3-16.家族の仇討ち
──夜が来た。
桜華の率いる班が、スサノオのアジトに侵入。
足音をたてぬよう、慎重に進む。
空気は冷えているが、彼女らの体は火照っている。
上がる息を必死に堪えながら奥へ。
「はっはっは! こりゃあ凄い」
「ああ、暫くは豪遊だな」
ふすまの向こうから、数人の談笑が聞こえた。
盗んだ宝を売り捌き、得た金を見て高笑いしている。
「……」
桜華の拳が強ばる。
──ダメ
──冷静にならないと
熱くなっては、敵も己も見えなくなる。
深呼吸をして心の平静を保つ。
──よし、作戦開始!
廊下の壁には、まだ蝋燭が煌々と輝いている。
部屋の仕切りが障子でなかったことに
感謝しながら、その火を使って煙玉に点火。
爆発する数秒前にふすまを少し開き、中へ投げ込んだ。
「な、なんだ?!」
「煙玉だ、気を付けろ!」
ここまでの流れは見た事があった。
桜華のアジトが防人に占拠された時と同じパターンだ。
経験済みであるが故に、彼女は冷静かつ
自信を持って十人の部下に命ずる。
「大蛇、突撃!」
勢いよくふすまを開き、メンバーが突入する。
ここまでも同じだが、一つ、大きく異なる点があった。
「ふんっ、はああっ!」
「ぐおおっ?!」
「そこっ!」
「ぎゃああああっ!」
──許さない
──絶対、許さない!
それは、桜華の心持ちである。
防人には恨みが無い彼女は、以前は無力化に専念した。
だが今回は違う。
敵は、家族の仇とも言える盗賊だ。
「でやあっ!」
「ぐはっ!」
躊躇いなど無い。
これまで圧縮し続けた憎悪を全て解き放つ。
普段のおちゃらけた態度は、
その裏返しであったと言う様である。
──よくも!
──よくも、よくも!
剣の無くなった祭壇を前にして。
家族の遺体を前にして。
真っ赤に染った育ての親を前にして。
幼いながら、小さく小さく凝縮した
怒りを、今ここで、全て爆発させる。
冷静になれと己に聞かせた桜華だが、
そんな言霊は無へと帰した。
「はぁ……はぁ……」
もう、何人斬ったかも忘れ果てた。
「……」
残る煙玉は一つ。
もう目眩しには期待できない。
「桜華さん!」
部下が一人、彼女の元へ。
「二人、やられました」
「そう……」
──ごめん
──ごめんね
──私のせいで
悲痛な報告は、彼女を少し落ち着かせた。
だがもう、小町の言った通りだ。
ここまで来たら止まれない。
引き下がる事は許されない。
亡くした命を無駄にしないため、桜華は更に進撃する。




