2-28.両刀使いのバケモノ
気が付けば、ポリアの前後に居た人々はもう城に入っていた。
彼女だけが列に逆らい、目の前の出来事を観察していた。
「城方面にバケモノが向かいました!」
──っ!
どこからが叫び声が聞こえた。
それに続いて奇声が耳に飛び込んでくる。
──ギェェェェェェェッ!
「お、おい、止めろ!」
真っ直ぐ自分の方へ突進してくるバケモノを見て、王は四班に命じた。
両手が片刃になっているバケモノで、大きさは一般的な人間ほど。
迎撃を命じられた騎士たちが、そのバケモノの方へ向かう。
この状況でクライヤマの少年を一人には出来ず、
ブライトヒルの女性は彼の横に立つ。
その間も、バケモノは王に狙いを定めて進む。
「こいつ!」
「俺達には興味無しっすね!」
前からも後ろからも斬撃を見舞うが、
傷を負っても止まらない。
少し呻くだけだ。
「ええい、俺が相手だ!」
四班の中で最も大柄な男性騎士が、その進路に割り込んだ。
しかし──
「な、なんだと?!」
バケモノは跳躍でもって彼の頭上を越え、空から王へ突っ込む。
「し、しま──」
垂直な斬撃が彼へ向かう。
四班の位置からでは、到底間に合わない。
「──うっ!」
両脇に立つ側近の騎士は、足がすくんでいた。
初めて遭遇したバケモノに、恐怖しているためだ。
攻撃対象の王も、腰が抜けて尻餅をついている。
刃とその主は重力に引かれ、落ちる。
「ユウキ君?」
女性騎士の横に立っていた少年の姿がない。
「させるかあああっ!」
彼は王の目の前──刃の落ちる先に立っていた。
──あ、あの人……!
「ぐっ?!」
ギリギリで剣を抜いて攻撃を防いだが、
もはや叩き付けに近いそれは、一撃で少年のガードを破壊した。
体勢が崩れたのは両者とも同様だが、
バケモノの方はもう片方の腕も武器であり
──体勢を戻すよりも優先して、残った動力を遠心力へと変換した。
「ぐああぁっ?!」
──そ、そんな!
少年の身体を、斬撃が直撃する。
鎧を着ているとは言え、
こうも大きな刃が当たればひとたまりもない。
胴鎧は裂け、刃が彼の胴体を正面から襲った……。
──そんな、そんな!
ポリアの希望は一転、絶望が支配する。
舞散った血飛沫の一部がニューラグーン国王の頬へ。
「な、なぜ……君は……何を……」
命を危険に晒してまで自分を庇った
クライヤマの少年に、彼は心底困惑した。
何をしているのか。
なぜそんな行動に出たのか。
何も分からずに、ただ少年の背中を見る。
「貴方は……死ぬべき……人じゃ、ないから!」
──グギギギャァァァァッ!
バケモノが追撃の構えをとる。
「何を……分からない……なぜ……」
「ぐっ、サン・プロミ……ネンス!」
──グググギィ?!
残った力で放たれた決死の攻撃により、
バケモノの身体が炎に包まれた。




