1.今日の出会いと運命と
ホームルームが終わった。
靴箱へ行くと沢山の先輩方が部活の勧誘を行っていた。はっきり言って俺は部活には入るつもりがない。部活にいい思い出が一つも無いのだ。
俺が身を潜めて素早く人混みを駆け抜け、人気が少なくなったその時だった。
「君、南条 真哉くん......であってる?」
力強くどこか優しい声の主の方に目を向けると、全く身に覚えのない女が立っていた。
それより今、名前を呼ばれた気がするのだが彼女は一体何者なのだろうか。
俺は思わず
「誰ですか?」とよそよそしく聞いた。
「質問を質問で返さないでくれ。君が南条 真哉くんで間違いないかと聞いたんだ。聞こえなかったのか?」
ついさっき同じような事を誰かに言った気がする。他の人が発しているのを聞くと恐ろしく態度が悪いという事に気がついた。これからは言動に気をつけるとしよう。
「あってます」
無愛想に俺はそう答える。
「そうか......南条 真哉くん。突然だけど君は今日、死んでしまう」
この女は何を言っているのだ?
後輩相手に詐欺でもふっかけているのだろうか。いくらなんでも高一をバカにしすぎている。
「用がないなら僕は先に.....」
ズドーン!!
「!?」
俺の話を遮るようにデカい音が鳴り響いた。
思わず耳を塞いでしまうほどの恐ろしく耳障りな音だ。
「......見に行ってみようか」
彼女はそういうと不安げな顔ひとつ見せず歩き始めた。
「君も一緒に見に行くんだよ」
彼女は振り返りそう言うとまた歩き始めた。
音の主は校門だった。
俺が今日胸を高鳴らせながらくぐった校門には大型トラックが突っ込んでおり、それはそれはひどい有様になっていた。まだ写真も撮っていないというのに勘弁して欲しいものだ。
そんな光景を目の当たりにし、俺は呆気に取られてしまった。そんな俺とは違い彼女は冷静でいる。どこかしら安心しているようにも見えるのは気のせいだろうか。
どちらにせよ気味が悪い。
まるで全て知っていたかのようだ。
占い師か何かなのだろうか。
「ね?言ったでしょ?危うく君は死ぬところだったんだよ?」
「......ありがとうございました」
腑に落ちない。そんな感情を練り込んだ感謝の言葉だった。
「命の貸しはデカいぞ〜?」
ウザい。とてつもなくウザい。命の恩人だとしてもウザいものはウザいのだと言うのが分かった。
「いくら欲しいんですか?」
「お金なんていらないよ。私の部活に入って欲しいんだ。救世部にね」
「え?」
ここ最近で1番気持ちの悪い声をあげてしまった。