第四話「ようこそ御都合主義の領域へ」
雷哉が放った謎の光を浴びた風斗の身体は熱さと痺れと痛みに蝕まれていった。
「ぐわぁぁぁ!」
風斗は思わず喘いだ。光はすぐに消えたが、痺れが残っている。
「……トール・サンダーっつったよな」
痺れに抗いながら記憶を参照する。そしてすぐに、確信した。風斗は考えを思わず口に出していた。
「トールはオーディンの息子の雷神……。サンダーが雷か……」
「正解だよ風斗。ごめんね、急に攻撃して。でも融合者なら痛みは少ないでしょ?」
「え、そうなの?」
ーー身体強化されているから当然だろ!?じゃなかったら死んでるぞ?
「え、ということはトラックに轢かれても……」
ーー助かるだろうな。というか使えって言ったの能力じゃなくて強化された体のことだったんだが、お前が『風神の突風』の動作とるからなあ……。
風斗は困惑のあまり動作をとった。技能ではなく、腕で「T」を作る「タイム」の動作を。
「ん?どうしたの、風斗」
「その前にここはどこなんだ?」
ーーやはりここはゴッド・フィールド!
「し、知っているのかオーディン?」
ーーそれ雷電な。
「オーディン?……成る程ね」
雷哉は呟き左手で右手の二の腕を握った。
「ん……ちょっと待ってくれ雷哉」
「……ごめん、お喋りは後にしてくれないかい?」
「え?」
「僕は悪を倒すためではなく善を守るために闘う……」
「……ん?」
「ここは神力が半分減ると負けだけど……何度も減らし続けてやる!勝負だ……悪神オーディン!」
ーーえ〜〜〜!?
風斗の心のみの叫びをかき消すように、雷哉は叫んだ。
「雷神の雷ァァァ!」
大地を蹴り直線に近づいてくる。そして拳を振りかぶり、
「〈打撃〉ォォ!」
拳に光を纏って拳を風斗に突き出した。しかし雷哉の拳は風斗に当たることは無かった。雷哉が叫んでから飛びかかるまで、風斗は……ひたすら息を吸っていたのだ。そしてその空気を、雷哉より一瞬早く突き出した右手の掌から放出した。
「うわっ!」
雷哉は元いた場所に一直線に吹っ飛んだ。技名を発声しない分、沢山空気を吸えるが瞬間的な放出ができない。
「うおっ!」
自身も真後ろに吹っ飛ぶが、錐揉み回転をして地面が正面に向いたところで出し切らずにとっておいた空気(技能だと全部一気に出してしまう)を地面に当て、上手く着地。融合者になっていなければ全身打撲のところだが、身体能力、反射神経共に神の力を借りている風斗にとっては簡単なことだ。風斗は追撃を警戒して早口で呼びかけた。
「オーディン、簡潔に「ここ」について説明してくれ!」
ーーほいほい……ここは神界縮めて「GF」。人間界とは別の世界だ。地形と建築物のみ人間界とリンクしている。ここでは遺跡になり壊れても関係ないがね。召喚する意を叫ぶと転移する。
「レディーゴーしそうな略し方だな……それに仕様が御都合主」
ーー風斗!来た!
脳に直接響く声で風斗の台詞は遮られた。ふと前方を見るとトールが一直線に接近してくる。まさに電光……いや雷光石火の速さだ。右手は体に隠れて見えないが、攻撃の姿勢は消えていない。風斗は激突ギリギリのタイミングで左ステップで避けた。
ーーナイスだ風斗!格ゲーの成果だな!
「それが選ばれた主な理」
轟音によって風斗の声は(また)遮られた。雷哉が激突した壁(人間界では恐らくビルだろう)が崩壊したのだ。
「なっ」
ーー何だと?
土煙が晴れると雷哉は無傷で立っていた……右手にハンマーを携えて。
「あれは……」
風斗が絶句する中オーディンは風斗の中で死刑宣告のように重く、ゆっくりと言い放った。
ーーあれは『ミョルニル』。「粉砕するもの」を意味する神器だ……。
用語解説 〜トール〜
北欧神話に登場する雷神のことで、「ソール」、「ソー」などとも呼ばれる為、某アメリカの漫画ではそーなっている。
オーディンの息子で、同じグループに属するアース神族(神は「アース」と「ヴァン」の二つのグループに分かれている)の一員。雷の神にして北欧神話最強の戦神(最高神なのに最強じゃないオーディンカワイソス)。農民階級に信仰された神であり、元来はオーディンと同格以上の地位があった(息子なのに)。 スウェーデンにかつて存在していたウプサラの神殿には、トール、オーディン、フレイの3神の像があり、トールの像は最も大きく、真ん中に置かれていたとされている(息子なのに)。 北欧だけではなくゲルマン全域で信仰され、地名や男性名に多く痕跡を残す。また、木曜日を意味する英語Thursday やドイツ語Donnerstag などはトールと同一語源である。ちなみに水曜日はオーディンが語源。曜日でも相性的に勝ってしまっているが、あくまでもトールはオーディン(とフリッグ)の息子である。
詳しくはウ◯キを参照だが、この文自体がウ◯キを見て打ったものである。