9話〜1番の人気者〜
9話〜1番の人気者〜
入学式、クラスを確認していると。
「どうかな?自分のクラスは?この学園は各クラスに人数が決められている訳ではない。100人のB生徒がいたらBクラスは100人のクラスだし、Eが1人なら1人のクラスだ。だか、Aクラスは違う。文字通りのトップ10。上位の10人のみが入れるクラスだ、どんなに実力人気がありトップ10と評価が大差ないとしても、トップ10に入ることができなかったらBだ。」
最強の10人。流石は企画上の学園、それっぽいな。いい演習だ。
「いわば、学園最強の十傑だ。」
確かクラスはテストごとに更新される評価で変わるんだよな。今仮にAだとしても、蹴落とされる可能性もあるってことか。
「うん、そうだな。コメント欄も気になっているしな。では、学園最強の二人を紹介しよう。」
学園最強の二人?
「名を呼ぶ、前に出てきてくれ。」
学園最強か。人気、実力を兼ね備えた現段階トップの二人。英和那さんはトップ10ではある、ランクAはこの目で確認したが、もし英和那さんがAクラス最下位だったらどーしよ。恐ろしい。
「まずは人気もトップクラスだが、それ以上に圧倒的なゲームの実力。非プロでありながら、世界大会優勝チームの選手からも私より上手いと評価される、化け物中の化け物。無所属最強ゲーマー「Gills」」
そう呼ばれると、ある黒いパーカーを着た男が前に立つ。外見は若いが成人はしているだろうと言う印象。白に近い銀髪に色白い肌。
「こいつがGills。あのキャラコンの鬼。」
「無愛想な印象ですわね。」
壇上の前をキリッと睨む横の女。
「なに、英和那さん。Gillsさんのこと嫌い?警戒してるの?」
「もちろん、警戒はしてますのよ。」
「あら、自信家の英和那美姫様にそう言わせるとは。Gillsさんは流石だね。」
「自信家、ね。」
横の女は何故か鈍い反応をする。そんな時、壇上のGillsさんにマイクが渡る。
「何か一言。」
「あー、っと。視聴者に?えっと、ボチボチ頑張るから見ててくれ。あとはー、なんか面白いこと言ったり?しようかな。」
「配信を盛り上げるなら何を言っても良いよ。Gillsくん。」
Gillsはポリポリと頭をかき、その後何かを思いついた素振りをして。
「お前らの中で俺が一番ゲームが上手い。俺は負けない。まあ、精々、ついてこいよ。なんつって。」
どよめく会場。コメント欄も盛り上がっているだろう。煽られた、そう捉えて良いのだろう。よく思わない者も、その言葉に憧れを抱く、または闘志が燃え盛る者もいるだろう。興味ない者も少なからず。それでも揺れ動く空気。これが最強の一言。
「重みがあるなぁ、影響力。強さは自信にか。それでも、勇気があると思っちゃうなぁ俺は。」
「自信があり過ぎるのも、困りものですわ。」
「あんたが言えるのかよ。ブーメランすぎ。」
「まったく、私は英和那美姫ですわよ。」
何を言ってるのかよく分からん。俺には意図が分からず矛盾に聞こえる。
すると英和那さんはため息をつき。
「ふう、さてそろそろ。」
そう呟き、英和那美姫は列を抜け前へと進んで行く。
「えっ、ちょ。は?」
周りの目を気にしつつも、つい追いかけてしまう。
「ちよ、どこ行くの?トイレ?」
すると、英和那さんは頭に手を添えてため息をつく。
「私を誰だと思っていますの。」
「はい?」
「まあ、そこで見ていると良いですわ。誰が一番かを。」
その自信に満ちた表情は先ほどの鈍い反応とは言って変わって、いつも通りの英和那美姫の顔である。ドンドンと壇上へと進んで行き、壇上のライトの下に立つ。マイクをGillsから奪い取り。
「今見ている視聴者の皆さん。そしてこの学園にいる皆さん。感謝すると良いですわ。視聴者は私を少しでも多く見ることができ、学園の皆さんは私の美しい素顔、生の美声を感じれて。私が、私こそが、英和那美姫。この学園一番の、美しく、強く、素晴らしい、一番の人気、ですわ。ふふん。」
会場がどよめく。呼ばれてないのに前に出る女、その女が自信満々にあの英和那美希と名乗るのだから、見ている視聴者もここに居る奴らも、その全員が度肝を抜かれただろう。
自信家、と言って良いのか?誰も何も言っていない。のに奴は前に出て自らを一位だと名乗った。普通あんな事をやって一位じゃ無かったら?なんで考えるだろう。でも奴には迷いなんてなかった。自分が一位という事を疑わない。自他共に認める最強、言った通りの「1番の人気者」か。
「いや、大胆不敵にも程があるのですが。」
冷や汗を掻きながら、ガルガンチュアはマイクを手に取っていた。
「まあ、いいか。えーっと、あー、一位は今本人が説明した通りで英和那美希さんですー。」
運営側にも方針がある。それをぶち壊されてあたふたしたのか、適当な司会である。
完全に空気の流れを持っていった英和那さん。すると、
「ねえ、今俺が良い感じに煽りをいれて盛り上げてたジャン。」
「あら、そうだったの。」
「あら。じゃねぇよ。よくも邪魔したなこのヤロウ。」
気持ちのいいドヤ顔をGillsに向けて、
「あなたより私の方が影響力があった。その証明としてこの空気。実力の違いってやつですわーっ!」
おっほほほ。っと高笑いを見せる英和那さんだった。
〜数日前〜
改めまして、俺の名前は夏崎茜、akaiという名前でゲーム配信をしている者だ。
年齢は19歳、留年している為高校2年である。(本邦初公開)
「そういや、讃絵さんとrigるさんには高校在学中の事は濁しちゃったな。」
なぜ自分自信で素性を振り返っているのかというと、ストリーマー学園に入学する為の同意書類的な物に記載する為だ。
「高校名とか久々に書くな。」
ふと、思い出していたのはこの間の話。讃絵さんから聞いた、確か天使天さんの件。
スト学入ったら絡むっぽいよなぁ。先にちょいリサーチで配信アーカイブでも見てみるか。
「っと天使、そらも天か。」
天二つ使う名前ってなんやねん。確か讃絵さんと同期でニコイチ見たいな感じのコンセプトの人。天を讃えるってコンビか。
「お、何々?配信中じゃん。」
パソコンの画面には配信中。「【リハビリ配信】暇だからおじさん育成するゲームやる!?【天使天/ぶいカノ】」っと書いてあった。
「あー、ちょっと前に流行った「おじ育」って奴だ。」
その時の俺は、あんまり讃絵さんの言葉をちゃんと捉えていなかったのだ。なのんの気なしで配信を見た。勿論コメント欄だって目に入る。
「えっ?」
それを見た瞬間目を見開いた。同接も悪い数字じゃない、コメントの流れなんてかなり早い。でもそれは、楽しくゲームをやっている少女を見る配信ではなかった。
「シNE」
「おじさん育成は当てつけすぎw」
「人殺し」
「よく生きてられるね俺なら死んでるw」
「非処女人殺し天使w」
「ねし」
「この配信はせめてもの弔いw」
「空気悪」
「ゴミ溜め」
「4ね」
「なんでこいつが許されてんのw同じ人間?」
「生きてる価値ないやろもう」
「どうせなら俺に犯されてから死ねよ」
「今までの有料会員料返してから消えろ」
「あの世からリベンジポルノおじさんきたら笑う」
「俺の天たんを悪く言うなカス陰キャニートども」
「消えろ」
「4ne」
「V豚乙」
「こいつなんで契約切れてないの?企業もおかしいだろ」
「枕やろ」
「事務所の社長にすでに傷物にされてるからおじさん切れたんだよ」
「俺もおじさんになって犯したい」
「死んでもいいから天たんとしたいンゴォォォ」
「消えろ」
「コメ反応しろよ冷静ぶっこくな」
「東京都港区南青山8-4-13」
「草」
「解析班きたはよ顔」
「もう東京いないよ」
「情報遅い」
「あーあ、死んだおっさんのこと考えると心が痛むね。ね天ちゃん。」
「おいおい死んだおじさんがおじさんだったから分からんぞ。お兄さんだったかも」
「草」
「レイプする時点でキモいおっさんで草」
「私値」
思わず、腰が抜けてしまう程の衝撃。絶句したとはまさにこのこと。
99%がアンチコメント。いやもうアンチとか言う次元じゃ無いぞ。モデレーター何してんの?ってか配信していいのか?こんな状態で。
「ついに武器スロット解放で武器二つ持てるー!これでダンジョンいける。」
なんと言うんだろう、それを見ていると辛くなった。鳴り止まない誹謗中傷。余裕の犯罪コメントだ。それを確実に見て意識しているのにも関わらず、嫌な顔色一切見せずに笑顔を振り撒く天使さん。だがどう考えても無理している。誰がどう見ても大丈夫じゃない。から元気とか言う次元を超えている。なぜ配信を切らないのか、なぜ運営はこれをそのままにしているのか、分からないが。
「こいつとコラボをしろって確かに言えないね。」
話を聞いただけでもリスクあると誰でも思う。でもこれを見たら、他の配信者たちはどう思うだろう。
「こいつも、コメントも、これを踏まえて誘ってくる讃絵さんも、全員おかしい。」
讃絵さんは、まるで誰か救世主を求めているように、縋るしかないのだろう。親友のこの様を。
「こたえるなぁ。」