やまい病
ゴールデンウィーク初日のできごと
おばあちゃんがあるつはいまー病っていう病気になった。ごーるでんうぃーくに引っ越しをして、今、パパもママも、おばあちゃんもおじいちゃんも、お姉ちゃんも、みんなで一緒に暮らしてる。
おばあちゃん、病気って聞いたから、大丈夫って聞くと、おばあちゃん大丈夫って言ってた。
だから、ママに、みんなで暮らせて楽しいねって言ったら、そんなこと言わないのって怒られた。
おばあちゃんは大丈夫じゃないんだって、僕はわかった。それからは、僕はおばあちゃんのお手伝いをすることにした。
おばあちゃんのお花にお水もあげる。お茶を持っていってあげる。眼鏡を一緒に探してあげる。
そしたら、ありがとうって、笑ってくれる。おばあちゃんに元気になったって聞いたら、おばあちゃん元気になったて。
だから、パパに、おばあちゃん元気だって嬉しいねって言ったら、ユウタ、これ以上ママに迷惑かけないようになって怒られた。
おばあちゃんにごめんねって言って、おばあちゃん部屋から出ようとしたら、おばあちゃんもごめんねって言った。何で、おばあちゃんもごめんねしたのか、わからなかったけど、おばあちゃん寂しそうだったから、友だちのワン太を貸してあげた。
そのあとは、僕は独りで遊んでた。そしたら、おじいちゃんが一緒に遊んでくれた。ゴールデンウィークだしな、ユウタどこか行きたい所ないかって言われて、動物園って答えた。じゃあ、おじいちゃんと今から行くかって、僕はみんなと行きたかった。だから、みんなと行くって言ったの。そしたら困った顔して、ママ達忙しいからおじいちゃんと行こうかっておじいちゃん言った。
その時、僕はひらめいて、じゃあ、おじいちゃんとおばあちゃんと行くって言ったの。そしたら、もっと困った顔になって、何で?っておじいちゃんが聞いてきた。
だから、おじいちゃんにおばあちゃん元気って言うけど、寂しいそうだったからって言って、おじいちゃんの顔を見たら、おじいちゃんお手でおめめ隠してた。
大丈夫って聞いたら、大丈夫だって、でも、動物園はまた今度みんなで行こうって約束したんだ。
お姉ちゃんが、ぶかつから帰ってきた。お帰りって言っても、ただいまって言ってくれなくて、そのままソファーに寝転んだ。お姉ちゃん、何をやりたくなーい、完全に5月病だって、お姉ちゃんも病気なのって聞いたら、お姉ちゃん、急に座り込んで、僕に顔を近づけて言った。
「お姉ちゃんだけじゃないよ。ママはイライラ病、パパは生活習慣病、おじいちゃんはうつ病、おばあちゃんは…知ってるか。皆病気なんだよ。皆、皆ね」
「…僕も?」
「さぁ、どうだろう。病院に行かないとわからないな」
「お姉ちゃん、大丈夫なの?」
「私? う~んそうだな、何もやりたくなくて、死にそう」
「死んじゃうの?」
「死んじゃう。死んじゃう、いつかね」
大変だ。お姉ちゃんが死んじゃう。僕も病気かもしれない、僕も死んじゃうかもしれない。僕は急いで、ママの所に走った。だけど、わかっちゃった。一番危ないのは、おばあちゃんだって。僕は急いで、おばあちゃんの部屋に走った。
「おばあちゃん死んじゃうの?」
おばあちゃんの部屋の前で僕は言った。電気も付けないで、おばあちゃんは座布団の上で正座する。こっちにおいでと手を振ったので、僕はおばあちゃんの近くまで行った。すると、おばあちゃん、僕の手を胸に当てて言った。
「心臓の音、感じる?」
感じる。押し返してくる感じがする。僕は頭を縦にふる。
「おばあちゃん死にそう?」
暖かくて、僕もドキドキして、頭を横にふる。
「そう、よかった」
おばあちゃん、今度は僕の胸に手を当てる。
「ユウタも生きてるね」
「でも、僕も病気かもしれない」
「どうして、そうも思うの?」
「お姉ちゃんが、みんな、病気だって、いつか死んじゃうんだって」
「大丈夫、ユウタは病気じゃないわ」
「本当?」
「でも、いつかは死んでしまうのは本当、おばあちゃんのママ死んだように、誰でも、いつか死んでしまうの」
「そんなの嫌だよ」
「大丈夫よ、ユウタ。ユウタがずっと私の事を覚えてくれてたら、私はユウタの心の中に生きられる。ここにね」
おばあちゃんは僕の胸軽く2回ノックした。
「だからね、ユウタ、おばあちゃんのこと忘れないでいてくれる?」
「うん、約束する」
「じゃあ私も、ユウタのこと、忘れないように頑張るから……」
僕の手に涙が落ちてきたから、おばあちゃんに泣かないでって言うと、おばあちゃんありがとうって。
だから、お姉ちゃんに、おばあちゃん死なないってでも、泣いてたって言ったの、そしたら、何でおばあちゃんに言っちゃたのよって怒られた。
パパもママも、おばあちゃんもおじいちゃんも、お姉ちゃんも、最近みんな機嫌が悪いみたい。でも、病気だからだと思うの。病気だから、いつか治るよね。
友人が病気だと知ったとき、その関係との間に変な壁ができた気がした。その壁は凄く薄いんだけど、ちゃんと壁で、いつものように肩を組んでやることができなかった。