15話〜決戦〜
15話〜決戦前夜〜
「んじゃあ、カスタムまであと一日、ラストの練習します。」
「はーい。」
「はーい。」
カスタム前日、最後のチーム練習を行う、その前に昨日開かれた「練習カスタム」の振り返りをすることになった。俺たちのチームは弱いわけでは決して無い。
自分で言うのはあれだが、俺はそこら辺のストリーマー達の中では群を抜いてスナイパーが上手い。まあスナイパーOTPなのだから当たり前ではある。それでも、「遠距離が強い」これがうちのチームが他のチームより優れている点の一つと言える。勿論天使さんと鬱木がいるから、近中距離も申し分ない。大会ソロカップ優勝経験のある、Vtuberの中ではトップクラスの実力者の天使さん。そしてハンドガンなら俺や天使さんより圧倒的に上手い鬱木だ。
至近距離、キャラコンと高いゲームセンスで鮮やかなプレイを見せる天使天、中距離、高いダメージレートを出す鬱木夢、そして超遠距離からの一撃必殺の俺。
そんな良い布陣が揃っても、高い順位を狙うのは厳しい。それが「練習カスタム」で分かったのだ。
「練習カスタムの振り返りなんだけど、警戒すべきチームがいくつかあるよね。考えたほうがいい!!」
以前の練習カスタムで脅威だったチームをまとめて、対策を立てようと言う話を振ってくる鬱木。
「まずは、GillsさんがいるチームAだな。」
「そうね、Gillsさんは言わずもがなの化け物。一人で最強だからか、バランス取られてるね。akaiさんやGillsくんみたいなゲーム専門のストリーマー以下のゲームをカジュアルに楽しむ様なVtuberの子達と組まされてるよ。」
「Gillsさんのチームは「Gills」「猫舌 ぺぺ」「秋野 実栗」の三人。Gillsさん以外は実績とかは無いし、まあ弱くは無いだろうけど。練習通り、Gillsさんをサポートするためのキャラだろうね。メディとか。」
「だろーねえ。他にはやっぱり美姫ちゃんのとこ?」
「あぁ、英和那さんのとこも脅威だよな。」
「あれ?メンバーだれ?あかい教えろ!!」
「大丈夫かよ。えっと、まず一人目は「英和那美姫」、超絶上手いわけじゃ無いが、全然下手じゃ無い。んで二人目は「シーナ」こいつが一番やばいな。」
※シーナ、セルリアカップ三年連続優勝チームに所属する、正真正銘の実力者。しかもイケメンイケボ!!若干22歳。男として強い!!※
「切り抜きで見たんだけど、シーナさんってスト学のクラスAだって公表してたよ雑談配信で。」
「Aランクが二枚入りのチームってなに??ずるく無い??」
鬱木は他全チームが思ってそうなことを言葉にした。
にしても、これでAクラスは三人が判明。一位の英和那、二位のGills、そんでシーナ。シーナが何位かわからんけど、トップツーは落ちることが無いだろうけど、今回のテストによっては9、10位の奴らは落ちてもおかしくは無い。
「俺もワンチャン入れねえかな?Aクラス!!」
「げんじつみろー」
「Eのあかいがなに言ってんだ。」
辛辣な天使さんと普通にムカつく鬱木。もう、酷くない!?
「脱線したけど、最後の一人が「ホルモン」さんだよ。」
「ホルモンさんなら私絡みあるよ。一生デカい声で笑ってるおじさんって感じ。元々はプロゲーマーだったみたいだし、ゲームは上手いんじゃない?LLのガチャ当たんなすぎてキレてるイメージ強いけど。」
「私は絡みないなぁ。」
「ガチャキレ芸は知ってるよ俺は。」
「Aランク二枚にプロ級ゲーマーも二枚。おかしいね。」
全員で頭を抱える。
「本当初日は激戦区だね。」
LLは1チーム三人編成なため、かなりのチーム数が出来てしまう。1マッチに入れるパーティの数は20パーティ。その結果対戦する区間を4つに分けて計四日間で行うらしい。
「そうだな、でも考えようによっては、ここで活躍すれば一気に飛躍だ。」
俺がポジティブな事をいって意気込んでいると。
「Eクラスは少し活躍するだけで上がりそうでいいね。」
突然鬱木が続いてくる。
「だまれ!」
「お姉様と馴れ馴れしくてヘイトがたまってんのよ!!いいでしょ!!」
「暴論だろ!!」
そんな俺たちの当たり前な会話を聞いて、天使さんは爽やかに笑っていた。平和の証だ。
〜第一回試験当日〜
〜公式配信〜
「では、第一回試験LLカスタム第一区間戦を行います。」
司会の声と同時に、俺達配信者は配信を付ける。その二分後全世界に俺達の配信が流れる。
「ほら、あかいさん気合い入れよ!!」
「あかいヘマすんなよ。」
「あぁ、じゃあ行きましょう。」
そう言って俺は不慣れながらも号令をする。
「勝つぞぉぉぉぉ!!」
ちょっと小っ恥ずかしい。するとその声に二人が、
『おおおおおお!!』
っと答えた。
〜カスタム第一試合〜ステージグラント〜
※グラント、森、荒野、砂漠、商業地対が四分割されたバランスの良い基本ステージ。※
試合が開始してすぐ、キャラピックの画面となる。俺達が練り上げ決めた戦術はヒットアンドアウェイ。天使さんが使うのはレイ、ワンピックとって無敵で戻ってくる。そんな動きの出来るアサシンだ。鬱木が使うのはクロノ、こいつも無敵で数秒前にいた位置に戻る能力を持つアサシン。そして俺がリキュール。こいつは瞬間移動と物資奪取に優れたサポーター。パーティのキャラ全てが移動アビリティを持っている構成。これで確実に相手パーティを一枚ずつ落としていく、そしてピンチになれば逃げて繋ぐ。これで勝ちに行く。
キャラピックを順調に終えるとジャンプバスに乗っている画面なる。
「鬱木ジャンプ頼む。」
「はいよー。」
ジャンプした先、つまりランドマークに選んだのはテールアイランド。物資が多いわけではないが激戦区が横にある街だ。ここなら物資奪取アビリティでおこぼれを貰うことができるし、ランドマークが被らなければそれほど不味いと言うほどでは無い。
「無事着地!!」
『ナイスぅ。』
降りている最中周りを確認していたが、まさかの激戦区には誰も降りていない。これはワンチャン激戦区まで取れるかな?
「あかいさん、アビリティで武器確認。」
「了解っす。えっとエルクロはあったっすわ。二人とも欲しいのある?」
「いいなあーディーグルあったら欲しい!!」
「ええ、私はもうアサルトもショットガンも持ってるし。回復かな?」
「どっちもあるよ。いい物資。」
全員の基本武器が揃ったのはデカい。
俺はスナイパー「L96カスタムバレット」LL用にL96モデルを改造したこのゲームオリジナルスナイパーだ。
鬱木は「デザートイーグル」ハンドガンこのゲームでは最高威力の武器で当てんのクソ難しい。
天使さんはショットガンとアサルトorサブマシンガン。特にこだわりは無くなんでも使えるらしいが、今回持ったのは「ツウショットガン」発射が遅い代わりにダントツの威力を持つショットガンだ。
「隣の激戦区漁りにいく?」
「んんーどーだろ。ありっちゃありだけど、他のパーティも同じこと考えてたら不味いな。」
「そうだねあかいさんの言う通り。私達は激戦区と一番近いとこに居る。この前激戦区に一番で入って漁ると、後から来たパーティに撃ち下ろされる可能性あるかも。」
「地形的に激戦区は周りの街より低い位置にあるしね。」
「どーする?」
「激戦区の漁夫がプランだったけど、こうなるとここもあんまし安全じゃ無いな。後ろに壁のあるあの辺の岩場で待機して。激戦区でやり合い始めたら俺がスナイパーで漁夫。二人はアビリティで前に出て、危険なら即戻り。欲張らず行こう。まだ安全が大事。」
『おっけ。』
岩場で隠れて数分。激戦区にあるパーティが現れた。
「ワンパ、赤ピンね。」
「よく気づいたね、激戦区まで結構距離あるのに。」
「スナイパーだしね、そんなもんよ。」
「あかいくん?抜ける?」
「んん、どーだろ。」
目を見開き、スコープを除き、相手に照準を合わせる。
訳200メートルってとこだ。普通ならかなり遠い距離だが、このゲームのスナイパーは遠くても案外当たってしまうもので、それに俺の腕がある。
「んん、そうね。相手のレイを抜くわ。」
「おっけい。詰める準備しとけって事ね。」
「あかい外すなよ。」
「うん、でもちょい待って。」
ここで一枚抜いたとして、詰めに行ったらどうだろう。あのパーティとの戦闘には勝てるだろうが、それでも他の漁夫に処されるのは変わらない。のなら、
「もうワンパ来てから抜くわ。」
「了解」
すると天使さんは俺の肩に手を乗せて、
「がんば!」
と言う。こう言うところが天使なんだろうなと思わせる。
「あーお姉様も頑張って!!」
「あれ?あかいくんには言わないの?ゆめちゃん。」
「あかいはしらん。」
そうしているうちに激戦区にもうワンパーティが現れる。
「来た、抜きます。」
射撃ボタンを押した瞬間!激鉄の音と同時に、大口径の弾丸が発射される。
相手のレイの頭のてっぺんから2メモリ上の位置を狙った狙撃。
「ワンダウン。ヘッドショット162ダメージ。」
俺がワンダウンを取ると同時に、マップ全体に通知が行き渡る。
キルログ「Gillsダウン.akai狙撃217メートル」
「Gills!!」
「あかいくん!!ナイスダウン。後は確殺を入れれば!!」
すぐにさっきダウンさせたレイをスコープで除くが。
「隠れられた。やるなぁ。」
「でもあのパーティを漁夫ってるあいつらがGillsごと殺せば、うちらのキルポイントだよね。」
「そうだな。鬱木グレ投げまくってワンチャン狙うぞ。」
「うん行ってくる。」
「天使さんは鬱木の帰り道を警戒。」
「了解!!あかいくんは?」
「撃ち抜きます。」
『おっけい!!』
〜スト学公式配信〜
「おっと!!カスタム初日!!ファーストダウンはまさかのGills!!波乱だぁぁぁ!!」
「そうですねぇ。解説のミチミヤさん、この展開予想できましたかね。」
「無理でしょうねぇ。あのGillsが抜かれてしまうなんて。」
「抜いたのは、えーっと、個人ストリーマーakaiです。」
「聞いた事ない人だね。私がよく解説してる大会などでは見ないプレイヤーですからね。200メートルワンパンヘッショとは、まだすごい実力のストリーマーが隠れていたとはね。」
「おっとここで!Gills引き入るパーティの漁夫に走る、ホタルイカ、店長、芽吹実乃三人のパーティ!!」
「猫舌ぺぺ、自信のスキルで自動蘇生を図る!!だが秋野実栗ダウンしてしまう。続けて猫舌ぺぺもダウン。」
「まさかGillsパーティがここで敗北とは。」
「いいや!ログは出ていない!!となると家中に隠れたGills起きていますね。」
多分、みんながわかっていた事で、さほど驚きもしない事なんだろうけど、それでもやっぱり恐ろしいと思うし、すごいと思う。スコープ越しに生で見ていた俺だから分かる。あれとまともにやる奴がバカなんだなと。
他二人ダウン。自信も起きたばかりだと言うのに。ふとした瞬間。さらに来ていた漁夫も含め合計二パーティ。六人のプレイヤーがたった一人に薙ぎ倒された。
「なんとなんと!!当然だと言わんばかりに全員を薙ぎ倒して見せた。最強プレイヤーGills!!!!」
「なんでそれを勝てるんだ!?意味がわからない!?」
「元プロのミチミヤさんから見ても、やはり飛んだ存在という事でしょうか?」
「うん、おかしいよね。ゲームだよ?ここまで差が出るかね。」
そんなGillsのスーパープレイの後、時間は経過して最終円一個手前。
「なんとか生きてるね。」
「死ぬかと思ったさっきの。」
「いやぁさっきのはマジ鬱木のディーグルに助けられたね。」
「ゆめちゃんうまい!!」
「えへへお姉様ぁぁぁぁ。」
「私いいとこ無しだ。」
「そんな事ないですお姉様!!」
「いやぁもうちょい頑張ってよおおお。オネエサマ!!」
「黙れ死ね。」
「ええ、口悪。天使とは?」
「あかいがキモいからだ。お姉様悪くない。」
「さいですか。」
今の現状は最終リング一個手前。生存パーティは五組。
Gillsパーティ、英和那パーティ、天使パーティ、あとの二組はわからんが。生き残っているのだからやる奴だろう。
俺たちはキルポイントがパーティ合計3。序盤の狙撃は確殺を入れられなかったが、中盤鬱木のディーグル覚醒戦闘で3取った。悪くない。がもっと欲しくなっちゃうよね。
ログ見てどうにかこうにか数えてたが、おそらくGillsのキルポイントが9。一位を取るならこのマッチなるべく多く取って置いて、次のマッチ、最初にGillsを殺す。
あいつは戦況とか関係なしに見た敵全部殺す殺戮魔王型戦闘スタイル。生き残れば生き残るほど、無限にキルポイント稼がれる。勿論魔王にタイマンで勝てるわけも無い。やっぱ狙撃が絶対条件。俺がやるしかない。
「次のマッチも大切、でもあかいくん、今は目の前の最終戦闘だよ!!」
「あぁ、ありがとう天使さん!!なるべく、キルポイントかっさらいましょう!!!」
『おー!!』
さあ、正念場だ。全てを打ち抜け、俺!!!