[プロローグ]あぁ、またか…
「うーん、またか…」
目の前にある紙に書いてあることを俺は今まで何度も見てきた。
「今度のパーティはうまくいく気がしたんだけどなー」
と、思いながらも似たようなことを何度か感じていたなぁとも思い出した。
「それにしても、今回のパーティは持った方なんだろうけど…あ、報酬とか武器とかどうすればいいんだろう」
もう一度、目の前にあるパーティ解雇通知をよく見てみると支払われていない報酬やレンタルされた武器などに関する項目はなかった。
そう、俺はパーティを解雇されたのだ。
といっても、これが初めてとかではない。
俺の性格なのかな…これで何度目の解雇だろうか。
俺たちが住む世界は、剣と魔法の世界で俺は冒険者として生計を立てていた。
「ソロで活動してる人もいるっていうけどなぁ」
冒険者として実力があり、かつ高いランクの人であれば中には一人で活動している人もいる。
しかし自分はどこにでもいるCランクの冒険者で、魔法も剣も、まぁ人並み程度である。
まぁ器用貧乏なところがあるので、パーティの中では割と便利に扱われたりもする。
自分で言うのもなんだけど、パーティとしての貢献度は悪くはない。
じゃあ性格が悪いのか?と思われるかもしれないが、人当たりも言い方だと自負する。
だって、パーティに参加するときなんか…
『へぇ、様々なダンジョンに潜った経験があるんですね』
『なんと!基本属性の魔法なら全て扱えるんですか?すごいです!』
『魔法も使えて剣も…色々なパーティから引っ張りだこでしょう』
『『いやぁ、こんなすごい人材がうちにきてくれるだなんて!』』
と、最初はとても、とっても!高い評価をしてくれる。
しかし…大きなミスをしたりだとか、仲間を危険に晒したりだとかもなく、むしろ自ら犠牲に色々とやってるくらいだ。
それなのに…
申し訳ありませんが、パーティメンバーを解除させていただきます。
心当たりがないわけではない。
ほんの少しのズレだろう。
戦略のズレだったり、あえての親切心が裏目に出たりなどなど…
最初は問題ない、第一印象はむしろいいくらい。
ただ、この第一印象がやっかいでもあった。
「つまり最初に期待させすぎてるってことなんだろうなぁ」
基本的に人付き合いが苦手で、人見知りな性格である。
いつも最初にそれを言うと、信じられないと周りは言う。
ちがう!人見知りで気ぃ遣いな性格をしているから、一番最初に頑張っちゃうの!!
そして、少しして「大丈夫かな?」とほんの少し素を出したときに驚かれる…
わかっているんだけど、その塩梅がわからない…
こんなめんどくさい人付き合いを繰り返していくうちに、いわゆる「パーティリセット癖」というものがついた。
一つの街で大体4、5パーティを流れて、また次の街へ…そんな生活をしている。
「今回のパーティは報酬は貰えずか、まぁなんとかなるか」
いいパーティであれば、まぁ解雇はするが払うもんは払ってくれる。
中にはイチャモンをつけては未払いをしてくるやつらもいる。
微々たる額であれば、放置はするが額が大きいとギルドに申請して払ってもらったりもする。
今回は後者で、払ってくれなさそうなパーティなんだけど、「そっちが言ってこないから」みたいな感じなんだろう。
幸い生活に困ることもないし、言ってそいつらにまた関わるのがめんどくさいと思っちゃったからこのまま街を出ることにした。
「はぁ、できれば永住できるパーティがあるといいんだけどなー」
街を出るたびに出てくるため息はお決まりになってしまっている。
次こそは!
まぁ、また同じような感じなんだろうなぁと諦めつつ、どこか期待しながら新たな街へ一歩踏み出したのである。