僕の正義
誰もが同じ一日を過ごす中世界のどこかでは戦いが起きている。
きっと彼ら、彼女らにとってもそれは同じ一日であり、早く終わってほしい一日なのかもしれない。
戦いなんてのは形を変えて様々な形で僕たちを襲っているのだ。
今のこの瞬間であっても僕を襲っている。
いうならば正義の押し付け合いなのだ。
誰だって自分が正しいと思うから価値を持ち、自分の正しさを通したいから戦うのだ。
それが私情であっても史上に残る結果になるような物であっても間違ってもなお正しいと思うから通すのだ。
自分の考えを自分で否定してしまってはその考えと言う概念は誰からも認められず自然と消えて言ってしまう悲しい存在だ。
その概念に存在意義と命を持たすために人は戦い、精神を残して死んでも、肉体を残して死んでも、全てが消えてしまったとしても諦めないのだ。
今の国が決めた法という概念もそうであり、世間に広まっている約束や常識も今や命と存在意義を認められたいわば生物といっても過言ではないだろう。
僕の言いたい事はそれだけである。
これを遺書として残すつもりでもあるし、僕自身の理想思想であることを伝えたかったのだ。
では僕もこれから自分の正義を通しに行ってくる。
この国では血にまみれた物を嫌う傾向にあるが、徐々に広まっていくであろうことを夢見て。
自身の認めた正義を持ち自身のぶれない軸を持ってして頑張って生きてほしい。
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という手紙を持ってきてしまいもう一週間は経つであろう。
噂ではこの手紙が届いた物に不幸が訪れるという昔の不幸の手紙ばりに胡散臭いどころか疑いたくなる代物を拾ってしまった訳である。
仕事の関係上で寄ったアパートの前に落ちていた物を拾ってしまい最初はゴミを捨てないとという気持ちで拾ったが今になってなぜこんな物を拾ったのか。
うむむ、甚だ疑問だ。
捨てようと思って何日も忘れてたが、明日捨てる事にしよう。
しかしまるで何かに取りつかれたかのような、しかし自分をまだ見失っていない様なあやふやな文だ。
この人が言いたい正義とは何の事を指しているのか私にはさっぱりだ。
戻しに行きたいのは山々だが、ここ最近では連続殺人の話が出回っているし夜遅い時間に出歩くのは正直怖いから嫌だ、というのが本音だ。
「はぁ...」
ため息をついたとたんにインターホンが鳴る。
夜遅いとまでは行かないにしてもゴールデンタイムも過ぎた時間。
誰だろうか。
近づいたドア越しに一言、声が聞こえた。
「正義を貫きにきました」
ドアを削るかのような、叩く音が聞こえて来た。