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『Story2』百歩先に選ばれし天才

孝之の考えが掴めず困惑する涼一。何故自分はこの場所へと連れて来られたのだろうか?

その真実を知らされ後悔せざるを得ない涼一。

彼は孝之に一体何を期待されているのだろうか?

涼一は心の中で理解しがたいプラッシャーと葛藤し続ける。

「どうだ謎は解けたか?」



一時間程して帰って来た孝之が涼一に問いかけた。



「いやぁそれが・・・まだ」



「そっかじゃしょうがないっ!今日はもういい。部屋に戻って休め」



「はいっ」



そう言って自分の部屋に戻った涼一は、浮かない表情のままベッドへ

と寝転がった。



「孝之さんは一体僕に何が言いたいんだろう。どうすればいいんだろう。

突然天才呼ばわりされてもなんだか違う気がする。こんな僕になにが出来る

と言うのだろうか」



一方孝之はその場に残り空の星を観測していた。

彼は空を見てロマンチックな気分にでも浸っていたのだろうか?

それとも美しい天女でも見付けようと浮かれていたのだろうか? 

いや違う、彼に限ってそれはありえない。そうだ。

彼の目的は全く違ったものだった。


次の日、涼一はまた孝之に呼び出された。そしてあの昨日と同じ質問だ。



「答えはでたのか?」



「・・・・・・・・・」



追いつめられる様に強張る表情を浮かべる涼一。



「お前って本当にしょうがない奴だなー。なぁよく聞け、俺が見込むって

事はだな、お前は天才の素質があると言う事なんだよ」


「何故昨日初めてお会いしたばかりなのに、僕が天才だなんて解るのですか?

何を持ってそんな事が・・・・・」


「まぁ落ち付けって、今日はちゃんと教えてやるからさ」


「本当ですか?」


涙目にも見える涼一。

そんな涼一に孝之は声のトーンを下げて静かに告げた。


「勿論さ、まずお前が天才だと言いきれるのは、俺が天才だからさ。

天才の俺には何でも解ってしまうんだぜ。今のお前に価値はなくとも、先を見据えて

お前を選んだのさ。凡人には所詮たった今、この現状を見ているだけで精一杯だろう。

だけど天才は先を見据える事が出来る。だから天才って言うんだよ。」



「そうなんですか」



「今世間が無駄を排除し、クリーンで素晴らしいエネルギーを使って地球を守り

そして共存し、生活が成り立っているのは一体誰のおかげだと思ってるんだ?

それは紛れもなく俺の発明があったからさ。」



「発明?」


「そうさっ」


ところで一体どんな発明をなさったんですか?

それ程のあなたが何故誰も存在すら知らないのですか?」


「良い質問だなっ」



そう言ってデスクの上にあったコーヒーを一気に飲む孝之。そして



「世間が俺を知らないのは当然さ、

俺がこの組織の中に籠って世間に顔を出してないからさ。

だから何処かで誰かに会っても人は誰も俺を知らない。

しかし万が一顔を知られてたとしても、俺はこの組織からは一歩も出ない

以上命を狙われる危険性はない。お前達ダミーはその為にいるのさ。」


「ダミー?」


「ああっ俺に似た影武者達の話」


「しかし何故、人々を拉致してまで?」


「ちょっと待ってくれ、拉致とは言いがかりじゃないか。

これは拉致ではない。ちゃんとした契約さ。お前にも高額を支払っただろう。

もしかしてそれ自体を覚えていないのか?」


「あっいいえ、勿論覚えています」


「いい加減気付けよなっ。」



そう言って今度はタバコに火をつける孝之。



「はっはい・・・・・」



何が起きるのか緊張で体が強張り続ける涼一に



「影武者としてここへ連れて来られたお前は、本来なら俺のダミーに

なっていたんだぜ。つまり俺のダミーとなるといざとなれば、外の世界へ

出ては命を狙われ続ける事も厭わない。そう言う仕事が待っていたって事さ」



その言葉を聞いて涼一は何かに疑問を感じたのだろうか?孝之に投げかけた。



「あのっ・・・質問します」


「何だ言ってみろ!」


「何もあなたは素晴らしい能力の持ち主なんだから、例えば上界から人を

連れて来なくても、あなた自身のクローンじゃダメだったのですか?」



涼一の新たな質問にも動じる事なく、孝之は即座に答えた。



「それはだなぁ、

俺のクローンともなれば俺の魂自体も分散して受け継ぐ事となる。

そうなるともしもクローンに影響が出れば、俺自身にも影響を及ぼさない

とは言い切れない。


「もう一度、質問してもよろしいですか?」


「何だ?言ってみろ」


「しかしあなたの話は非科学的であり、単なる人々の心の中にある、

ある種迷信の様なもので、それは感覚的感情に過ぎないのでは

ないでしょうか?まだこの世の中、科学としては認められてはいない以上、

それは実質的に科学とは言い難い気がするのですが・・・。」


「なるほどなっお前の見解はそうか、

ただ俺ならもっとまともな質問が出来るぜ。

大体お前の質問を文章にしても、てんで事が解りずらい。

どうあるべきかと言うより、まずはお前の国語力が問われるべきじゃない

かと、あまりに幼稚レベルになりさがっている気がする。

まぁ俺は天才だから例えどんな文章を使って話されたとしても

理解出来るけどさ。そんな言い回しじゃ俺以外の奴には全く通じやしないぜ!」


「すっすみません」



その言葉になんとなく恥ずかしくなった涼一は頭をペコリと下げた。



「じゃあ教えてください。何故あなたは妄想に過ぎない話をさも簡単に

方程式で割り切れる様な言い方をするのでしょうか?

それは単なるテレパシーの様なものなのではないでしょうか?」


「じゃあお前に聞くが、テレパシーは単なるものだと言い切れるのか?

誰がそう決めた?」


「それは・・・・・」


「答えられないよな?それはお前が先を全く見ていない事に

問題があるんだよ。テレパシーは思い込みじゃなく計算で割りきれるもの。

そしてクローンの生態についても同じ事が言える。

例えばお前自身のクローンを二体作ったとする。

そうして一体は全く別の場所に持っていく。地球の真裏とする。

そうして片方のクローンを殺す。

この時もう片方が何かしら影響があったとする。

ただし人には能力の差がある。テレパシーに敏感な奴もいれば、

又鈍感な奴もいる。その強弱がある。学校で体育が得意だけど勉強が苦手、

方や体育が苦手だけど勉強が得意。そんなある種偏見的人間の

特徴とでも言うのと同じく、テレパシーにも能力に個人差があるんだぜ。」


「はいっ?」


「一つ前の時代では人の能力の伝達スピードが計算出来る。

その程度だったに過ぎないかも知れない。だが俺の技術のによってその

すべての謎を解き明かし、そして世の中を大きく変えてしまったのさ。

それがお前の言う非科学だよ」


「すみません言ってる意味がまるで解りません!」



そう言う涼一に孝之は話を続けた。



「俺は今までに話した実験を何度となく繰り返し、クローンへのダメージ

についてのデータを取り続けた。つまりある生物を何度も殺し続けた。

そしてその数値を導き出し、結果的にクローンを扱うのは危険だと判断した。」



今回の彼の答えはいつになく簡潔だった。



「そうだったんですか。」



その後少しの沈黙が続き・・・、そして



「もし興味があるなら、ここにその資料を置いておこう」



孝之はそう言ってその場を離れた。



「あっ待ってくださいっまだ話が・・・・・」



しかし孝之は何も聞こえなかったかの様にそのまま行ってしまった。



肝心な事を聞き忘れた・・・・・。



涼一はそう思ったと同時に、この時初めてとんでもない所へと来てしまった

事に気付かされた。いくら就職難とは言え、金に目がくらんでこんな所へ来て

しまった自分自身の事を悔まずにはいられなかった。



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