2-30.殻の破壊
「四班は街へ下り、住民の避難を支援しろ。場合によっては散開行動でも構わん。その判断はブラント、お前に任せる」
「はっ!」
「お前たちも立たんか!」
横で震える側近の二名にも命じる。
「国民が襲われているのだぞ! それでも我が国の誇り高き騎士か‼」
「は、はい!」
「直ちに向かいます!」
叱責を受けた彼らは、すぐさま街へと駆け出した。
クライヤマに関する考えを改めた王は今、己のやるべきことをやっていた。
内気な少女——ポリアには、その姿は輝いて見えた。
己の右腕を眺めて問う。
——私のやるべきことは何?
——私に出来ることは何?
——私がやりたいことは何?
目に映るは、クライヤマの少年。
裂けた鎧と自身の腕を交互に見た。
——私に、出来ること
目に映るは、ブライトヒルの紋章。
車に刻まれた幾何学模様を見つめる。
——私が、やりたいこと
彼女の脳内に、教師の言葉がこだまする。
——進路について、もう一度よく考えてみて下さいね
両掌で左右のこめかみを押さえた。
——うるさい
それでも響く声はやまない。
——うるさい!
——私は世界を知りたいの!
——私は!
「私は……っ‼」
思わず声に出てしまった。
ブライトヒルから来た二人が、それに反応してポリアを見る。
「……?」
「あ、えっと、その……」
——私、旅に出たいんです
「お二人は……その、鎖を壊して、回られているのですか?」
「ええ、そうよ」
「ここの鎖が初めてだけどね」
「そう……なんですね」
——言いなよ、私
——こんな機会は二度と無いよ
他者とのコミュニケーションが苦手な性格であることを恨んだ。
だが、恨み言ばかりではどうにもなるまいと。
——言うは一時の恥
——言わずは一生の後悔
知っている言葉を、自分を鼓舞する専用に改変して勇気を出す。
「その……私を……」
手が震え、涙が顔を濡らしても言葉を続けた。
「私を、一緒に——」
しかし、自身のキャパシティーを大きく超えた
活動をしたためか、襲い来る眩暈に耐え切れず、
そのまま意識を飛ばしてしまった。
「——っ‼」
頭を打ってしまわぬよう、ユウキが受けとめた。
「……力を目覚めさせた反動ね。とりあえず、ゆっくり休ませてあげましょう」
「そうですね」
つい最近力を手に入れたユウキは、
その消耗の激しさを詳細に覚えている。
「城の医務室が空いているはずです。ひとまず、そこへ」
「ありがとうございます」
眠るポリアを抱え、王に案内されるがまま、
ユウキとアインズは城内へ向かった。




