3-20.報復の終幕
「ち、畜生……クソガキがあああああっ!」
そうと解った桜華。
抜きやすいように帯から鞘を抜いて左手に持った。
「こうなったら、あんたも同じだね。下に居たコマ達とさ!」
「ぐおおおおっ!?」
桜華に斬りかかり、また無数の反撃を貰う男。
顔や胴体はもう傷だらけだが、致命傷には至らない。
──居合の熟練が足りないのかな
「くそ、くそ、くそ!」
「しぶといね、ホントに!」
このままでは埒が明かない。
意を決し、桜華はとどめの一撃をあてに行った。
「お終い!」
納刀したまま走り、敵の目の前で抜いてやろうとした。
が、男は両足にオーラを纏わせ、高速で横に回避。
「な──」
「おら!」
「ううっ!」
──し、しまった、刀を!
そのまま手を蹴られ、思わず刀を放してしまった。
飛ばされた刀は、鞘に収まったまま階下へと転げ落ちていく。
「はぁ……はぁ……さあ、今度こそ終ぇだ!」
──や、やばい?!
「死ね!」
刀を振り上げた。
足から左腕にオーラを移し、
まさに最後の一撃と言わんばかりの形相で迫る。
「桜華!」
ふと名を呼ばれ、そちらを見る。
小町が自身の帯から抜いた刀を、
桜華に向けて放っていた。
「……っ! あんがと、小町!」
ギリギリでキャッチし──
「とどめ!」
男の攻撃に合わせて抜く。
桃色のオーラが、より激しく溢れる。
「うぐ──ぐはっ!」
男はついに床に倒れた。
「はぁ……お、終わった……?」
念の為、背中から刀を刺すも反応がない。
死んだのだ。
スサノオと大蛇の戦いは、大蛇の勝利で幕を閉じ──
「──小町後ろ!」
「……え?」
振り向くと、小町に向けて刀を
振り上げる血塗れの男が一人。
長ではない、ただの構成員だ。
「や、やめ──」
「小町ーっ!」
彼女はすぐには立てない。
桜華も立てずにいた。
能力を覚醒させた反動であろう。
──そんな
──せっかく勝ったのに
──せっかく終わったのに
終わりよければ全てよしと
言うのなら、その逆もまた然り。
──嫌だ
──嫌だよ
──誰か……助けて!
ただただ祈った。
誰でもいいから助けてくれと。
神様でもなんでも良いと。
……グシャッという音が、桜華の鼓膜を振るわせた。
暫く目を開けられなかった彼女だが、
自身に攻撃が来ない事を不思議に思い、前を見た。
「あんた……なんで、ここに……?」
ハッキリと小町の声でそう聞こえた。
彼女が見上げる方を、桜華もまた見る。
「防人……?」
一年ほど前、桜華のアジトに現れた、
高貴な女性の防人が立っていた。
スサノオ構成員の血を払い、刀を鞘に収める。
「……まったく、無茶をしおって。五人の子供が駐屯所に駆け込まなければ、どうなっていた事やら」
「なんで……」
「ん?」
「なんで、助けたの?」
「何故もへちまもあるか」
「悪党にかける情けなど無いって、そう言ってたのに」
「盗賊に襲われる哀れな少女達を助けたつもりじゃったが、違ったかえ?」
「……」
「あっ、私らの仲間たちは?!」
「保護した。何人かは逃げたようじゃがな」
部下たちには本当に済まない
事をしたと、桜華は心で何度も謝罪をする。
「……で、私も小町も捕まると。これだけの事やらかしたら、斬首にでもなる?」
ふらつきながら立ち上がり、脇腹を押さえる小町に肩を貸す。
「甘ったれるな。死罪になどするものか」
「……え?」
「牢には入ってもらうがな」
「……ま、どうせ帰る所無いし。ね、小町?」
「あんたの前向きも、そこまで行くと引くわね」
「おい」
「茶番は済んだか? 縛らせてもらうぞ」
刀を置き、特に抵抗すること無く縛られた。
部下たちの顔を見ることも出来ず、二人は連行。
淡く地上を照らす月明かりの下、
ウルスリーヴル城へと向かう。
かくて、大蛇創設メンバー、
桜華と小町の復讐劇は閉幕したのであった。




