第70話:帝都ギルドの試練。Aランクへの壁と「鉄腕」の巨漢
帝都アステリアの冒険者ギルド本部は、これまでの街のそれとは規模が違った。大理石の柱が並び、行き交う冒険者たちからも、一癖も二癖もある強者の気が漂っている。
「⋯。ふぅ。ようやく着きましたね。先輩、ここでの依頼をこなせば、いよいよAランクへの昇格が見えてきますよ」
カスミがギルドの掲示板を見上げながら、大翔の肩を軽く叩く。現在のパーティランクはB。帝都の核心に触れるには、より高い権限と社会的信用、すなわちAランクの称号が必要不可欠だった。
「⋯。Aランクか。誠十郎さん、俺たち、やってみせますよ」
大翔の決意に、誠十郎は興味なさげに視線を窓の外へ向けていた。
「⋯俺に言うな。剣を振るうのはお前たちだ。俺は、その剣が鈍っていないかを見ているだけだ」
【試練:受付嬢の宣告】
「『白星の枝』の皆様ですね。ゼニスでの実績は聞き及んでおります」
受付の女性は、書類に目を落としながら事務的に告げた。
「ですが、帝都でAランクを名乗るには、既存のAランク冒険者一名以上の『推薦』、あるいは『実力検定』での勝利が条件となります。⋯。現在、推薦者は?」
「⋯。あいにく、この街に知り合いはいませんわ。その検定とやら、私が受け持ってもよろしいかしら?」
マリアが一歩前に出る。その気品ある佇まいと、聖騎士としての重圧に、周囲の冒険者たちがざわめき始めた。
「いいだろう。面白い。その検定、俺が受けて立とうじゃないか」
ギルドの奥から、地響きのような足音と共に一人の巨漢が現れた。
【激突:鉄腕のガラン】
現れたのは、全身を分厚い重装鎧で固め、身の丈ほどもある巨大な戦槌を担いだ男――Aランク冒険者『鉄腕のガラン』。
「ほう⋯。いい面構えだ。だが、帝都のAランクは甘くないぞ」
ギルド併設の訓練場。マリアとガランが対峙する。
誠十郎は観客席の隅で腕を組み、静かにその光景を見つめていた。
(――ドォォォォンッ!)
ガランの戦槌が振り下ろされ、地面が爆発したかのように弾ける。マリアはそれを紙一重で回避し、流れるような動作で剣を抜く。
「重いだけでは、誠十郎様の足元にも及びませんわ」
マリアの剣が、ガランの鎧の隙間を的確に突く。だが、ガランの防御は鉄壁だった。魔力で強化された鎧は、並の斬撃を通さない。
「先輩。マリアさんの剣、少し急ぎすぎていませんか?」
カスミが不安そうに呟く。誠十郎は、その言葉を聞き逃さなかった。
「焦りではない。あいつは、俺に見せようとしているだけだ⋯。己の『正しさ』をな」
【エピローグ:昇格への一歩】
激闘の末、マリアはガランの剛腕を封じ、その喉元に剣先を突きつけた。
「そこまでだ。見事な身のこなしだ、聖騎士殿。俺の負けだよ」
ガランは豪快に笑い、マリアの実力を認めた。これでAランク昇格への第一条件はクリアされた。だが、受付嬢が提示した「最終試験」の内容に、大翔たちは表情を引き締めることになる。
「実力は証明されました。では、最後の依頼です。帝都近郊の『嘆きの森』に現れた、正体不明の魔物の調査および討伐。これを完遂すれば、皆様をAランクとして認定いたします」
誠十郎の瞳が、僅かに細まった。その森から漂う不穏な気配。それは、彼がかつて切り伏せた「外」の力に似ていた。
(第70話・完)
面白いと思ったら、下の☆で評価していただけると励みになります




