表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】天ノ恋慕(旧:太陽の少年は月を討つ)  作者: ねこかもめ
第三章:乖離
55/180

3-4.離れない記憶

 ──ハーフェン港


ニューラグーンを発って数日。


幾度かの野宿を経て、ユウキ、アインズ、

ポリアの三名はハーフェン港へ到着した。


朝と昼のちょうど中間くらいの時間である。


「やっと着いたわね」


「……もう、くたくたですよ」


「わ! 見てくださいあれ、あの建物!」


疲弊した二人に対し、ポリアは異文化に興味津々の様子である。


「うん、元気そうで何よりよ……」


「とりあえず、泊まれる場所ですかね」


「ええ。まずは……お風呂に入りたいわね」


「港街の機能を保持しつつ、ウルスリーヴルの文化が散りばめられてる! この光景はハーフェン港でなきゃ見られない貴重な──」


「……。どう? 今度こそ背中」


「早いとこ決めちゃいましょうか」


「私に対して塩になってきたわね……」


──フュンオラージュ川での悲劇


──早く忘れてくれ!




 港から程近い場所にて、三人分の部屋を確保。


必要な荷物だけ馬車から下ろし、各部屋へと運び、

少し休憩の時間を設けた。


長旅で溜まった疲労を回復しようと、

アインズは湯を張った風呂に肩まで浸かって脚を伸ばした。


「ふう……」


思わずため息が漏れる。


馬車での寝泊まりは、彼女が思っていたよりも、

遥かに身体に悪いようであった。


腕や脚などに少し痛みが生じている。

筋肉が凝り固まっているためであろう。


これでは、次なる「鎖の守護者」との戦いが不利になりかねない。


湯に浸けたまま、よく揉みほぐす。


「そう言えば昔、よくお母さんにこうして貰ってたっけ」


脳裏に記憶が蘇ってきた。


──お母さん、脚が痛いよう


──あら。たくさん外で走ったからかしらね


──うう……


──大丈夫よ。こうして、お風呂で温めながら


母親がやってくれたように、大きくなった自身の脚をほぐす。


「お母さん……あ母さんね……」


大切な人の命を守りたいと騎士になったアインズ。


家族だったり、友人だったり。


しかしその為には、見知らぬ人の命を奪う必要があった。


バケモノが出現したのは、つい最近の出来事であり、

彼女が王国騎士団の一員になった頃はまだ人間が敵であった。


そこへ、自身の希望による行動と、

母親の言い付けの矛盾が押し寄せたのである。


──いい? アインズ


──命は皆、等しく尊いものなのよ


「……っ!」


ふと記憶がフラッシュバックし、瞬間だけ頭痛がした。


──そんな、そんな!

──お父さん! 嫌だよ!


尻もちを着き涙目になった自身の前に横たわる遺体。


──ごめん……なさい……ごめんなさい……


血の海を前に立ち尽くす自分を、震えながら見上げる母親の姿。


「思い出したって、何にもならないのに……」


数秒ほど目を瞑り、深呼吸を一つ。


「……そろそろ出ないとね」


ザバンと湯を波立たせながら立ち上がり、

掛けておいたタオルで髪を濡らす水を拭き取る。


右足から浴槽を後にし、身体もしっかりと乾燥させる。

普段は風になびく金髪も、今は重く垂れている。


私服に着替えて髪や頭皮を乾かし、

二時間後に集合する事になっていた宿のロビーへ。


「ポリア、アインズさん来たよ」


「は〜い」


「あら、早かったのね。お待たせ」


「いえ! 建築様式を見学できたので良かったです!」


「そ、そう……」


「まずは入港の手続き、ですよね」


「そうなるわね」


手続きが出来る役所の様な施設は、

宿から徒歩で十五分程の所にある。


そこへ向け、三人が歩きだす。


宿の玄関扉を開くと、太陽光と共に、

磯の匂いが混じる海風が吹いた。


金髪は美しくなびく。


「さあ、行くわよ」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ