様が仰ったように、ここでは、外界に興味が無い人も多いから」


「なるほど」


 知らぬが故に巫女やクライヤマを恐れる人。


それはブライトヒルにも、ニューラグーンにも

存在した大多数の人だ。


対して、ここウルスリーヴルでは、

知らないを極めた人が多いという。


中途半端に知っているからこそ、憶測が生まれる。


しかし、完全に知らなければ、

憶測を創り上げるパーツすら持っていない事になる。


「けど、ブライトヒルでも、ニューラグーンでも、一部の人には理解してもらえたんです」


「なるほどね。じゃあ、巫女様の潔白を示そうってのが、ユウキ殿の目的?」


「はい。それと、もう一つ」


カマイタチの言葉を思い返す。


——巫女様の大切な月長石に触れた


「どこかに、日の巫女と対になる存在が居る……かもしれない」


「対に?」


「信じてもらえるかは分かりませんけど、言葉を話すバケモノが居るんです。そいつが、それらしいことを言っていました。確証はないですけど、もしそんなのが居るなら、僕は——」


「——復讐って事?」


「……え?」


言葉を遮られたユウキは、桜華の声のトーンが、

これまでと全く異なっていたことに驚いた。


茶化そうという意思など、

粉微塵ほども感じさせない声色であった。


「その存在に、故郷を滅ぼされた報復をしたいの?」


「それは……」


「オススメはしない、かな……」


「まるで経験者みたいね」


「……まあ、色々とね」


桜華の視線はその場の誰にでもなく、

どこか遠くに向いていた。


そこへ、慌てた様子の防人がやって来た。



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