表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/15

13話〜天使再生 SIGN-S!〜


 13話〜天使再生 SIGN-S!〜



「割った割った。」


「ワンノック!akaiカバー来て!」


「後ろやったやった。」


「ラスト割ってるよ!」


「天使さんそのまま詰めちゃって。」


「お姉様後ろ!!」


「抜いた抜いた!終わりだ、漁っちゃお。」


 今は初顔合わせ配信、開始から30分程度。今のマッチの試合運びは順調。俺が常に二人の間で動き、俺が先制して割った敵を他二人が詰める、そしてその詰めのカバーをスナイパーでする。基本中の基本の陣形だ。二人とも強いから、相手がこっちにリソースを割けないから狙撃しやすい。


「ないすぅ!二人とも!!」


「お姉様もナイスですよ!!」


 二人の会話をぼーっと聞いていた。天使さんは終始笑顔だ。天使さんのテンションとコメント欄のテンションの違いで天変地異ができてしまう程に歪な配信。これを本心からどうとも思っていない、1ミリたりとも心に傷が付いていないのだとしたら、それは鋼鉄の超人。でもそんな事ないって、俺から見ても分かるのだから、いつ壊れてしまうのだろう?と心配と怖さがくる。いやあるいはもう壊れてしまっているのかもしれない。天使天という少女は今、何を思って俺たちとゲームをしているのだろう。


「おいあかい!!」


 次の試合序盤、最初に降りたランドマークを漁っていると鬱木が話しかけてきた。


「なんですか?」


「お前コウお姉様が好きなのか?」


「は?」


 鬱木は眉間に皺を寄せて疑いの目を向けてくる。こいつはコウソラ推しらしいので、厄介が働いて変な解釈をしたのかも知れない。がしかし!


「なんでそうなるんだよ。」


「だって、いやらしい目でコウお姉様を見てる気がして。」


「うん、気のせいだ。」


「ならいいけど、お姉様達に何かしたら許さないわよ!」


「わかってますよ。」


「それにしても、あかいはお姉様と関わるタイプじゃ無いと思ってたけど仲良くしてるなんて以外ね。」


「そーだね。感謝してるよ、一人でやってた俺と仲良くしてくれるだなんて。俺も讃絵さん推しになりそうだ。」


「あら、見る目あるのね!」


「鬱木、何様だお前。」



 その後も俺はいつも通り。配信モードの天使さんと、天使さん大好きな鬱木の二人の会話が繰り広げられつつ、それを聞きながらプレイをする。話を振ってもらえたら答えるし、今日は俺からも頑張って話を振ってみたりもした。とても雰囲気が良く、話しやすいメンバーだと思った。天使さんも一見すごく話しやすい人だと思ったが、これが無理矢理作った笑顔だと考えると、本来の天使さんが少し気になる。

 讃絵さんに聞いた、天使さんの事。元々配信スタイルは今と変わらず、太陽の様な笑顔でみんなを楽しませる天使の様な子だという。少しツンツンしている部分もあるけど、そこがギャップで可愛いとか。親友レベルで仲良くなった相手にだけツンデレを発揮するのが視聴者にも受け、太陽天使がツンデレ天使になる相手とペアが人気だったみたいだ。コウソラとか言って讃絵さんともペアで活動していたらしい。でも今の天使さんは、表をみたら太陽。でも裏を見たら、真っ黒な灰だらけだと讃絵さんは言っていた。この灰が見え隠れするから不安になるのだろう。讃絵さんはこれが全て灰に変わるの止めたいのだ。

 そこから数時間後配信終了。


「おっつかれぇ!」


「お疲れ様。」


「お疲れ様です。」


「アーカイブ七時間だよ!やりすぎたぁ。」


「凄いやったっすね。」


「あかいスナイパーうまいね!!」


「鬱木もハンドガンうまいっすね。」


「そおー?ありがと!!」


 七時間配信した後でも鬱木のテンションは高かった。


「連携も確認できたと思うんで、この辺で終わりますか。」


「最後になんか反省点とかある?IGLあかいだしなんでも言って。」


「あー、そうっすね。天使さんなんすけど、詰める時の事で、基本的に全戦闘出し惜しまずにウルト使っていいっすよ。レイスウルト貯まるの早いんで。」


「あ、あ、うん。」


「あ、すみません急にいっぱい言っちゃって。」


「あ、え、うん、ごめんなさい…」


 その謝罪の後、少しの沈黙があり、それを切り替えると言わんばかりに鬱木が、


「さ、さてぇ!反省もしたという事で!オワリダァァア!!」


「終わりですね。」


「うん…」


「次やる時の予定はグルでチャットするという事で。」


「そっすね。お疲れ様です。」


「おつかれえ!!」


「おつかれさまです…」


 そんな気まずい空気で初顔合わせは終わった。終わった瞬間空気が抜ける様に縮まり、横にあるベッドにダイブした。


「つかれたぁぁぁ。きんちょうしたぁぁぁ。やりずれぇぇぇ。」


 と、発狂しながらベッドでくたばっていると、

 ※深夜3時である※


「あれ?通知なったぞ。なんだぁ。」


 と、スマホを確認すると。


「讃絵さんと、鬱木!?」


 急いで通話に入ると。


「お疲れ様です!!」


「あ、おつかれあかいくん。」


「ようあかい。」


 なんだろう。少しさっきより鬱木のテンションが低い?アドレナリンが切れたのか?


「今夢からさっきの配信の事聞いた。」


 どうやら配信終了直後讃絵さんと鬱木で話していたらしく、讃絵さんに鬱木が配信の事を報告していた様だ。


「夢も大変だった見たいだし、あかいくんも頑張って偉いぞ!!」


 あれ?讃絵ママ?よしよしされた気分だ。どうやら話を聞くと鬱木いつもはあんなにハキハキ喋りまくるような子じゃ無いらしい。今回は天使さんがあんな状況だから会話を回すことを意識していたらしい。


「私全然ダメだった。最後までお姉様の気は落ち込んだまま、私、なんの力にも。」


 悲しそうにそう嘆く鬱木の声が通話無いに響く。胸がキュッとなる感覚がした。

 俺だって何もできなかった。今日俺がしたのはただの会話。それも全く仲良くなる気の感じられない会話。これじゃあダメだ。俺は讃絵さんの為にも、天使さんを救わないと。


「大丈夫だよ夢。夢はよく頑張った。」


「でも、私が何を言っても、お姉様はごめんなさいとしか言わないし。私何か謝らせる様なこと言ってたかな?あかい!何かまずいこと言ったかな?私。」


 言葉を紡げば紡ぐほどに弱々しくなっていく鬱木の声。


「分からない。俺は人と会話することすらままならないから。でも鬱木が頑張って空気をよくしようとしてたのは伝わったし、天使さんだってそれがわかってるはず。だからごめんって謝ってたんだと思う。」


 鬱木は頑張って、それを天使さんはわかっていて、だからこそその頑張りを踏み躙る様な事になってしまうからごめんなさいと謝っていたのだろう。


「少し、外の空気吸いに行こうかな。」


 突然讃絵さんがそう言う。


「今日は解散しよう。もうどう考えても思い詰めちゃう一方でしょ。だから一旦解散。」


 そう言って落ち込む鬱木をフォローする為、強制解散となった。

 ベッドで寝転がりながら通話していた為、この前寝ちゃいそうになる。そういえばさっき通話が終わる前に讃絵さんが空気を吸いにいくと言っていたが、俺も真似をして夜風にでもあたりに行こうかな?そんな気分だ。



 そう言うことで部屋を出るが、廊下が長い。寮棟の廊下は色々な配信者が住んでいる為長い。この時間は配信か作業か睡眠しているであろう配信者。そんな奴しかこの学園にはいない為、基本的に黙れとも出くわさない。ロビーに着くと自動扉の横のモニターにスマホをかざして扉を開ける。

「ほんとこの寮棟、高級マンションって感じ。何度見てもデカいなぁ。」


 寮棟を出てすぐの並木を抜け、コンビニと広場を通り緑の広がる野原に来る。ここの野原は女子寮の近くだ。


「開けた野原で夜風を浴びながらまったりそこで買ったコーヒー。いい!神だ!アポロ行った時より気分いいね!」


 それは持ったけどいい気分だ。そん能書きしながら野原でゴロゴロしていると奥に人がいることに気づいた。


「ん?あれは?」


 いたのは二人の女性。一人はホワイトベージュに金色のインナーカラーの髪色の女性。その横にいる少し小柄で幼い印象の女性。金髪ロングで毛先が翡翠色のグラデーションが入っている。その二人はベンチで横に並ぶ様に座り話している。真剣な顔をしている様子だ。


「間違いなく讃絵さんだ。讃絵さんってやっぱ配信者の癖にアクティブだよなぁ。」


 さっき通話したばかりだと言うのにもう外にいる。と言う事は、横にいるのは、うん、髪色的に天使さんだな。

 少し身を隠しながら近寄り会話を盗み聞く。


「ねえ、今日のコラボどうだったの?」


「楽しかったよ…」


「そー!よかった。夢とは話せた?」


「そ、そんなに…」


「そっか、あかいくんどうだった?男の人怖いって言ってたからあれ以来初めての男でしょう。」


「……」


「まだ怖かったか。あんまり話したく無い?」


「ごめんなさい…」


「大丈夫、次の配信も大事そう?」


「……」


「わかんない?」


「ごめんなさい…」


「謝らなくていいって、ごめん無理させた。」


「ご、ごめん、な、さい……」


 気づいたら、隠れていた所から出来言って二人の前に出ていた。

 ごめん、讃絵さん。俺、デリカシー無いし、あんまり人の事分かんないから失敗するかも知れないけど、思った時には止まらなくなっちゃったから。心の中で謝っとくわ。

 俺が前に出ると讃絵さんはすごく驚いた顔をしていた。天使さんも驚いていたが、すぐに恐怖の顔に変わった。男は怖いんだっけな。まあ、ごめん、知らん。


「ごめんなさい。今の話聞いてたっすわ。でも言いたいことできたから、出てきちゃった。」


「だ、ダメだよあかいくん!天は男の人!!」


「おい、天使天。いつまでその態度なんだよ。」


 讃絵さんの言葉を押し切り、俺は天使さんの目の前に行き話しかける。怯えている、俺をみて怯えている。俺も、人に怯えることがあった、親であってもビクビクしてた、一人が良かった、そんな時があったから分かるんだ、その感じ。だからこそ、人に何かを変えられることがどれだけ大きいか俺は知ってる。でも俺と違ってこの人は、トラウマのせいで俺と違い一歩を自分で踏み出せない。だから俺が無理にでも手を引っ張ってやる。


「いつまでもいつまでも、みんなが向ける優しさを踏み躙って、ごめんごめんって逃げ続けて。それでなんになるんだよ。」


「え?ちょ!」


 讃絵さんがまずいよそれは!って顔してる。でも俺は止まらなかった。イライラした。昔の嫌いな自分を見ているのようだったから。この人は俺とは違うのに、昔の俺みたいになってしまっている。勿体無い、かわいそう、イライラする。そこにいるべきは君じゃ無い。


「みんながあんたを救おうとしてる。元に戻って欲しいって必死で、辛い思いをして!」


 俺の頭には讃絵さんの涙が浮かんだ。


「それなのにあんたはいつまでも謝ってばかりだ、変わりたく無いのかよ!戻りたくないのかよ!こんなに手を伸ばしてくれる仲間がいるのに、何をやってるんだよ。」


 そう言い放つと、天使さんはもう枯れているであろう涙を搾り出す様に流しながら、必死に声を出す。その表情は、その感情は、初めて見る、最禍の天使の劇場だった。


「無理だよ、手遅れだよ、私はもう戻れないんだ、わかってるよ、みんなが、コウが私のためにしてくれてるのは、それでも無理なんだよ、もつ私は…」


 言葉は最後まで紡がれなかった。ぐしょぐしょに泣きつぶれて、うずくまり震えてしまった。

 そんな天使さんに讃絵さんが駆け寄る。


「じゃあ、辞めればいいだろ。讃絵さんの優しさを無理だって言えるなら、配信者なんて辞めればいい。手っ取り早いだろ、ネットから逃げてしまえは多少はマシだ。」


「わかってるよ…」


「わかってねぇよ!ならなんでスト学来たんだよ。こんないつ終わるか分かんないとこになんで来た。残ってそのまま辞めれば良かっただろ。」


 讃絵さんが涙目でこっちを向いて、


「違う、ソラは私が元に戻って欲しいって言ってるのを断れなくて!」


「それもあったかもしれない、でも違う。思ったんだろう、スト学なら何か変わるかもしれないって。でも何か変える勇気は湧かない。それで讃絵さん達の助けもスルーし続けて、中途半端でここにいるんだ。」


 変えないと、でも変える勇気がない。人からの善意も苦しくて、そうやって中途半端に毎日なんの生産性もないカスみたいな生活を送る。昔の俺と一緒だ。


「お前は諦めたく無かったんだろ、配信を。自分で何もできない、人の力も借りられない。それで理想だけ叶えたいなんて、馬鹿な事言ってんじゃねえよ。」


「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!」


 歯を食い縛り、涙をボロボロ流し、こっちを睨む天使さん。


「分からないでしょ。知らない人に襲われる恐怖も、私の全てを奪われる感覚も、それを全世界に広められる絶望も、毎日夢に出るトラウマも、分からない癖に言うな。私はもう、戻れないんだよ。」



 〜天使天視点〜


 あの日は大雨の日だった。お昼に起きてすぐにパソコンをつけて、ゲームの練習をしていた。そんな時突然だった。背後から大きな男の人が私に掴み掛かってきた。硬いく痛いほど強く手を握り、私をベッドへ押し倒す。少し太った不潔な印象の男はそのまま私の服を破り、体中を舐め触り回した。叫ぼうとしするとキスで口を塞がれる、臭い口臭とねっとりとした唾液に思わず吐きそうになる。舌や歯をこじ開ける様に舌を押し入れられ、さらに気持ち悪さが広がる。そのまますぐにパンツを破られ、私の性器に男の性器がぬじ入れられる。ぶちぶちと引きちぎられ、じわっと痛みが広がる、私が痛いのなんてお構いなしに激しく動き、またキスをきて、体を触られ舐められ、それを繰り返される。恐怖と痛みのあまり気絶をするも、顔やお腹を殴られ意識を戻される。どんなに願っても誰も助けにこない。何時間もそれを繰り返し、涙も震えも声も、何もかもが出なくなり、そのまま意識を失う。目が覚めると、私はベッドに倒れ込んでいた。汚く散らかった部屋。何かわからない汁が沢山散らばっていた。雨音以外の物音はせず静かな部屋、不自然に綺麗にされている箇所のあるベッドや家具を見て、この部屋にはもうあの男はいないのだとわかった。犯すだけ犯して男は私の家を去ったのだ。

 そこからは思い出す恐怖と体の痛みで何もできなかったが、戸締りだけ確認しようと必死に玄関に行く。玄関につくなりすぐに目に入ったドアの張り紙。そこには「また来る」と書いてあった。その文字を見た瞬間嘔吐する。自分で吐いた物を見つめながら涙を流した。

 その後すぐにコウを読んだ。もう一度あの男が来たら、もしかしたらまだ家の中にいたら、そんな事考えられなかった。誰かの助けが無いと私は動けなかった。ドアを開けうちに入った瞬間コウはすぐに異変に気づいた。どうやら動物園の様な匂いと熱気で苦しかったと言う。すぐに警察を呼んでもらい私は引き取られた。そこからベッドについた時と玄関に行くたびに思い出す、あの恐怖が。恐怖のあまり顔は覚えていない。なのになんて都合が悪いのか、行為の映像も恐怖も鮮明に覚えている。警察の方に何度聞かれても、私は恐怖で何も話せなかった。

 少し落ち着いて思い出す。配信を何も言わずに休んでしまった事を。ファンのみんなは心配している、そう思い謝罪を呟こうとしてSNSをみると、私のアカウントに大量の誹謗中傷を始めとしたDMが来ていた。その原因はあの男がSNSに上げた一つの音声ファイル。そこには泣き叫ぶ私の声、それを何度も殴り黙らせる打撃の音、段々と声も出せなくなる私の反応。幸いビデオでは無かった為私の顔や体は見られていないが、それでも突如アップされた私の犯されてる音声は、ネットで前代未聞の大炎上をしていた。

 それを見た瞬間何かが切れる様な音が私の中でした。膝から崩れ落ち、涙を流し、私は思った。


「死にたい…」って



 〜akai視点〜


「確かにわからない。苦しみは同じじゃないから、だからわからない。けど、あんたはまだ死んでない。」


 

 〜あの夜の会議の後〜


「なあ、まだ少し聞きたいことがある。少し付き合ってくれ、英和那さん。」


 帰ろうとする女を引き止める。


「はいはい、なんですの?」


 呆れは通り越して、もう諦めてる様な素振りで、腰に手をやり振り返る。


「炎上についてだけど、叩いてる奴が何故それをやっているのかが知りたい。叩く理由、それと割合。」


 少し考える、と言った素振りで思考し始める英和那さん。


「そうですわね。おそらく、叩いている視聴者は全体の35%と言った所。あのコメント欄を見ると少なく感じるかもですけど、実際はそんなもんですわ。後の50%はおそらくどうとも思っていない、びっくりはしているが叩きはしない、などあまりアクションを起こさない層ですわね。」


「なるほど、35%の詳細は?」


「そう、ですわね。本当に頭のどうかしたアンチが5%、元ガチ恋勢などの裏切られたショックのある物が10%、そして残りの20%がノリと雰囲気、叩く流れや風潮に乗っかっている、対して天使天に興味もない様なゴミクズどもですわね。」


「元ガチ恋勢みたいな好きだったからこそ裏切られたと思っている奴より、ノリで誹謗中傷してる奴の方が多いのか!?」


「ええ、厳密にはもっと多い、22.4%とかですわね。」


「そんな、なんでそんな奴らが?」


「あかいくん、貴方はネットに疎い、だからわからないでしょうけど、案外、ノリや雰囲気で有る事無い事言うものが大半をしてる。良くも悪くも書き込みやすい世の中、それが今のネット、今の情勢ですわ。」


「まじかよ。」


「ええ、本当に、腐った世の中ですわね。」


 そう言った英和那さんの表情は何か違和感のある、初めて見る表情だった。

 所でまだ一つ判明していないことがある。


「なあ、残りの15%はなんなんだ?叩く奴が35%どうでもいい奴が50%最後の15%は?」


「まだ、推し続けている者たちですわ。」


「え、そ、そんないるの?」


「ええ、案外その程度は一定層固定視聴者がいる者ですわ。普通はもっといる物なんですのよ。天使天のファン層がガチ恋勢が多いのが逆効果でアンチを増やしているんですわ。」


 以外だった。


「なんだよ、そんだけいんじゃん。」


 少し口角が上がる。拳を少し強く握る。希望がミリでも見えた。


「ありがとう!ナイス情報。」


「はあ、推測ですのよ。一個の情報を信じるのは危険でわ。」


「でも、最強ストリーマーの経験則だろ?ならそこら辺の情報一つよりは信頼できる。」



 〜現在〜


「調べた、あんたの視聴者、叩いている奴は35%、無関心無干渉が50%、んで、残りの15%が、」


 言ってやるんだ、この事実を、まだあんたの羽は完全にもがれてない。綺麗に羽ばたく為に、それを見守る奴らがまだいるんだって。


「まだお前を推して、好いて、見ている奴らだ。まだ15%もいるんだ。」


 そう言ってスマホを突き出す。見せたのは、色々な人達の呟き。俺が集めた、まだ天使天を見ている奴らの声だ。


「また元気に活動してほしい」

「うちのそらちゃんをやった奴まじ許せん」

「本当にかわいそういつまでも俺は味方だ」

「スト学初カスタム良かったその調子で元気も戻していこ」

「辛い時元気をもらいました。この投稿読んでほしい、次は俺らが励ます番」

「今の天ちゃん見てると辛い元気出して」

「ブイカノのみんなも俺たちもまだ応援してる」

「今は無理して配信しなくていいよ」

「まだ犯人捕まってないの怖すぎる俺が守って上げたい」


「讃絵さんを裏切っちゃいけない、それもそうだ、てもそれ以上に、こいつらを、まだあんたを見てくれているファンの人たちを裏切る事は一番しちゃいけないんじゃないのか?」


 天使さんの恐怖の涙、他の涙で洗い流される。

 その夜、漆黒の(そら)に天使の泣き叫ぶ様な声が響く。うずくまり、泣き叫び、そして、感謝していた。逃げるためのごめんではなく、手を差し伸べる俺や讃絵さん、視聴者の人達への、謝罪ではなく感謝を。



 〜三十分後〜


「ごめん、ありがとう。」


 天使さんが讃絵さんに謝罪と感謝をする。深く頭を下げて。そんな天使さんを讃絵さんは優しく抱きしめる。


「いいの、天は辛かった。私は踏み躙られたなんて思ってない。いいよゆっくりで、さっきの投稿にもあった。ゆっくりやってこうよ。」


 そんな優しい言葉に少し詰まる表情をする天使さん。


「それ、ごめん。無理だ。私配信したい。」


「大丈夫なの?」


「うん、大丈夫。それに当分はカスタムだし、だから私だけじゃない。夢もakaiさんもいる。」


「天。」


「迷惑かけたくない。もしかしたら関わった人が私みたいになっちゃうかもしれない。そう思うと怖いけど、でもやっぱ、一人も怖いや。」


 その顔は、少し吹っ切れた様で安心した様な表情だった。


「あぁ、それに関しては俺が協力する。俺は男だから被害に遭う可能性も低いだろうし。もうあんな事は起こさせない。」


「まもってくれるんですか?akaiさん。」


「っ…大きくはいえないけど、善処します。」


 その答えに天使さんはクスクスと笑い。


「もう、そこは大きく言ってよ。格好つかないなぁ。」


「もう、やられたぁ!最初に笑わせるのは私たと思ってたのに!!あかいの癖に!!」


「ちょなんすかそれ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ