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右手を見れば。

 なんやかんやあってベルの店の二階、空き部屋を与えられたボク。

 窓を開け埃っぽい掛け布団をバサバサさせ、埃を抜いて寝る事に。


(スリープモードで休憩するカラビアは出て行って欲しいなぁ・・・)

 彫像のように直立不動でベットを見下ろす位置で動かなくなったカラビア、『休憩中のいたずらはお触りまでです。』とか言って目をつぶってしまった。


(担いで外に放り出してやろうか・・!!)少し掴んで見て後悔する、固まって動かないカラビアは石像のように重く堅く、子供の腕力で動かせる感じが全くしなかったのである。


「シンイチはさすがです、まさか主従契約した当日に悪魔をベットに連れ込もうとは、カラビアビックリ、人気ラノベの主人公です」

 

「なにを言ってるんだよ!」

 ラノベ?はそうなの?契約したら一緒に寝るの?あと無表情で見下ろすのは止めて、恐いから。


「・・・」

「後に向かそうと思ったんだよ!なんか見られてる感じがして眠れないから」


「なるほど、シンイチはお尻派、納得した」

 大人しく背中を向けてくれたのは嬉しいですが、なにか誤解が・・・


「はぁ、まあいいか」今ぼくは凄く眠いんだ。


 下ではベル達が・・・ななせさんとボクのiPhonが働く音が聞こえる。


[異世界喫茶、ネギ泥棒]昼間は喫茶店・夜は居酒屋になるその厨房で腕を振るうip850、『問題無い、料理はクックパッドで学習済みだ』とか。

 未来のAIは料理人の仕事も奪うのか、すごいねiPhon。


・・・・・・


 眠い、本当に眠い。

 怪しい大人に呼び出され、家を踏み潰され、オヤジ達は行方不明。

 臓器を担保に賃金を払えとか言ってくる悪魔、スゴク頼りにはなるけど、契約期間が切れたらどうなるか解らない人型スマホ・・・5歳のオレにどうしろって言うんだ。


「それにしても暗い、どこだここは」


 ベットで寝ていた筈なのに気が付けば真っ暗な路地に一人、電柱に付いた丸い監視カメラとLEDの明かり、知ってるようで知らない道だった。


(家の近所にこんな所あった?)

 ひょっとしたら夢遊病?それとも明晰夢ってやつ?


 今日起こった事がストレスで、寝ている間に部屋から抜け出した・・・とか。


(足裏がべちゃべちゃ・・・やっぱり夢遊病か。

 はぁ・・帰り道・・・帰り道くらい憶えてる・・・)本当にどこ?ここ?

 裸足である事に気付き、帰り道すら憶えていない事に絶望。

 

(親が家出して、へんなメンインブッラクに呼出されて、帰ったら家が無くなって。今度はベットで寝たと思ったら迷子とか・・不幸だ)


 真夜中で子供1人、寝間着で裸足で帰る家すら憶えてないとか、、、本当に不幸。

(まさか、この右手が幻想殺しに???)模様の付いた右手でその辺を触ってみた。


『しかしなにも起こらなかった!』


「不幸と言うより馬鹿だな、何をやってるんだよオレ」


「そうでもないぞ、マスターーーー」

暗闇から響く声は老人のようであり、喉を焼かれた男の声にも聞こえる。


(この声は・・カラビアの声じゃないな、誰だ・・・またオヤジ達のいたずらか?)


 ギィィキィィーーーーー

 釘で堅い石を引っ掻いたような音が暗闇に響き、コツ・コツ・と不気味な足音が近づいて。。。


「誰だ、なんでマスターとか」

 この不快な気配は敵意じゃない[悪意]、存在するだけで背筋に寒気がするほどの[悪意]が歩いて近づいてくる。


 恐怖・畏怖・憎悪・怒り・不快・怯え・監視・観察・人間の視線は多くの事を教えてくれる。

 身を守る時に需要なのは、その剥き出しの感情を正確に受け取り相手の思考を理解する事。

(この視線と気配・・・絶対に味方が出して良い物じゃないな)


「おやおや、そんなに怯えないで下さい、マスタァー・・

ああ・・マスターーマ~ス~タァァァ~~~」


 ギキィィィーーーー!!!

 暗闇で光る4つの光り、古いLEDに反射した金属の光り。


(ナイフ?・・・)


 点滅するLEDの光りに浮かび上がる人影、帽子をかぶった細い男の手に鋭い4本の鉄の爪。

 汚れた緑のボーダーシャツと茶色のズボン。


(この男をボクは知っている、コイツは・・・)


「その顔は私の事を知ってるのですか・・・ああお可愛そうに、コレでアナタを殺さ無ければならなくなりました」


「何が可哀想だよ、口元が笑ってるぞ」

 コイツは自分を知っている人間を殺す怪人、悪夢の殺人鬼。


「フレディ」

 なんて日だ、悪魔にサイボーグ、巨人の次ぎは殺人鬼?どうしたいんだよボクの人生。


 宇宙人も未来人も超能力者もいらない、普通のヒトだけ会いに来て下さい!

 ボクは普通のヒトにしか興味はありません!!!


「ひっひひひっ、良い世の中になったものです。

 都市伝説も幻想も、たとえ悪夢であっても。

 人の口に上り記憶に残ればサーバントとして座が用意される。

 あとは喚んでいただくだけで、思う存分殺しが出来るとは、聖杯様様ですよ マ~ス~タ~」


 焼かれた顔を帽子の影でし、右手の爪を光らせる殺人鬼。

「ただの怪物が英雄戦争とか、あり得ないだろ!」


「夢魔にして悪夢の殺戮者、[アサシン]フレディ。

 一応は確認しておきますよ少年、キミが私のマスターで?」


「違うわバカ!」・・・違うよな?


・・・・・・ハッ??!!


 痛っ!って何だ!夢か、、、

 飛び起きたら頭が痛い、なにか物凄く堅い物に頭をぶつけた様な痛みで頭蓋骨が痛い。

「・・・なぁ、へんな事してないよな」

 なぜか額に×の形で絆創膏を貼っているカラビア、スリープ状態で休んでいたんだろ?・・・・


「疑いの視線を感じます、悪魔を疑う事はお勧めしません少年。

 信じなさい、私は少年の寝顔を観察しない悪魔」

 目を瞑ったまま直立するカラビア、確かにオレが寝る前と同じ場所で動いていない気がする。


(後を向かせたよな?・・・)

「・・・そうですか・・うん、そうだよな。

 もし、うなされていた頼りない契約者を心配して様子を覗っていた優しい悪魔なら、今後も見守って貰おうかと思ってた」とか嘘を付いてみた。


「私は優しい悪魔、シンイチの寝顔を見ていました、こんごともよろしく」

 ベットに覆い被さるよう顔を近づけるカラビア!起きてんじゃんか!


「あの悪夢はお前のせいかよ!出ていけ!」

「ハッ!人間の巧妙な誘導尋問で悪魔を欺すとは!


 流石は私の契約者です、見直しました。と言う事で私は再度スリープに入ります。

 邪魔しないで下さい、エッチないたずらはお触りまででお願いします」


 起立して固まるカラビア、こっコイツ!

 

ボクが担いで外に放り出せば、コイツの言うエッチな悪戯になるような言い方しやがって!!

どうせあとで『エッチないたずらされました!』とか言ってくるつもりだろ。

 

「くそっ」

 世間は女尊男卑、法律は男に厳しいんだ。

 ぼくは子供だけどそれくらいは知ってるんだぞ。

 セクハラ小僧と後ろ指を指されて、男性が生きるには世間の風は厳しすぎるってことも。


「はぁ・・」

『諦めこそが人生だ』そう誰かが言ったような気がする。

 コイツの事はあきらめるとして・・・ボクも寝直しても丈夫なの?


 また変な夢・・・フレディが出て来たりして追い回されたりしない?


「本当にコレ、令呪じゃないよね」ジッと手を見るオレ。

 猶[なほ]わが生活[くらし]楽にならざりと、啄木 一握りの砂。



ヒトの手はシンボルになりやすい、そんなお話し。

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