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6話〜リアル初顔合わせ〜

 

 6話〜リアル初顔合わせ〜


 なんのかんのあり、讃絵さんが配信を付けて3時間、俺たちは雑談をしていた。ランクマッチでかなり理不尽な負け方をしてしまい、気分が下がったので気分転換である。


「順調だったのが一気にマイナスが続くね。」


「そうですね。結構盛ってかれましたよねポイント。」


「でもそろそろ終わりにしないと、配信。」


「了解です。」


「ちょっとしたらまた潜って終わりにしようかな。」


 讃絵さんの発言に呼応するようにコメント欄の流れが加速する。


「コウ姫予定あるのか?」

「終わっちゃうのか」

「ラスト頑張れ」

「盛り返せぇぇ」


 コメント欄を見たであろう讃絵さんが喋り出す。


「そーなんだよね。この後友達とご飯行きます。」


 そう言った発言にさらにコメント欄が加速する。


「友達?」

「そらちゃん?」

「何食べに行くのかな」

「俺と行きませんか?」

「akaiとだったら草」

「こーれ彼氏です」

「また酒飲むのか」

「界さんとでしょ」

「センスは今他の女といます。」


 やはりファンの皆は誰と行くのかと気になるらしい。


「もーみんな、詮索しないでよぉ。」


 コメント欄に唯一一人だけakaiと売っていたやつがいてヒヤヒヤした。


「じゃあラスト一戦行こー!!」



 と、言うことで、なんだかんだ讃絵さんとのゲーム配信を終えて今、集合場所である駅に来ていた。


 少し早く着き過ぎたか?30分前だしな。どーしよゲーセンかなんかで暇潰すかな。

 久々に人の多い所に来たと言うこともあり、少しソワソワし落ち着かない。今は春、にしては少しまだ寒すぎる。冬というわけではないが春と言うわけでもない、真ん中だ。そんなまだ肌寒い空気の中、パーカーにアウターと言う完全装備でもまだ寒いと感じる事に恐ろしくなる。夕方だと言うのにもう日は落ち切っている。


「ざぶい。」


 そう呂律の回っていないセリフを口にすると、


「寒いですねぇ。それにしても少し早いんじゃないのー、この寒さで30分くらい待たないとだよ。」


 と、後ろから声がする。女の人の声だ。人混みが多い所に立っているから、俺へ話しかけているわけではないとも思ったが、明らかに俺に向かって言っている言葉だ。それに言っている内容もいまの状況に合っている。


「あれ?讃絵さん?」


 そう言いながら振り返る。


「そー、讃絵コウです。初めまして。」


 目に映る少女は、白のニットにブラウンのブルゾン、黒いスカートにブーツを履いて、バッチリオシャレを決めたと言う感じの可愛い印象だ。それだけでは無く、髪色がホワイトベージュにインナーカラーが金という特徴的な髪色をしている。その髪色は、讃絵コウのVtuberイラストの髪色のまんまだ。


「あ、え、あ、はじめ、まして。akaiです。」


「あ、うす。讃絵ですw。」


 吃ってしまった俺の喋り方を真似して挨拶を返してくる。ケラケラと笑いながら揶揄ってきているのだ。


「Live2Dと印象変わんないですね。」


 髪の跳ねたところをくるくると指で巻きながら、


「でしょ、かわいい?」


 と、わざとらしく聞いてくる。

 俺は女の子と出かけたことは無い。だからわざとらしくともこう言う仕草には多少なりともドキドキしてしまう。


「か、わ、い、い、です、ね。」


「吃りすぎだろw。」


「それにしてもすごくオシャレな服ですね。」


「あ、そう?ありがとー。自分から言うと普通に言えるんだね。」


「あ、いや、すません。」


「なんでよ。まあ、今日は少しオシャレ頑張ってきたんだ。rigるさんがすごくオシャレな方だから、適当に来るのはね。」


「え、そーなんですか!?やばい、俺適当に来ちゃった。」


「そーなんだ。シンプルでいいと思うけど。凝ることばかりがオシャレじゃないよー。」


「そー、なんです、ね。」


 全く、オシャレはわからん。隠すつもりもないハテナが頭の上に浮かんでしまう。


「分かんないかw。」


 そんな話をしているとふと疑問に思った、なぜ讃絵さんは俺の容姿を知らないのに、俺がakaiだと分かり声をかけてこれたのだろう。


「ん、そーいえばなんで俺がakaiだってわかったんですか?顔知らないのに。」


「あー、それね。なんと言うか、遠目からみてどー見てもakaiくんだなぁーって。」


「そーですか?髪色とかも普通だし、なんか判断する要素あります?」


 あ、めっちゃ服ダサかったとかかな?いいや、やめよう。rigるさんもオシャレみたいだし、讃絵さんめちゃくちゃ可愛いしで、俺の服装が浮いちゃいそうで、自分のファッションセンスの無さを余計に意識してしまう。

 そんな事を考えて渋い顔をしていると、


「いや、そのリュック。」


 そう言って讃絵さんが指差したリュックは俺が身につけていたリュックだった。先程まで讃絵さんとやっていたゲームのロゴが大きく入った黒いリュック。


「このリュックでわかったんですか?たしかにこんなリュック身に付けてる人あんまり見かけないのかもしれないですけど。」


 すると目を細め、口角を上げ、讃絵さんは、


「いや、そのキーホルダー達だよ。」


「キーホルダーってこのスナイパー達ですか?」


「そ、そんなじゃらじゃら色々な種類のスナイパーを至る所につけてるリュック持ってるやつなんて、そうそう居ない。それにスナイパーって明らかにakaiくんじゃん。」


「まあ、たしかにスナイパーのキーホルダーを大量に付けてる奴なんてそうそういないっすよね。」


「それにしても、今日の通話でも言ってたけど、ほんっとスナイパー好きだよね。」


「まあ、なんか好きですね。」


「明確な理由とかがあるわけじゃないんだ。」


 明確な理由か。魅力的だから惹かれた、ってのが理由ではあるけど、多分そう言う事じゃ無い。強いて理由を挙げるとしたら、


「エイム悪いからっすかね。」


「エイムが悪い?いやいや、あのフリックでエイム悪いは多方面に喧嘩売ってるよ。配信では発言に気をつけな。」


「ん…な、なんと言うか、リコイルができないって事っすよ。フリックとかはまあまあですけど、後偏差とかはまあ経験でいけるっすけど。」


「なるほどね。だから武器構成スナイパーとショットガンなんだ。」


「まあ、そんなとこですね。ショットガンも苦手だけど。」


 今日のデュオ、と言うかほぼ全試合で俺はメイン武器をスナイパー、サブ武器をショットガンにする。リコイル制御が出来ないと言うのもそうだが、単純に近距離戦の機会が少ないからと言うのもある。スナイパーで牽制、ノックダウンを取り、遠距離でのアドバンテージを取る。出来るなら確定キルを取り、距離をさらに取ってまた撃ち下ろす。これを繰り返し回復、ダメージでのアドバンテージを確実に取り、グレネードで追い打ちを掛けつつ距離を詰めショットガンで最後を締める。これが俺のソロプレイにおける黄金式。近中での接敵を極限まで減らし、ローリスクハイリターンの戦闘を押し付ける。こんなプレイを続けているカスプレイヤーだ。だから人とやるのは苦手だし、たまにふらっと配信に来るアンチみたいな奴にお気持ちコメントを残される。


「でも、自分のムーブは近距離が苦手とかそう言う次元の話では無いかも知れません。」


「たしかに、あのネチネチスナイパーはキモすぎるしね。」


「ひどく無いっすか?」


「ニハw」


 まあネチネチプレイになったのは、元々スナイパー使ってたのと、昔っからソロなのが影響してるんだと思うけど。

 初めて撃った時魅了された、スナイパーに。あの快感が、音が、反動が、でもそれは、ただスナイパーを撃っている時とは違かったような?何かもっとリアリティーのある感じだった気がする。だから魅入られたんだと思う。


「あ、い、ん!あ、くん!あかいくん!」


「え、はい!なんですか?そんな何回も呼んで、」


「いや話しかけても反応しないからどうしたのかと。」


「あ、すみません。スナイパーなんで使ってんのかなーって考えてて。」


「いや、そんな真剣に考えなくてもよかったのにw」


「ほんっと、惚れ込んでるんだね。」


「そう、なんですかね?」


「ちょっとキモいかもw」


「え、あ、ひ、ひどく無いっすか?」


「ジョーダン!」


 女の子にキモいなんて言われた事ないから、冗談だと思わなかった。怖い。


「あ、それでなんの要件ですか?」


「ん、あー、rigるさん少し遅れるらしいから、先居酒屋行っちゃいましょー!」


 どうやらrigるさんから連絡が来たらしい。

 軽やかな足取りで少し薄暗い雰囲気の道を進んでいく。目当ての店の前に着くと酒の匂いが鼻腔をくすぐる。


「ついたよー、居酒屋陸路。」

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