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3話〜憧れたのは〜


 3話〜憧れたのは〜


 いつからだろう、この世界で生きていくと決めたのは。プロゲーマーに憧れて始めた配信、それよりもずっとずっと前、俺がゲームという世界にの名込んだのは。

 小さな頃から、学校には馴染めず、厨二病を拗らせた反抗期からか親ともまともにコミニュケーションをとらず、だんだんと対人が弱くなっていく。別に友達が居なかったわけでも、親から見放されてたわけでもない、絶え間ない愛情を与えられ、多くの友達に恵まれていた。否定したのは自分だ。幸せな場所に身を置きながら、何故かずっと感じていた疎外感、俺の居場所はここじゃないと体が震える。意識しないように自分を誤魔化しても、毎晩睡魔の如くやってくる。いやだ、消えたい、かかわらないで、一人がいい、そうして一人になっていった。

 でも一人でよかった、人ではない、されど俺と寄り添い応えてくれる物があったからだ。ゲームの世界でそれを見つけ数年、異常かもしれない、それでも寄り添い共に歩いている。

 初めて握った時、右クリックを押した時、高速で放たれる激茎の反動を感じた時、初めて人を穿った時。魅了されたのだ、コンピュータの中に存在する鋼鉄の狙撃銃に。

 それからはただひたすらに握り、打ち続けた。荒野を駆け回り狙撃する、櫓の中から狙撃する、エネルギーを貯めて狙撃する、数々のゲームでこれでもかというくらいにスナイパーを使い続けた。憧れて始めた配信、観ている人は少ないけど少しファンはいる。そのファンの方も俺のスナイパーの腕を観に来ているみたいだ。

 多分、ずっとこうやって細々と少ないファンを大切にしながら配信をするのだと思っていた。そして少しずつ大会などにお呼ばれしてスナイパーで結果を残して、界隈ではスナイパーの人なんかで定着したらな、なんて思っていた、この間までは。


「スト学入学式まで3日か。」


 ストリーマー学園、俺が招待された企画。ストリーマー、プロ、Vtuber、ジャンルバラバラの配信者たちが同じ建物で生活する。ゲームで全てが決まる学園。ラノベみたいな設定だ。それを運営が配信するって言うんだから凄いよなぁ。どうやら今回の企画はあの超大型プロゲーミングチームCLこと「セルリアン」と国内トップの人気Vtuber企業の「ブリンク」、そして世界No.1人口を誇る大型FPSゲーム「LAVLLOW」を運営する大企業「GAMELEE」が共同で立ち上げた企画らしい。

 スト学に参加する配信者は多いだろう。誰が参加するのかはまだ分からない。メンバー公開は配信者も視聴者も当日まで分からないらしいが、


「Vの箱なら箱内で情報交換などをしてるのかもしれないが、俺には仲のいい配信者は一人もいないからなぁ。」


 今までコラボ配信をした事があるのは、rigるさんと讃絵さんだけだ。


「どうしてもフルパでやりたい時は視聴者に参加してもらってたからな。」


 その後スト学運営から少しずつ情報が発表されていった。どうやらFPSだけではないらしい。


「MMOもあるんだ、あとはコンシューマーゲーム以外もあるのか。ボードゲームとかはやんないよな?」


 情報が増えるほど、何やるのかよく分からないな。


「最近流行ってるEスポーツの専門学校的な感じではないっぽいな。ストリーマーの腕を上げる目的より、やっぱりエンタメ企画って感じだよな。学園って言ってるけど。」


 何か今回のために準備とか練習したいな。MMOやった事ないし、ちょいと練習してみるかな。


「とりあえずゲーム屋でもいくか。」


 そう思い外出の支度をしようとしていると、パソコンから通知がなる。確認すると通話アプリの通知だった。

 俺は友達がいない。そう言ってソロアピールでイキっているのではない。真面目にいないのだ。だから通知がなるのは珍しい。


「あれ?讃絵さんからだ。」


 アプリを交換しているのはrigるさんと讃絵さんだけなので、どちらかだとはわかっていたが。


「何てきてるかな?えっと打ち上げ?」


 讃絵さんからの連絡の内容は、この間の大会の打ち上げだった。この間の大会でチームが3位だった事とお疲れの意味を込めての打ち上げを企画してくれたらしい。


「んん、今日の7時からか、急だな。」


 おそらく讃絵さんもスト学に呼ばれているからだろう。あと3日でスト学だからな、始まったら絡む機会が無くなるからな。


「讃絵さん俺がスト学呼ばれてると思っちゃいないな。まあそれが普通の考えだけど。」


 さらにもう一つ連絡が追加されたのでそれをみる。

 ん?集合場所?え、みんなでゲームやるとかじゃないの?

 送られてくる詳細にどんどん焦りが出てくる。


「え?オフで飯なの?これ。」


 唐突に決まってしまったオフ会。憧れのプロと人気Vtuber(女の子)とご飯。スト学なんかどうでもよくなる、ビッグイベントが始まろうとしていた。


 〜讃絵コウ視点〜


 カタカタとキーボードで文字を入力する。連絡を送っているのは大会メンバーが入っているグループチャットだ。


 グループチャット「讃絵親衛隊(3位おめでとう)」


 コウ「突然なのですが、今日の7時から打ち上げしませんか!大会の!」


 コウ「3位おめでとう会とお疲れ様会を兼ねて!!」


 rigる「俺はいいよ、いつでも暇だしね。」


 コウ「暇って、プロの方が本当に暇なんですか?」


 rigる「たしかにいつでも暇は言い過ぎたけど、あの天下の讃絵コウ姫には及びませんよ。」


 コウ「ちょっと、コウ姫はやめてください。rigさんこそ多忙でさらに老けちゃいますよ。」


 rigる「だれがもとから老け顔だよ!」


 コウ「すみません、本当のことなのでついw」


 rigる「おじさんをあまりいじめんでくれや。」


 コウ「akaiさんはどうですか?」


 akai「自分もいけます。」


 コウ「皆さん東京住みですよね。○○駅に7時集合で居酒屋行きませんか?」


 rigる「おっけい!居酒屋渋くていいねw」


 akai「オフですか?」


 コウ「あれ?オフNGでしたっけ?」


 akai「NG無いです。○○駅了解です。」


 と、そんなやりとりをチャットでする。まだakaiさん硬いな。rigるさんとは面識はあるけど、オフは二人とも初めてだ。

 時計を確認するが集合までまだ4時間以上ある。


「練習しようかな。」


 正直、この間の大会はrigるさんが強かった大会だった。私はゲーム専門のVtuberではない。だが、サポートキャラで後ろで回復を配りながらアサルトを撃っていただけ、私は前に行かずピンチになったらすぐ逃げる。rigるさんは、「俺が詰めるからサポートを頼む、削られたりダウンしたら生存優先すぐ逃げていいから。長く生きればサポートで蘇生もできるしポイントも盛れる。」とは言っていたけど、正直役に立ったとは言えない。回復も撃ち合うrigるさんより私の方が使っていた場面もあったし。私も腕を上げないと。akaiさんも近距離苦手って言ってたけど、よく考えると、rigるさんと一緒に撃ち合いにいって、rigるさんのサポートも逃げる私のサポートもしていた。私とrigるさんの間で色々な所をカバーして対応してた。


「あれ?ダウンがないわけではないけど、ファーストダウンした場面が一度もなかったよね。それに後ろから来る敵とかに全部反応して先に撃ち合ってたかも。」


 最後の一撃でみんな驚いて気づいてなかったけど、すごくやりやすいプレイと広いカバー範囲。


「プレイスタイル?的に目立ってないけど、akaiさんってすごく上手いのでは。」


 自分の反省をするつもりが、akaiさんの上手さをしんみりと実感していた。撃ち合いは苦手でも、akaiみたいなサポートができれば私も活躍できるかも。


「よしよし!練習だ!!!」


 そう思いゲームを起動すると、フレンドリストのランプが光っていた。

 この時間って誰がやってるのかな。

 そう思い、フレンドリストを開くと、そこには「akaiプレイ中ランクマッチ」と書いてあった。


「akaiさんやってるじゃん!え、一緒にやってくれないかな。」


 akaiさんのプレイみたい!参考にしたい!


 そう思いパーティ招待を送ろうと、akaiさんのバナーを選択すると、


「あれ、パーティ誰でも入れるモードになってる。」


 少し悩んだが、ダメと言われたら抜ければいいかと思い。パーティに勝手にお邪魔する。パーティに入ってみると、一人でプレイ中だった。


「ランクマッチを一人で、余程の自信があるんだな。」


 いや、やる人がいないだけだな。

 akaiさんには悪いが、多分この人一緒にやる人がいないのだろう。ソロ戦士なのだ。


「誰かとやってるとこ見たことないよな。」


 関わってそんなに経っていないが、コラボ前に少し予習として彼の配信を見に行ったことがあるが、どれだけ遡っても一人で配信し続けていた。

 数分経ちakaiさんがマッチから帰ってきた。すぐにチャットをした。


 コウ「akaiさんご一緒していいですか?」


 そう打ってから、そこそこの沈黙が続く。体感約5分後、


 akai「了解です。」


 やっぱりまだ距離があるし硬い。上手いし参考にしたいので仲良くやりたいのだが、なかなか難しいな。

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