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ツイッター殺人事件 6

「あら、久地ヶ先くん、ずいぶん遅かったわね」


 家に着くと、何事もなかったかのように逢瀬川が待っていた。どうやって僕の家を知ったのか、目の前の逢瀬川は今までに僕が話したことのある逢瀬川なのか、色々な疑問がふっと浮かんだけれど、すぐに僕は考えるのをやめた。逢瀬川のことだ、きっと何か僕の考えもつかないやり方で今ここにいるのだ。

「三角を家まで送ってから来たからね」僕は答えた。なんとなく頬が緩んで、自分が安心しているのがわかる。「逢瀬川はいつここに?」

「ずっとよ」

 だろうな、と思って僕は肩をすくめた。


 僕は、あの後佐藤直人教徒たちがどうなったのかを尋ねた。逢瀬川によると、連中は逢瀬川の分身を殺しながら散り散りになって、そのまま森の中へと消えていったらしい。そのあとはどうなったのか逢瀬川本人にもわからないとのことで、僕は山積みになった逢瀬川の死体がこの後どうやって処理されるのだろうと何となく思った。

「頼んでおいたほうもどうやらうまくいったようね、久地ヶ先くん」

「そうなのか?」僕は言いながら自分の体を確認した。「僕自身には全く実感がないんだけれど」

「大丈夫。しっかり憑いているわよ、佐藤直人の生霊がね」

「なんだよ、生霊って」

「まだ生きてる人の思念みたいなものよ。自分にまとわりついているのに気が付かないなんて、久地ヶ先くんは鈍感ね」

 僕の背後を指さしながら笑う逢瀬川を見て、僕は一体喜ぶべきなのか、それとも驚き恐れるべきなのか複雑な気持ちになった。


 逢瀬川いわく、僕は極度の霊媒体質らしい。僕が霊の近くを歩くと、まるで磁石でも背負っているかの如く吸いつけて離さないのだそうだ。だから今回の事件では、逢瀬川の役割は殺人教徒たちを引き付けておくことだけで、実のところ解決役は僕だったのだ。おかげで、三角にくっついて佐藤直人教に没頭させていた生霊を、彼女から引き離すことが出来た。これで三角も、危険な潜入捜査をすることもなくなるだろう。

「でも、僕にくっついてるのはどうしたらいいんだ?」

「いいのよ、それはそのままで。久地ヶ先くんなら溜め込んでいても大して害はないし」

 逢瀬川はこともなさげにそう言って、それから立ち去った。まったく簡単に言ってくれるものだ。しかし、僕たちの関係はそれでいい。逢瀬川は死に場所を探して心霊現象を処理する。僕はその残骸のような霊を引き受ける。彼女は死ぬことが目的だし、僕は僕の日常を守ることが目的だ。お互いの利害が一致する、都合のいい協力関係なのだ。


 逢瀬川が去ったあとで、田んぼから聞こえるカエルの輪唱を聞きながら、僕はとりあえずひと段落したんだな、と一息ついて自室に向かった。


 翌日、新聞部の部室を覗くと、三角がいつもと変わらない様子で忙しそうにしていた。昨日あれだけのことがあったというのに普段通り活動しているのは、いかにも三角らしい。僕と逢瀬川のもとに来た後輩も、三角の変化に戸惑いながらもポジティブに受け入れているらしく、僕は安心してその場を後にした。


 もうすぐ、高校生新聞コンクールの締め切りだ。きっと三角たちはまた入賞するだろう。いや、三角のことだから、入賞どころか地方新聞社に取り上げられるかもしれない。


 僕は少し笑って、そのまま教室へと歩いていく。


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