2-29.意志の再生
陽が落ちて暗くなっていた周辺は、彼の放った太陽の力によって、
昼間と錯覚するほど明るくなった。
──あったかい
──これが、太陽の力なの?
──これが、日の巫女様なの?
──こんなの、悪な訳がないよ!
「ブリッツ・ピアス!」
そこへ、女性騎士が攻撃を仕掛けた。
バケモノは不意討ちで横から刺され、大きく怯んだ。
「離れなさい!」
バケモノを蹴り飛ばした。
「この、バケモノめ!」
その先には四班の大男が居て、
彼によってトドメを刺された。
「無事、です……ね。ははっ、良か──」
王に怪我などは無く、それに安堵した少年は地面に倒れた。
肝心の王は、呆気に取られたままだ。
「ユウキ君!」
ブライトヒルの女性騎士に続き、
四班のメンバーが彼の元へ駆け寄る。
──ああ、血が……っ!
胸の傷口から流れ出る赤黒い液体が、次第に地面を濡らす。
「ユウキ君! ユウキ君!」
──死んじゃう
──このままじゃ
──このままじゃ!
せっかく会えた。
せっかく声を聞けた。
せっかく名前を知れた。
それなのに、彼の命が消えゆく。
──だめ
──だめだよ!
彼女は飛び出した。
静止する騎士など気にとめず、真っ直ぐと少年──ユウキの元へ。
「死なないで、どうか! 死なないで!」
少年の目から輝きが失われていく。
──っ!
──助けたい!
──助けたいよ!
「私が! 助ける!」
ポリアの台詞は、願望から覚悟へと変貌した。
その瞬間、非常に健康的で大自然の緑を模したような、
眩いオーラが彼女から溢れ出た。
「君は……?」
ブライトヒルの女性が訊くも、
必死だったポリアには届かなかった。
「どうか、生きてください」
右手を伸ばし、ユウキの胴に触れた。
「……レパレーション・ヒール」
目覚めた力の名前を呟く。
彼女を包んでいたオーラが右腕に集約し、
ユウキへと流れ込んで行った。
次の瞬間──
「あれ……アインズさん……僕は……?」
──驚くべき事に、少年に生気が戻ったのである。
「この子が、君を治したのよ」
「君が……? ありがとう」
「よかった! よかったです! うぅ……」
涙を流した。
大きな安堵もそうだが、自分が他人に何かを
施せると分かった事が、何よりも嬉しかったのである。
しかも今しがた救えたのは、クライヤマの少年であった。
彼はアインズに支えられ立ち上がった。
「ユウキ……貴方は本当に……刺客ではないのか……?」
そこへヨロヨロと近付いた王が、彼に問うた。
「信じろとは言いません。ただ、クライヤマについてもう一歩、深く考えては頂けませんか?」
「私は……わた、しは……」
王はその場に正座をし、額を地につけた。
「申し訳ない。私は、愚かであった」
「そ、そんな、やめてください!」
「いいや、詫びさせてください。貴方のような暖かい人間が、悪の手先などであるはずがない。数々の無礼を、どうか」
数秒の沈黙が流れたが、少年は王に向けて言った。
「立ってください」
「……え?」
ユウキが右手を差し伸べた。
それを見た彼は再び困惑したが、それを借りて立ち上がった。
「ニューラグーン国の人々は、未だ混乱してます。貴方が、こんな所で燻っていてはダメです」
「そう、ですね」
それを最後に、王の顔はキリッとした一国の統治者に相応しいものとなった。




