2-21.逆転の紅炎
「ユウキ君。どうやら、斬撃は君の仕事みたいね」
彼の熱を伴う攻撃であれば、硬い皮膚でも突破できるであろう。
現に、皮膚よりも硬い爪を破壊している。
「その太陽の力なら、きっと斬れるはずよ」
「わかりました、やってみます」
対して、アインズの斬撃ではかすり傷程度にしかならない。
ならば、切先にすべての力が集約する突き攻撃の方が、彼女に適していると言える。
「チャンスが出来たら、私が一気に貫くからね」
「了解っ!」
《抵抗をするな。これは罰である》
戦闘中、ふと知性的な言葉が聞こえ、二人はカマイタチへ視線をやる。
今度はあの不協和音である。
《巫女様の大切な月長石に触れた。あまつさえ破壊を目論みた。貴様達は万死に値する》
「巫女様……? 罰……?」
《左様》
「……なら僕が、お前を罰する!」
「ユウキ君……」
《何故》
カマイタチの言葉を聞いたユウキの中に、ある推論が生まれた。
──巫女様
──巫女様の大切な月長石
それは明らかに、リオの事ではない。
彼女が大切にしていたのは月長石ではなく、日長石だからだ。
それに、こんなバケモノたちに「巫女様」と呼ばれる筋合いは、彼女には無い。
──つまり、リオと対になる存在がいる?
──太陽の加護が弱まったのは、そいつのせいなのでは?
「お前らが……」
確証は無い。
だが何も分からない現状において、それなりに納得し得る説が誕生した。
クライヤマもリオも悪くない。
そう信じて止まない彼にとって、己の心を裏付ける強力な説だ。
「お前らがあの子を殺したからだ!」
《なるほど、貴様は日の──》
「サン・フラメン!」
少年の剣が再度、炎を帯びる。
先程までよりも幾分か強さをまして燃ゆる。
《これは太陽の……日の巫女の力であるか。貴様を排除する理由が一つ増えた》
──力任せに振らない
──重心を動かして足腰で支える
──脇をしめる
師の教えを思い出しながら、敵の方へと駆ける。
──真っ直ぐ相手を見る
──自分の攻撃の、その後まで見通す!
更に距離を詰める。もう互いに手の届く距離だ。
「くらえ、バケモノ!」
突きのチャンスを見定めるアインズを背に、斬撃を見舞うタイミングを吟味する。
──まだ
が、見計らっているのは互いのようで、見合うだけの時間が続く。
──まだ堪えるんだ
先制攻撃は主導権を取りやすく、有利になりやすい。
しかし、此度の敵——カマイタチはひと味違う。
先に攻撃を仕掛ければ瞬時に風と化し、先刻のような、つむじ風攻撃を受ける事になるだろう。
故にこそ少年は、カウンターを狙っている。
──まだ、まだ
《シャアアア!》
──っ!
ユウキが危惧していた可能性、風と化しての先制攻撃が来た。
──今!
危惧していたという事は、想定外ではないのだと。
そんな様子で、少年は更に前へと進む。
カマイタチが離散した位置を過ぎると、真後ろへ急転換。
生成し始めたつむじ風を確認し──
「サン……プロミネンス!」
サン・フラメンの炎を帯びたまま、敢えて空を斬る。
勢いよく、剣に付いた血を払うかの様な動作にて、そう叫んだ。
《グギャッア⁈》
炎は剣から独立し、真っ直ぐにつむじ風の種へと飛んでいく。
《ギャアアアアアアア!》
やがて、炎を巻き込んで渦が巻く。
つむじ風の発生は瞬時には止まらず、炎柱となった。




