1-13.少年の使命
——ブライトヒル王国城、王の間
アインズからメーデンへ、一連の出来事が口頭報告された。
その内容に興味を抱いたメーデンは、王にも話そうと提案。
ちなみにメーデンは、王の側近騎士であるそう。
そして今、ユウキ、アインズ、ツヴァイ、メーデンの四人が王の間へ来ている。
三人が恰幅のいい男性に向かって跪いた。
ユウキも遅れて倣う。
クライヤマとはまるで異なる、見た事もない統治体制に驚くばかりであった。
「貴君らの活躍により、我がブライトヒルは、何とか難を逃れることに成功した」
氷纏いのバケモノが死んで以降、奴らは急速に散っていったらしい。
つまり、あのバケモノが群れの中心であったことは間違いない。
「礼を言う」
形式ばった言葉をつらつらと並べる王。
「ああ、すまない。良いぞ、姿勢を直したまえ」
その言葉を合図に、三人は立ち上がった。
また一瞬遅れて、ユウキも立ち上がる。
「ところで、君。ユウキと言ったな」
「はい」
「バケモノの撃退には、君の活躍が大きく影響したと聞いている」
「いえ、そ、そんなことは……」
何人もの騎士の死体を見たユウキは、彼らこそ感謝されるべきだと考えていた。
それに比べれば、自分のやったことなど……と。
「はっはっは、そう謙遜するな」
「……」
「そこで、君のこれからについてだが、余は是非、君に騎士団の一員になってもらいたいと考えている」
「僕が、騎士団に……?」
「そうだ。クライヤマから降りて来たばかりで不安は多いと思うが、決して悪い話ではなかろう?」
——僕がここで騎士団の一員に?
——おそらく、生活には困らないだろうな
——王の言う通り、悪くない話ではある
……いや、それでもダメだ
「せっかくですが、お断りさせてもらいます」
「……そうか。残念だが、君がそう言うのなら尊重しよう」
まさか断るとは。そんな気持ちを抱きながら、彼はユウキに問うた。
「では君はこれから、どうするのだ?」
——僕のやることは、使命は、既に決まっている
「旅に出ます」
「旅?」
「はい。旅に出て鎖を破壊して、月を解放します。そしてクライヤマの……日の巫女の無実を世界に証明したい——いや、します」
少年の言葉を聞いた王は、まっすぐに彼の目を数秒間見つめた。
「……その意思、揺るぎは無いな?」
「はい」
「うむ、承知した」
右手で顎髭をいじり、王は続けた。
「アインズ」
「はっ」
「クライヤマで彼を救助したのは、君だったな?」
「はい」
「ならば彼の旅、君が同行してサポートしてやれ」
「私がですか? しかし、第一部隊は——」
「心配には及ばぬ。メーデン、しばらく代理隊長を務めよ」
「はっ、かしこまりました」
側近騎士である彼は、王の命令に対して何の迷いも無く返事をした。
「そう言う訳だ。よろしく頼んだぞ、アインズ」
「しょ、承知いたしました」