3-5.難解な桜柄
ハーフェン港で手続きをした、その翌日。
無事に入港許可を貰うことが出来たため、
三人は輸送船に乗せてもらい、目的地である
ウルスリーヴルへ向かった。
二人は装備を身に付け、ポリアは帳面やら
本やらが入った鞄を背負っている。
「到着〜。ウルスリーヴル港です」
機関士に知らされ、まだ見ぬ地へと足を踏み出す。
「ありがとうございました」
「いえいえ、構いませんよ。運賃は貰ってますから」
──うん、おかげで疲れた
急遽乗せてもらう代わりに朝から荷物の積込みを
手伝ったユウキには、すでに疲労が見えていた。
「じゃ、行きましょうか」
ユウキと同等かそれ以上の作業を共にしているはずの
アインズだが、やはり彼女はピンピンしている。
少し歩くと、舗装された石床の道から、
踏み固められた土へと変わった。
家は大半が木造だ。ポリアはまた目を輝かせる。
「わ! アレ見てくださいアレ!」
「ん?」
ポリアが指さす先には、民家の柱がある。
なにか不思議なことがあるのかと、よく観察する。
「あれ、柱と地面の間に石があるね」
「それです‼」
「お、おう……」
「礎石と言って! ここの伝統的な建築技術で! 地面と柱を直接触れさせないことで! 腐食や老朽化を遅らせているんです!」
「そうなんだ……」
「凄いわね。もはや学者の域じゃないの?」
……と、見るもの見るもの全てに感動しながら進む。
目指すはウルスリーヴルの城である。
ニューラグーンの時のように、
戦力を借りる事が出来ればと期待して訪ねる。
しかし、のっけから上手くは行くまいと。
そう示すかのように、ユウキは金属のぶつかり合う音を聞いた。
「これがウルスリーヴル流の挨拶? ご丁寧にありがとう」
「……私の刀を止めるとは。さすが、異国の騎士ですね」
そう語る女性とアインズが鍔迫り合いになっていた。
音や気配すら感じられなかったユウキは、一瞬遅れて状況を理解した。
「二人を捕らえなさい」
女性が命ずると、ユウキとポリアの背後から黒衣の人物が二名現れた。
しかしどうやら、その命令に困惑している様子である。
「え、と、捕らえるんですか?」
「もちよんよ。不正入国者は捕らえる。それが、ウルスリーヴルのルールでしょ」
「し、しかし……」
何が起きているのか理解出来ず、
三人とも黒衣の二人同様に困惑した。
「いいから捕らえるの!」
「は、はあ……」
「ごめんなさい、失礼します……」
そう、申し訳なさそうにユウキとポリアを縄で縛る。
腕と体を巻かれているが……
──これ、すぐ逃げられるぞ?
あまりに緩い束縛で、どうしてか
捕らえる気が無いように感じられた。
ますます困惑する事しか出来ない。
「はいはい、武器は没収するよ」
「……」
特に抵抗せず、剣を渡す。
ここで大事になれば、今後の活動に
大きく支障をきたす可能性があるからだ。
「私が持つから、こちらのお女中も縛ってね」
「え、ええ……。すみません、こちら失礼します……」
「……?」
アインズもまた、何がなんやら分からずに黙って従うことに。
わざと困惑させて大人しくさせる作戦だとしたら、
あまりにも見事すぎる様である。
「ようし、捕らえた〜。これで私も昇格間違い無し! ね?」
「え、ええ……」
──いや、どちらかと言えば降格しそうだけど
ユウキを縛っていた黒衣の男性が、
小声でそう呟くのを少年は聞き逃さなかった。
女性の先導で、城の見える方面に進む。
大層テンションが上がっている様子で、
もはや面白くなってきたユウキは、彼女を観察してみた。
リオの巫女服に似た雰囲気の衣服。
全体的に白を基調としているが、
左にの腕から右腰にかけて走るラインより下は黒い。
その黒の中に、桃色で稲妻のような模様が描かれている。
また、両肩部分は黒い網になっている。
右袖や右腰、左胸より下には、
淡い桃色の桜柄が散りばめられている。
下は控えめな紫色の袴である。
髪は濃い桃色で、後ろで束ねている。
鮮やかで透き通った紫色の瞳は、
至って純な女性である事を察知させる。
服装含めて美しい様相だが、
左腰に携えられた刀剣が只者ではないのだと主張するようだ。
「さ、お城に着いたよ。収監収監!」
などと恐ろしい事を言いながら、城門が開かれてゆく……。




