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【完結】天ノ恋慕(旧:太陽の少年は月を討つ)  作者: ねこかもめ
第五章:選択
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5-8.経験の融合

「気を付けろ、ユウキ。こいつは空間転移が可能なようだ」


「空間転移……?」


「ああ。アインズの高速移動とは違う。道のりが存在しないために、動きの予測は困難だぞ」


 面倒で、かつ、恐ろしい力だ。どこから攻撃されるかが、敵の初動を見てからでなくては分からない。対峙しただけで、不利な立場に立たされるのだ。


「ツヴァイさん後ろ!」


「っ! くらえ!」


 再度紫色のオーラを纏わせた鎌で応戦。彼とバケモノの戦いを見て、攻撃パターンを分析する。


──こいつ、必ず僕らの背後にまわるのか?


 最初の転移後はユウキの背後に。二度目の転移後はツヴァイの背後に。転移から攻撃に移行する手順に癖があるように感じられた。


「転移したぞ、警戒しろ!」


──慌てるな


──気配の察知に集中するんだ


 目を閉じ、風の動きを感じる。突如として物体が出現すれば、何かが変わるはずだ。


──来た、後ろだ!


「サン! フラメン!!」


 反射的に炎剣を振り、半回転攻撃を仕掛けた。バケモノは鎌を振り上げたところであり、脇腹がフリーになっている。


──捉えた


──僕の勝ちだ!


 だが、やはりそう巧くはいかない。ユウキの動きを見たのか、攻撃を受ける直前でまた転移した。少年の剣は空を斬る。


「惜しかったな。どうやら、君の動きは直前で読まれたようだ」


「あんな一瞬で……」


「いや、どうだろうな。もしかすると、もう少し前から、攻撃を察知していた可能性はある」


「え?」


──来る!


「サン・フラメン!」


 再度、剣に炎を纏わせて回転斬りを繰り出した。しかし、結果はまた同じである。


「やはり、奴は君の剣が動くよりも前に行動を始めている。おそらくだが、日長石のオーラを感じているのだろう」


「つまり──」


「っ! 今度は私が狙いか!」


──つまり、先にサン・フラメンを使う限り当てるのは無理ってことか


──何か、何か策は


 少年は、旅の記憶を探った。数少ない戦いの経験の中に、何かヒントが無いか必死に思い返す。


──自分の攻撃の後まで考える


それは、アインズから受けた手ほどきの記憶。


──相手の動きを観察して僅かな隙を見つける


それは、見て学んだ桜華のスタイル。


──時には力押しで


それは、岩をも止めるタヂカラから学習した概念。


──これまで学んだモノを全部混ぜる!


──融合して、自分の戦い方を!


──僕だけの武器を創り出す!!


「転移するぞ!」


 敵はまず、ユウキかツヴァイの背後にまわる。今回の狙いはユウキであった。


──まだ


 ここでサン・フラメンを使うと、攻撃を察知されて無念に終わる。


──まずは振り返って


 右足を軸に、急旋回。バケモノと目が合うも、怯むこと無く次の行動に移行する。


──隙があるとすれば、攻撃の前後!


故に、桜華は相手の攻撃を待つ。


──ここだ!


 バケモノが鎌を振り上げる。これを大きな隙だと判断し、一気に距離を詰める。走りながら引いた腕を伸ばし、切っ先を敵の腹部へ。硬く、抵抗を感じたが、大男が如く無理やりねじ込んだ。


──まだまだ!


 手ほどきの通り、攻撃のその後まで計画がある。攻撃の後には、更なる攻撃だ。


「サン・フラメン!!」


剣を刺したまま発動。


──グググッ?!


 不快さに悶えるバケモノを尻目に、数歩下がる。


「サン・プロミネンス!」


 退避しながら追撃。不意に一連の攻撃を食らった敵は、炎を消すことで精一杯に。


 相手に反撃の隙を与えない計画的連撃。それが、ユウキがこの場で創り出した武器である。


「やるな」


「でも……体力が……足りなくて……」


 息を切らし、敵の様子を見る。苦痛に顔を歪めながら、ユウキを睨んでいる。


「また転移だ!」


 バケモノが姿を消した。これまでの経験から、背後に意識を向ける。


──えっ?!


 しかし、それを知ってか知らずか、敵はユウキの正面に出現。既に鎌を振り下ろし始めている。


──ま、まずい!


 彼の新武器。その弱点は、こうした不意打ちである。斬撃は間一髪で躱したものの、直後に襲ってきた蹴りを受けてしまった。


「ユウキ!」


何メートルも飛ばされ、石造りの建物に激突した。


「ユウキ! しっかりしろユウキ!」


ツヴァイが呼びかけるも、返事は無い。


「くっ、気を失ったか」


 不利な戦いが、更に不利になった。ツヴァイは武器を構え直し、一人、驚異的なバケモノとの対峙を覚悟した。

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