3-7.鎖国体制と鎖
気を取り直して、ユウキらはウルスリーヴルへ来た
目的を天舞音に話さねばなるまい。
城に入り、統治者である天舞音に会えたのは、
桜華のやらかしによる奇跡の様なものだが、
この際そんな事は良い。
「さて」
黒衣の二人は下がり、ユウキらと
桜華の四人が天舞音に向かう。
一人一枚ずつの座布団を貰い、そこへ座る。
「早速ですが、ふむ、鎖の破壊を考えていらっしゃると?」
入港許可を貰う手続きにて、目的という項目があった。
ポリアの観光だけでは認められない可能性が考えられたため、
正直に記載する他なかった。
「しかし、そんな事が可能なのかと、妾としては気になるところじゃ」
天舞音の表情は神妙である。
──まぁ、当然か
いきなり現れた人間が、鎖を壊しに来ました
なんて言っても、簡単に信じられるはずがない。
「北西の空をご覧下さい」
しかしアインズは、そのセリフを待っていたと
言わんばかりに空の観察を促す。
前回の交渉とは違い、彼らにはもう実績がある。
「北西……?」
ゆっくりと立ち上がり、彼女は言われた通りに空を見る。
「こっちは確か、ニューラグーン国の方角じゃな」
「ええ」
「もしや、ここに見えていた鎖が無くなったのは……」
「その通りです」
「ニューラグーン近郊にあった鎖は、僕らが破壊しました」
「なんと……」
天舞音は自身の場所に戻る。
「我が国の防人を使わしても尚、破壊には至らなかった鎖を……なるほど」
やはり、ウルスリーヴルでも鎖の調査はしたようである。
しかし、当の鎖は日長石を持つユウキでなければ壊す事は出来ない。
「そこで、天舞音様にお願いがございます」
「お願い?」
「我々が鎖へ向かう間の、支援を頼みたいのです」
「なるほどのう……」
顎に手を当て、少し考えてから
天舞音は国の現状から語った。
「結論から言おう。鎖の破壊、大賛成じゃ。これは妾にとって急務なのじゃ。が、壊す方法の検討もつかぬ故、こうして放置状態になっておる」
ニューラグーンでは、国土の近くに鎖が刺さった。
対してウルスリーヴルでは、近いどころの騒ぎではない。
島に刺さってしまった以上、それはもはや国土内と何ら変わらない。
バケモノが海を渡れるか否かは定かではないが、この地理的条件では、ウルスリーヴルに化け物が集まるかもしれない。
「地理的な問題だけではない。妾の政治方針にも大いに関わる」
「政治方針、ですか?」
「うむ。妾は、この国の鎖国体制を撤廃したいと考えておる」
ポリアの説明通り、ウルスリーヴルは鎖国体制をとっている。
その為に三人は、わざわざ入港手続きをふんだのだ。
「しかし、先々代──祖母が決めた法度が厄介でな。鎖国の撤廃には、一定数以上の国民が賛成する必要があるのじゃ」
「他国で言うところの、国民投票法ですね」
──なな、何て?
想像を遥かに超えるポリアの知識に、少年は驚いた。
完全に閉じた世界で巫女の言葉に従って生きてきた
ユウキにとって、国民投票法なんて単語は、
生涯に渡って聞く予定のなかったものであった。
「そうじゃな。それがある故、中々手こずっていたのじゃが、近年、何とか民の意識を外に向ける事ができ始めていた」
天舞音の言葉が過去形であることから、
現状はそうではないと推測できたが、
客人はやはり彼女の言葉に聞き耳をたてる。
「じゃが、鎖と例のバケモノの出現によって、守りの意見が大いに活発化してしもうた。これでは数多の国民の賛成など、到底得られたものではなかろうて」
天舞音は懐から扇子を取り出し、
右手首のスナップを効かせて勢いよく展開。
静かに扇ぎながら、アインズの頼みに対する返答へ移る。
「長々と話してしもうたが……要するに、援軍の派遣はお任せあれと」
「感謝致します」
「桜華よ」
「はいっ!」
「援軍とは別動し、ユウキ殿らと共に行け」
「はい、ご命令とあらば!」
「しっかりと罪滅ぼしをするように」
「はい……ご命令と……あらば……」




