3-3.相対する者
──真っ白な神殿
「以上が、かの不埒者に関する報告で御座います」
玉座に座するは、人の見た目をした妖しい女性。
黒い衣服に身を包んで脚を組み、報告する従者を見下ろす。
「うん、うん」
布面積の少ない羽衣からは、白く艶やかな身体が見え隠れする。
その肌が黒と対になり、見事な美を演出している。
「カマイタチが殺られております。おそらくは、日の巫女の遣いかと」
「でもぉ、あいつは死んだんでしょ?」
見た目に反する幼稚な言葉遣いでもって、従者の言葉に応える。
「はい。しかし、月長石が壊されたとなると、彼奴は日長石を持っていると思われます」
「えぇ何ソレェ──」
それまで小悪魔的な微笑みを浮かべていたその女性は、
唐突に無の表情になり、声色も低くして続けた。
「──ウッザ」
その落差に身震いしながらも、女性に次なる提案を促す。
「如何しましょう?」
「う〜ん、ま、大丈夫でしょ」
「……と、仰いますと?」
「だって、君が何とかしてくれるんでしょ?」
「はっ、ご命令とあらば」
「ふふっ。じゃあお願いね? そいつを殺してくれたら……」
彼女はまた情欲を煽る様な表情に戻り、
下腹部から胸にかけて右の中指と人差し指でなぞる。
「ね? お願い、ジュアン」
ニヤリと、また妖艶な顔で言葉を返す。
そんな主の容姿に密かに見とれつつ、
ジュアンと呼ばれた彼は、勿論と食い気味に納得した。
「必ずや」
立ち上がって女性に一礼し、従者は部屋を後にした。
深い青色の装飾が入った鎧を身に付けた彼は、
マントを翻して歩みながら思う。
──ああ、セレーネ様
──ボクは貴女様の奴隷
──必ずお役に立って
──ああ、ああ、セレーネ様!
「その為に……奴には死んで貰わなきゃ」
首から提げた月長石の首飾りを手に持ち、
その闇のような輝きを観察する。
「くくく……ふ、ふふっ、ふはははははっ!」
彼の嗤いは、虚空と奈落へ消え行く。
そんな事は気に留めず、一段一段、階段を降りる。
神殿の下に位置する踊り場を含めて三つ目。
それより下は、不自然に崩れ落ちた痕跡が見られた。
「ふん、カマイタチめ。セレーネ様より守護者の役割を賜りながら……腑抜けが」
──まぁ、いい
──元々、貴様らに期待などしてない
──セレーネ様のお役に立てるのはボクだけだ
傲慢な思考に駆られながら、ジュアンは
現状最下層にある月長石に触れた。
景色が歪む。
次にジュアンが見たのは、美しく広がる平原。
遠くの方には、綺麗な桜並木が見えた。
「次に奴はここへ来る。そう、セレーネ様は仰ったな」
周辺を見渡し、街が見えた方向へ歩み始めた。
その顔には、愛情に対する激しい飢えと、
狂気が見て取れたのであった──。




