1話〜初顔合わせ〜
1話〜初顔合わせ〜
俺の名前は夏崎 茜、高校3年生だ。中学生の頃やっていたFPSゲーム、そのプロゲーマーの人に憧れて中学2年の冬から、ゲーム配信者の「akai」として配信を始めた。最初は配信環境も整わず、クリスマスプレゼントで親に買ってもらった安いパソコンと百均のキーボードとマウス、マイクに至ってはスマホについてきたマイク付きイヤホンを使っていた。それでも、自慢のエイム力を武器に孤独に活動を続けた。その成果が出たのか半年前、有名ストリーマーが大勢集まるゲームのカスタム大会に招待された。
今日はカスマムの初顔合わせ、緊張で少し気分が悪い。なんせ今回のチームのメンバーがやばすぎる!!
1人目は、憧れのプロチームメンバーで、最も古株のベテランの「rigる」さん。(男)
2人目は、最近ノリに乗ってる箱のVtuberの「讃英コウ」さんだ。(女)
そんな錚々たるメンバーに囲まれているのが俺。個人勢のakaiだ。
正直言って実力なら、今回のメンバーの中なら一位だと自負している。こんな無名の俺がこのカスタムに呼ばれたのも、この実力が、あってこそだ。だが、俺はすごく緊張しているのだ、いつものプレイが出来るか分からない。
「もうすぐ7時か、配信の集合時間だ。」
あらかじめ招待されている今回のメンバーのみの通話サーバーに入り、通話ボタンを押す。ピロンという音と同時に、2人の声が聞こえてくる。
「今日はすでに配信で温めてありますよ。」
「俺ももう温まってるかな。」
「じゃあ今日はキャリーお願いしますね。なんて、って、あれ?」
「あ、akaiくん入ってきてるじゃん。」
俺が通話に入って来たのに気づき、2人は俺に会話を振ってくる。
「は、初めまして。akaiです。今日は今日明日はよろしくお願いします。」
やべぇ、緊張する。ちゃんと挨拶できたかな?
「どーもakaiくん。俺はプロゲーミングチーム「セルリアン」の選手のrigるっていいます。今日はよろしく。」
「あ、よろしくお願いします。」
「私はVtuberグループ「ぶいカノ」所属の讃絵 コウです。よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。」
やべぇ、そもそもVtuber以前に女の子と喋るのが緊張なんだけど。年末にじーちゃん家帰った時にいる親戚のギャルにも緊張するくらいだし。女性Vとの会話は気をつけないと、すぐ燃えるって言うしなぁ。
「akaiくんって俺たちのこと知ってる?俺は君のこと知ってたんだけど。コウちゃんは知らないって言ってたから。」
「も、もちろん知ってますよ。お二人ともすごく有名じゃないですか。」
「おー、それはよかった。」
「よかった。私配信活動的にFPSの人とあんまり関わらないから。」
「ぶいカノさんの箱はみんな見てるっスよ。」
「あ、嬉しいです。ちなみに誰推しですか。」
うわぁ、どーしよ。ぶっちゃけ全員好きだし、割と満遍なく観てるんだよなぁ。」
「えっと、全員好きっスけど、そこは勿論讃絵さんっスよ。」
「ほんとにぃ。」
少し揶揄うようなコウちゃんの声は配信でよく聞くものと全く同じで、少しドキッとした。うわっ!本物だ。
「コウちゃんそれ言わせてない?」
「え、そーですか。」
「それにしても俺のことも知ってるんだ。」
「はい!セルリアンはめっちゃ憧れで、この間のサンタカップも見てたっス。」
「あー、あれかぁ。サンタカップあんまり活躍できずにダウンしたから恥ずかしいな。」
「いやいや、あそこでrigるさんがボルトアクションを残したから勝てたんすよ。」
「うわお、しっかり見てるやん。」
やばい、少しオタクっぽかったかな。
「じゃ、そろそろ配信つけるか。」
「はい。」
「それじゃ、私は冒頭で挨拶と視聴者さんと少し雑談するのでミュートにしますね。」
「あ、じゃあ俺も大会告知とかするし最初ミュートするわ。akaiくんどーする。」
「あ、自分は特に無いので、えっと、射訓でアップしときます。」※射撃訓練場の略※
ひたすらにbotを撃ちながら思考する。やっぱり2人とも凄いな。俺は淡々とゲームやる感じだし。たまにコメント読むしスパチャはお礼言うけど、あんまり視聴者との絡みないな。
〜讃絵コウ視点〜
「はーい、讃えよぉー彼氏のみんなぁ。讃絵コウでーす。」
高速で流れるコメントを目で追いかける。普通の人間では追いかける速度では無いが、活動2年目にもなるとなんとなくコメントを読んで拾うことが出来る。
今日もコメ多いな。同接は始まったばかりで2000人に近い。大型大会だし、メンバーもrigるさんがかなり有名だからそれで集まってる。いい調子。
私はFPS系のVtuberではなく、アイドル志向の売り方の事務所のVtuber。それでもそこそこの腕前があるお陰で大会にも呼ばれる。可愛くて実力もある活動スタイル。あとは結果だ。優勝したり、かなり上手いプレイをしてのクリップでも残せれば伸びるはず。
するとあるコメントが目に入る。
「今日のメンバーとの関わりは?」
「今日のメンバーはね、rigるさんとakaiさんだよ。」
「rigるニキと関わりあるんだ。」
「rigるさんとコウちゃんの会話とか絶対クレイジーw」
などのコメントが付いている。やっぱりrigるさんの人気が凄いな。
「今日のカスタムはね、リーダーが他2人を招待するの。だから私は今回rigるさんに招待されてカスタムに出るって訳。」
「akaiってだれ?」
「なんでrigるニキはakaiとか言う登録者200人程度の奴を呼んでんのw」
「rigる34万、コウちゃん48万、akai223人マジかw」
と、少し過激なコメントも混ざっている。正直akaiさんの事は全然知らないし、私もなんでrigるさんは招待したんだろうと思った。話が上手い?プレイが上手い?IGL担当かな?でもIGLならrigるさんだよな。
「私もakaiさん初対面なんだよね。あ、スパチャありがとぉー。」
〜rigる視点〜
「月末にはマツモト杯があるからそれも見てくれよ。」
「絶対見ますねぇ。」
「これは酒も準備して応援だな。」
そんねコメントが流れている。それにしてもコメントを見てもみんなakaiくんのことはしらんなぁ。俺がなぜakaiくんを招待したのか、それは単純な実力。このゲームにおいてスナイパーが上手い奴はそういない。うちのチームには日本トップのスナイパーがいるが、プロはリーダー枠。チームに2人はルール上無理だ。そんな時、非プロでスナイパーが上手い奴、そして俺のIGLを上手くこなせる奴が欲しかった。そこで見つけたのがakaiだ。配信者として伸びてはいないが、実力はスナイパーだけならうちのチームのベンチメンバークラスだ。今日は勝ちに行くぜ。
〜akai視点〜
「あ、2人ともミュート解除された。」
俺も解除していいのかな?少し2人の配信を除いてみるか。コウちゃんの配信を開いてみると、コメント欄に目が行った。多い訳では無いが、それでも少しあるコメント。
「akai誰だよ。」
「有名なの?強いの?」
「1人だけ無名w」
「akaiってどっかのV?」
「登録者200ま?」
俺のことを知らない奴らが適当言ってるコメントがあるな。まあ、今回の配信のお陰でいつもより200人くらい同接がいいし、登録者も50人も、増えてる。それならまあ、気にしないほうがいいのか?いや、でも、
「ま、ぐちぐち考えるよりプレイで魅せるか。」
その方が俺の性に合ってる。
その後、少しの雑談とカジュアルマッチをプレイして。
「そんじゃ、また明日。」
「明日は勝ちましょう。」
「はい、明日もよろしくお願いします。」
そうして、俺のドキドキの顔合わせ配信は終わった。わずか1時間半の配信だが、めちゃくちゃ神経擦り減らしたなぁ。
「もう寝るか、いや明日の為にもう少し練習しよ。」
ぼちぼち投稿していきます。