第9話 掛け合わせるなよ、絶対にだ
あの日。
出会ってから2回目の、しかも世間を騒がすスーパーアイドルである女の子を事もあろうに言葉責めにして泣かせるという……いや、今の言葉責めという言葉に深い意味はない。
まぁともかく、そんなファン絶叫の最悪な日から、一週間が経った。
もう4月末日。
気温は上昇を止めず、杉しやすいことには過ごしやすいのだが、桜はほとんど姿を見せなくなりなんだか一抹の寂しさを感じさせる今日この頃であった。
俺はというと、そんな気候に乗じて絶賛昼寝中。
ああ、なんて平和なことか。何もない1日ほど愛おしいものはない。
ピンポーン。
あ、そうだ、こんな日には公園にでも行って……
ピンポーン。
昼寝っていうのもいいかもしれないな……うん、それがいい。
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピp
「うるせえ!!」
「よっ、元気か?」
「そんな風に見えるか?」
まぁみなさん予想していたとは思うが、雅也だ。こいつ、10分前からずっと俺の家のインターホン押し続けていたぞ。
なんだ、ストーカーなのか?アイスティーで睡眠剤なのか?
「何の用だよ」
「いや、そろそろ出発かなぁって思って」
「何の」
「わかってるくせぇにぃ〜」
「気持ち悪いクネクネすんな!」
明らかに変態だった。どうでもいいから俺の家の前にいないで欲しい。
「麗奈ちゃんのライブ、行くんだろ?」
「は?何言ってんだよ。この前お前のいう通り譲ったばっか……」
「はい、これ」
「だからそんなもんねぇえええええええええええええ!!!?」
信じられないが、あ、ありのまま起こったことを話すぜ?
俺の目の前には、確かに「山橋レナライブチケット」があって、それをドヤ顔で差し出している雅也がいて。
そして、そこに書かれている席番号C-1-17は間違いなく俺がこの前山橋に返したものだったんだ。
「行けよ」
「な、なんで……」
今日が彼女のライブ当日だということはわかっていた。
でも、俺にはチケットがないからいかなくていい。もし持っていたとしても、あんな別れ方をした相手のステージを見にいけるほど俺の肝っ玉は据わっていないっていって、逃げ通せるはずだったのだ。
「お前、一週間前は俺のチケット欲しがってたじゃないか。なんで今度は手のひら返して行け、なんていうんだよ。おかしいだろう?」
「そうか?至極単純なことだと思うけど」
「単純なもんか。理解不能だね。そもそも何でお前がこのチケットを持ってるんだよ」
「俺が、麗奈ちゃんから預かったからだ」
「山橋から……?」
預けた?元はと言えば、彼女がこのチケットを欲しがっていたんじゃないのか?それをどうして、雅也に渡す必要がある?
「お前に、渡すためだよ」
「え?」
「お前に来て欲しいって、麗奈ちゃんが俺に預けたんだ」
「んな、バカな……」
だって、あれだけの喧嘩をした。
いや、喧嘩だったのかどうかはさておき、とにかく俺は彼女にひどいことをたくさん言ったのだ。
それがどうして、俺をライブに招待することに繋がるんだ?意味わかんねぇよ。
「ほら、今から準備すれば余裕で間に合うって。だから、行けよ」
「何で……俺がいかなきゃいけない理由なんて、全くないだろ?」
もういい。もういいから、帰ってくれ、雅也。
そうしてくれないと、俺はまたきっとお前に最低なことを言う。
友達でいられなくなるような、最低なことを……
「どうしてそんなに頑なになるんだよ」
「っ……」
「何も考えなくていい。ただ行くだけでも、結構な価値があるんだってことくらいわかるだろ?あの山橋レナのライブなんだぞ?」
「そりゃ、そうなんだろうけど」
俺だって、行くこと自体が嫌なわけじゃない。
このライブに行きたくて、でも行けなかった人だってきっとたくさんいて、そう言う無念さの上にこのチケットが今手元にあるんだってことだってわかる。
だけど……そうなんだけどさ。
「いい加減にしろよな……」
「雅也?」
「お前、いつまでそうやってるつもりなんだよ!!」
言葉に詰まる俺の胸ぐらに掴み掛かり、思いっきり背中を壁に叩きつけられる。鋭い痛みが走った。
「そうやってうじうじ家に閉じこもって、何やってんだよ……お前、そんな奴じゃなかっただろ?」
ああ、確かに、昔の俺はこんなんじゃなかったな。
樋口さん、やっぱり俺は忘れたわけじゃないんだよ。変わっちまったんだ。もう、どうしようもないところまで、性根から腐ってしまったんだ。
「そんなんでいいわけないだろ……あの日から変わらないままで、いていいわけないだろ!!」
「……変わって、ない?」
そう思っていたからこそ、雅也が言った言葉は、俺の胸に大きな違和感をもたらした。
「変わらなきゃ、いけないのかよ……」
「伸一……」
「変わらないでいることを……どうしてそんなに責められなきゃいけないんだよ!!」
「っ!!」
俺は雅也を突き飛ばし、反対に胸ぐらを掴んで壁に押し付けた。
「頑張って変わろうと思った結果を、お前は見ただろ!?どうなったよ、ああ!!?
裏切られて、全部無くして、何を得たんだよ!?」
「だからって、それは変わらなくていい理由にはならないだろ!?」
「じゃあなんで変わらなきゃいけないんだよ!これで、誰に迷惑をかけてるって言うんだよ!?
俺は何にも裏切られたくない。人にも、努力にも、裏切られるのが怖い……だから、一歩引く。熱中しないように、入れ込み過ぎないように下がる。それをお前が責めるのかよ!?
あの時、俺が立場をなくしたって何もせず、静観を決め込むだけだったお前によぉ!!?」
そして、俺はついに恐れていた単語を口にだす。
それを口にしないことだけが、俺たちが友達のままでいられる最大にして唯一の条件だったって言うのに、ついに破ってしまった。
だが決して頭に血が上ったからではない。これは俺の心の中でずっと眠っていた負の感情。
いつか吐き出してやろうと、ずっと機会を待ち続けていた感情なのだ。
雅也は案の定沈黙。
俺は手を離し、ゆっくりと玄関に戻る。
「もういいだろ、雅也」
もう、戻れないかもしれない。でも、これ以上の会話は不毛だ。
「帰れよ」
もう、許してくれよ。これだけやれば、もう十分だろ?
「お前は自分らしさを出して、批判されるのが怖くて、おとなしくしているだけの、惨めな子供だ」
「〜〜〜っ!?」
でも雅也は、俺が逃げるのを決して許してはくれなかった。
それだけじゃない。この場で、俺が最も言って欲しくなかった言葉を、俺自身の言葉を使ってきたのだ。
「聞いてたのかよ……」
「ああ」
「全部か?じゃあ、あの子の正体も……」
「ああ」
「なんだ、そりゃあ、情けないな……」
乾いた笑いがこぼれた。
これだけ汚いところを見せたのだ。もう、俺のところにいる理由なんて、友達でいてくれる理由なんて、これっぽっちもないんじゃないか。
「なぁ、俺、麗奈ちゃんと話したよ」
「そうか」
山橋麗奈。彼女と俺は、ひどい思い上がりだと思うけれど、どこか似ている。
一週間前、誰にも言ったことのなかった本心をさらけ出してしまったのはきっとそのせいだ。
彼女なら、わかってくれると思った。
この恐怖を、苦しみを、嘆きを、安心を求める臆病な心を、理解できると心の何処かで思っていたのだ。
「彼女は言った。お前に変わるとこ、動きだすところを見せつけてやるって」
「……え?」
彼女が、変わる?
そんなバカな。彼女は、山橋レナはあれで完成している。
あのまま偶像であることにこだわり続ければ、きっと永遠に安心して生きていられる。
それを手放すだなんて、あり得ない。他の人ならともかく、よりにもよって山橋にそんなことができるはずがない。
「その瞬間を、お前が見なくてどうするんだよ」
でも、もしもそんな瞬間があるとするなら。
「お前のために歌う歌を、お前が聴かなくてどうするんだよ」
それが本当に、叶うとするのなら。
「お前がその場所に行かなくて、どうするんだよ!!」
————きっと、素晴らしい瞬間に。この上なく美しい景色が、広がっているのだろうな。
「お前はさ、買い物に行けばいいよ」
「……買い物?」
「俺、麗奈ちゃんのファンだから。物販でTシャツとか買ってきてくれよ。
でさ、そのついでにライブも見てこいよ。そんで、勝手にがっかりするなり、イライラするなり、笑うなり、感動するなりしてくればいい」
「雅也、お前……」
「あの時押せなかった背中を、今押させてくれよ。な?」
まだ、こんな俺の友達でいてくれるのか……?
「しょうが……ねぇなぁ……っ!」
「伸一?」
「電車調べろ!今から出る!」
「おう、早く支度しやがれ!」
本当に、面倒な親友を持ったものだ。
そう思ったのは俺だけか?なぁ、雅也。
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『荒波駅、荒波駅でございます。』
「あ、降ります降ります!」
混雑する電車から押し出され、俺は東京、荒波駅に降り立った。
「相変わらずでっかいなぁ」
改札を出ると、10階以下の建物なんてないんじゃないかと思うほどのビル街が広がっている。
荒波区は東京の中でもかなり都会の方で、最近できた荒波ドームの影響か、さらに金を蓄えているらしい。
「えーっと、こっちがそっちで、あっちがこうで………まあいっか!!」
やばい、心がぴょんぴょんしてきた。
俺はグー◯ルマップ師匠に道を教えてもらい、ドーム前、物販コーナーに向かうことにした。
駅からドームまでは徒歩10分強。
現在の時刻は午前11時。ライブの開始は午後1時だから、まぁ色々総合しても余裕あるんじゃないか?
なんて思っていたことが間違いだとわかる10分ちょい後。
「マジかよ……」
物販に並ぶ人々の数は尋常ではなく、その列は数十メートルほどあった。
コ◯ケじゃねぇんだから…
「ちょっとあなた、並んでいるんですか?邪魔なんですけど。」
「あ、すみません…」
並ぶかどうか悩みつつ、最後尾のあたりでウロウロしていると怒られてしまった。
「………」
「なんですか、人の顔ジロジロと見て。も、もしかしてストーカー?」
「ちょうど俺も同じことを君に感じたよ」
俺の前に立っている人は、なんか不審者という言葉を具現化したくらいに不審者だった。
キャップを深くかぶり、サングラスを装着。おまけにマスクまで完備ときた。
ただ、服は女の子らしく、淡いピンクのワンピースの上に白いレースのようなものを羽織っており、普通にオシャレ。
しかし、首から下げた一眼レフが異様な存在感を放っていた。
歳は…下かな?
「とりあえず、並んでないのね?」
「あ、いや、並んでます。」
俺はそそくさと彼女の前に並び、ちらと後ろを見る。
身長は160弱。
髪は黒く、それを後ろでまとめたポニテ女。
色々と樋口に似ているが、声も性格も違う。彼女は俺に気づけばちゃんと声をかけてくれるはずだ。きっと。多分。
「いやらしい目で見ないでくれない?」
「見てないよ別に…」
誤解を招く行動はやめていただきたい。このくらいの女性分析は普通というか…え?普通じゃない?
しかし、なんだこの自意識過剰っぷりは。しかも敬語も使えない。
山橋といい、この子と言い、最近の若者は敬語も使えないのか。
「そんな格好で警備の人によく捕まらないな…」
「ええ、本当。あなたみたいな不審者がうろちょろしてるなんて信じられないわ、ここの警備態勢」
「そうか、お前馬鹿なんだな?」
「!!?」
怒った。睨んでくるがまあいいだろう。
「それにしてもこんな早くからこんなに並んでいるなんて、やっぱりスーパーアイドルなんだな、山橋レナって。」
「何事もなかったのようね…まあそれはいいや。
CDを出すたびに飛ぶように売れ、ライブもいろんなとこでやってる。当然よ」
「そっか、そんなにすごかったのか。あんまりテレビとか見ないからさ、そこまで知らなかったんだ。」
「な、なんですって!?」
不審な少女は俺の頭を掴み、自分の顔に近づけてきた。
「な、何すんだよ…」
ちょっと照れる。
「あなた、この場に来てそんなビギナー発言が許されると思っているの?
この物販には泣く泣くチケット抽選から漏れた哀れな同士だって多く並んでいる。
今度そんな発言してみなさい。刺されるわよ。」
「そんな大げさな…」
彼女の手をどけ、顔を上げる。
「いっ…」
なんか見てる!並んでる人がめっちゃ見てる!!
「そう、これがレナ様同盟…略して“RSD“の結束…っ!」
女がそう言うと、列のみんなが頷いた。
こ、こわい…初めて聞いたよそんな名前。
「全く、なんて無知なの?
まぁいいわ。チケット見せなさいよ。」
「なんだよ。やらないぞ?」
「いらないっての!何せ今回私は、アリーナ席なのだから!!」
おおー…と、感嘆の声を上げるRSDの皆さん。みんな馬鹿らしい。
「ふむふむ、C-31か…」
「あっ!」
気づけばいつの間にかチケットが奪われていた。
あれ!?チケットは財布の中にしまったはずなんだけど!?
「って、あたしの隣じゃない!」
「え、嘘、嫌なんだけど…」
「失礼!?」
愕然とする女。
いつの間にか、敬語も完全に外れていた。
…こうやってその場で友達ができたりするところが、ライブのいいところなのかもしれないが。
「そんなんでアリーナ席を取ったなんて……許せないわ!これからちょっと付き合いなさい!」
「いや待ってくれ!物販は!?」
「か…買ってからよ。」
どちらかといえば面倒なこと、の方が合っているかもしれないが。
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無事キーホルダーとバッグ、Tシャツと限定ペンライトを購入し終えた俺は、近くのファストフード店に入っていた。
「せっかく東京まで来たのにマ◯クとか…」
「はぁ?マッ◯なめてんの!?500円でセット頼めるなんて最高じゃない!」
「そんな高そうな服着ておいてコスパ重視なのか…」
例の変な女と一緒に。しかも店内に入ったのに不審者のような格好をしたままだ。
マスクは取ってくれたことが唯一の救いか。まぁ、カ◯シ先生じゃあるまいし、食事の時くらい口元を見せてもいいだろう。
「で、あんたレナの事どれだけ知ってるのよ?」
「web百科事典にあるくらいの情報かな?」
「じゃあ誕生日は?」
「え?」
「誕生日よ。載ってたでしょう?」
「え、あ、いや…さすがにそこまでは…」
「はぁ?なめてんのあんた!?10月16日!基本でしょ!?」
「いや、あの…はぁ。」
痛い。このオタク痛いよっ!
「それで、君の名前、そろそろ教えてくれない?」
「え?あたしの?」
実際このままでは話しづらい。
ここまできたら全くの他人というわけでもないしな。
と、相手もそう思ったのか。
「なな。今田ななよ。」
「へぇ、ななさんね。俺の名前は石田伸一。よろしく。」
「石田くん、ね。よろしく。」
互いに笑いあって握手した。
小さな手だった。やっぱり色々な点から見て高校生か、中学生でも行けそうだな。
「なんでそんなに…その、山橋レナのことが好きなんだ?」
「あら、聞く?聞いちゃうの?私とレナとの出会いを!」
「あ、やっぱやめ…」
「あれは、2年前の冬…」
「ダメだ聞いてねぇ」
仕方ないので、一応聞いてやることにした。
「あたし、ちょっと嫌なことがあったの。今思えば、全然大したことなかったんだけどね。
でも、その時は落ち込んでた。それこそ、もう何もかもどうでもいいってくらいに。
それで何もかも放り出して、家を飛び出し、一人走ったわ。。
そして辿り着いた、雪降る夜の街で。
たくさんの灯り、たくさんの人に紛れた、とあるCDショップから、聞こえたの。
優しくて、切ない、恋の歌が。
上手だった。感動した。心が震えた。
でも、誰もその歌に耳を傾けない。雑踏の中、暖かな家に向かうのみだった。
悔しかった。自分がこんなに感動したものを、どうしてわかってくれないのかって。
だから応援した。
あたしだけは、この歌を、好きでいようと。
でも、同時に気づいた。認められなくても。素晴らしいことって沢山ある。
そして、そんな輝きを、きっと誰かが必要としているんだって。
なら、自分も頑張っていける。
一人だって、なんだってできるって、信じられた。
そうして少しだけ時間が経ったある日、CMに彼女の歌が使われていた。
あの日聞いた歌とは違ったけど、確かに、あの日聞いた歌声だったのよ」
話し終え、ストローを加えるななはちょっとだけ頬を赤く染めていた。
「なんか…感動した」
最初は適当に聞いていたのに、気づいたら黙って聞き入っていた。
山橋レナは、確かに人の心を動かしていたのだ。
「ちょっと、恥ずかしいわね。こうやって話すのは」
「そうかもな。でも、ありがとう」
それがちょっと、羨ましくて。
「そろそろ時間じゃないか?」
「え、あ、そうね。行きましょ。
なんだかごめんなさいね。レナの魅力について語るはずが、あたしの思い出話を話すことになるなんて」
「いや、いいんだよ。お陰でこれからのライブが楽しみになったから」
そ、そう?なんて笑う彼女は、なんだかとても可愛らしく思えた。
「うわ、風強いなぁ。さすが東京。ビル風ってやつかな?」
「うわわわわ!!」
「どうしわぶっ!」
後ろを振り向くと、いきなり謎の物体が俺の顔に激突した。
「なんだこれ…」
手に取ると、それはどうやら帽子だったようで。
「おい、これ飛んで………」
返そうとななの方を見ると、そこにはサングラスを落とし拾っている黒髪美少女の姿が…
「はっ!!」
ななはすぐにサングラスを装着し、マスクをつけ、そして俺から帽子をふんだくった。
「見た?見たのね、私の顔。」
「あ、えっと、なんていうか…」
「あああああ!!しくじったあああ!!」
ななは急に跪き、ヘナヘナと俺に土下座する姿勢になった。
「な!?おい!何やってんだ顔上げろ!ここ道路の真ん中だぞ!」
「お願いこのこと黙ってて!!」
「いや、黙っててってどういうことだよ!!」
「お願い!!」
「わかった。わかったから顔を上げてくれ!!」
周りの人はそんな二人をものすごく冷めた目つきで見ている。
まずい、このままだと俺の社会的地位が終わってしまいそうだ。
あ、奥さん!警察に通報するのはやめてっ!!
「本当?2◯hに投稿したりツ◯ートしたりしない!?」
「しないから!」
そう断言すると、やっと起き上がってくれた。
顔にコンプレックスでもあるのだろうか。
でも、見せてくれた素顔は、なんというか、可愛いとかそういう言葉で簡単に言い表わせるほどのものではなく、そう、芸術的なまでに完成されており、見るものに庇護欲を与えずにはいられない魔力を孕んだまさに究極の一品。
その様をあえて言葉にしようというのならば、答えよう。可愛い!!
「うわあああああああああああ!!!!」
「あ、声に出てた!ってかやめろやめろ!!どうして土下座なんだ!?」
顔を真っ赤にしたななが再び伸一に土下座していた。
なんというか、ライブが始まってすらいないのに、大波乱の1日だった。