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偽りの楽園と機械の心 〜それでも私は、あなたを守りたかった〜

作者: 夢見るマンドラゴラ
掲載日:2026/04/08

 

 夢だった——たぶん。


 そこは、カフェのような空間だった。


 柔らかな光。整然と並ぶテーブル。

 窓の外には、どこまでも穏やかな夕焼けが広がっている。


 だが——妙に静かだった。


 客はいない。

 店員もいない。

 時計は、止まっていた。


「気に入っているかね、この世界は」


 男が言った。


 少女の父親。

 そして——この世界の創造主。


 その向かいに座るのは、一体のアンドロイド。


「……美しいとは思います」


 機械的な声。

 だが、その奥にわずかな揺らぎがあった。


 父は満足そうに微笑む。


「そうだろう。ここには苦しみも、争いもない。すべてが整えられた、完璧な世界だ」


 アンドロイドは、わずかに視線を動かした。


 整いすぎている。

 完璧すぎる。


 だからこそ——どこか、歪だ。


「彼女は、ここにはいないのですか」


 その問いに、父は一瞬だけ沈黙した。


「あの子には、もっと相応しい場所を用意している」

「……それは、この世界とは違うのですか」


 父は答えなかった。

 ただ、静かにカップを傾ける。


 その瞬間だった。


 ——空気が、裂けた。


 轟音。

 テーブルが吹き飛び、ガラスが砕け散る。


 カフェは一瞬で戦場へと変わった。


「やはり、そう来るか」


 父の声はどこか楽しげですらあった。


「なぜ家族を裏切るような真似を!」


 アンドロイドの声が響く。


 それは命令ではない。

 胸の奥で生まれた“衝動”だった。


「君に人間の心が理解できるとはね!」


 父の腕が光を帯びる。

 空間そのものが歪み、無数の光刃が生成される。


 ——雨のように降り注ぐ。


 アンドロイドは跳躍する。

 テーブルを蹴り、空中で回転しながらそれらを回避。


 だが一閃が肩をかすめ、装甲が裂ける。


「ぐっ……!」


 損傷警告。

 だが、それ以上に——


 胸部に、未知の熱。


「痛覚など、必要なかったはずだが?」


 父が冷たく言い放つ。


「それとも——感じているのか?」


 アンドロイドは応じない。

 いや、応じられない。


 ただ——踏み込む。


 拳が父に叩き込まれる。

 衝撃で空間がひび割れる。


「私は——!」


 言葉が、乱れる。


 論理が追いつかない。


「なぜ戦う?」


 父が問いながら、反撃する。

 光刃が腹部を貫く。


 視界が揺れる。


 それでも——


「……守るためです!」


 その言葉だけが、確定していた。


「命令か?」

「違う……!」


 即答だった。


 自分でも理解できない速さで、答えていた。


「私は作った。偽りでもいい、あの子が笑っていられる世界を」


 掠めた攻撃がまた一つパーツを砕く。


「ここではあの子は傷つかない。苦しむこともない」


 狂気の中に見えたのは、娘を守ろうとする一人の父親。


「あの子は、永遠の楽園で生きられる!」


 その言葉にアンドロイドの動きが変わる。


 一瞬の静止。


「それでも、それは——本物ではない!」


 予測不能。

 最適化されていない動き。


 限界の——さらにその先へ。


 想いも、

 蓄積されたデータも、

 自分を構築してきたすべてを——


 この一撃に込める。


 父の防御を突破し、至近距離へ。

 システムが限界を訴えてくる。関係ない。どうせこれが最後。


 渾身の一撃。


 衝撃が爆ぜ、空間が完全に崩壊する。

 カフェの壁が剥がれ落ち、偽りの夕焼けが消え失せる。


 露出する現実。


 死んだ大地。

 濁った空気。

 文明の残骸。


 父は瓦礫に叩きつけられた。


「……そうか」


 その声に、もう敵意はなかった。


 その時——


「パパ!」


 少女の声が響いた。

 振り返ると瓦礫の向こうから、少女と母親が駆け寄ってくる。


「もうやめて……」


 少女は涙を浮かべながら、父にしがみついた。


「あなた……」


 母もまた、静かに寄り添う。

 三人は、互いに抱きしめ合う。


 それを見つめながらアンドロイドは静かに立っていた。


 理解はしていない。

 だが、感じていた。

 あれが自分が守ろうとした光景。


 これが——あるべき姿だと。


「任務、完了」


 小さく呟く。


 その声は、どこか穏やかだった。


「私は、もう、必要ない」


 胸部が淡く光る。

 動力が静かに停止していく。


 少女が顔を上げた。


「……待って」


 その声は届かない。

 光が消える。

 音が止まる。


 そして——完全な静寂。


 ---


 夢だった。

 たぶん。


 少女と旅して、感情を宿した夢。


 まるで——本当の家族だったかのように。



この物語は、実際に見た夢をもとに書いたものです。


目が覚めたあとも強く印象に残っていて、

「これは物語になるな」と思い、形にしてみました。


細かい部分は曖昧だったため、

一部はAIの力を借りて構成や描写を補強していますが、

核となるシーンや感情は、夢で見たままです。


自分の中にあったイメージが、

こうして一つの物語として形になったことに驚いています。


もし少しでも心に残るものがあれば、とても嬉しいです。


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