朝って憂鬱だよね。え、そうでもない?
今日も俺は学校へと足を進める。変わり映えのない一日。数年前に起こった現象を除けば。
「ちょっとそこの坊ちゃん」
「なんだァ?急いでるからなるべく手短にな」
「なんじゃ、その言いぐさは。これだから最近の若者は…。まぁいい。君を身体強化系能力者と見込んでちょっと庭にある岩を運んでほしいんじゃが。ほーむせんたーとやらで買ってきたのじゃがいまいち店員の感性がなってないようでのう。ワシの指示するところに運んでくれればいいんじゃ」
「いいけど爺さんなんで俺が身体強化系ってわかったんだ?」
「ワシの能力 『解析』 をもってすれば簡単なことじゃよ。ひーろーぽいんととやらをやるから手伝ってくれんかのう?」
「ったく。わかったよ。運べばいいんだろ?」
「物わかりが良くてよろしい。じゃぁさっそく運んでくれ」
そういって爺さんが指をさすと300㎏はありそうな大きな岩がデンと置かれていた。なるほど。爺さんじゃ無理だ。そう考え俺は能力発動宣言をする。
「『狼化』!!」
バリバリと音がして俺の全身から黒い毛が生える。耳は尖りマズルが生え尻尾も生えてきた。力が湧きあがるのが分かる。爪が凶悪な形へと変化する。5秒もたたないうちに俺は狼男になった。別に満月や丸いものがなくても変身できるのが楽でいい。
「ウォォオオオオオオ!!爺サン!!コレドコ置ク!!」
雄叫びとともに岩を持ち上げ俺は爺さんにカタコトで問いかける。仕方がない。これが狼化のリスクだ。理性が若干弱くなる。しかし、俺はこの能力が好きだった。
「一歩前、若干右を向…あぁもう行き過ぎじゃ!!11時の方向に!!そう!!そこじゃ!!」
俺が指定された場所に置くと岩はドシンと音を立てた。
「うーむ。ぱーぺきじゃ!!ほれ、ひーろーぽいんとじゃ」
「俺頑張ッタ、コレダケ不満…」
「年金暮らしにそこまで要求するな!!それはそうと君狼男のままだがいいのか?」
「イイ。狼男足速イ。学校マデ走ル」
「それはそうなんじゃが、ちょっとわしの家に寄って行かんか?」
「デキナイ。遅刻スル。ソレジャ」
そう爺さんに言うと俺は全速力で学校へと走って行った。
「ふむ。そのままじゃと大変なことになるから忠告したのにのぅ」