やっぱり冬は寒い!「いや、モコモコでしょ」はぁっ?
この作品は武 頼庵(藤谷 K介)様ご主催の「冬は○○○!!」企画の参加作品です。
私は夏川亜紀。20歳の大学生です。
私には4つ上のお姉さんがいます。
名前は夏川有紀。
ちなみにお母さんは春子。
四季が揃っちゃったよ。あはは
え?お父さん?
和夫...
すみません親父はご期待に応えられませんでした。雑に扱っても良いでしょう。
まぁ名前の事はどうでもいいんですけどね。
そこ「どうでもいいんかい!」と突っ込むところですよ!
このお姉さん、いやお姉様、とてもすごいんです。
なんと、この若さでお店を経営しています。
近くの商店街とかではないですよ。六本の木が生えているところで、裏ではない山道みたいな所でお店を出しています。マジすげー!
ある日、お姉様にお店を手伝ってと言われました。
「冬だから手伝って!」
「は?」
手伝うのは別にいいんだけど、「冬だから」っていうのは何だろう?。
ーーーーーー
「さ、寒い」
冬は寒い!当たり前だ。子供でも知っている。
今?
今ね歩いてます。お店に向かってます。
もちろんお姉ちゃんと一緒に。
でもね。
お姉ちゃんがおかしいのよね。
え、頭じゃ無くて...
服装が。
えっと...何だろ。
雪だるま?
中に何枚着てるんだろう?ってくらいブクブク?パンパン?違うな...
あ、そうそうモコモコって感じ。
結構余裕あるサイズのダウンジャケットがモコモコ。
ボトムもモコモコ。中にいっぱい履いてるんだろうなぁ。
何でスキニーデニムなのかなぁ?
もっとダボッとしたのにすればいいのに。謎だ。
しかも上下とも白。
だからぱっと見たら雪だるまに見えたのよ。
更に。
マフラーをぐるぐる巻いてる。
そんな長いのどこで買ったんだろう?
お姉ちゃんスレンダーなのに、倍くらいになってる。
モコモコしたお姉ちゃんがポテポテと歩いてるって感じ。
いや、知ってましたよ。お姉ちゃんが寒がりってことは。
でも物には限度ってのがあるでしょうが!
ほらぁ〜すれ違う人がギョッとしてるでしょ!
恥ずかしくないのかな?
私?
私は普通よ。
私もダウンジャケットだけどモコモコしてない。
「ふわぁ」
これモール?高級なショッピングモールって感じ。
高級感ビシビシで思わず変な声が出てしまいました。
モコモコしたお姉ちゃんに気を取られて、一等地にお店があることを忘れてました。
ありゃ、何のお店かも聞いてない。
だって仕方ないじゃない、大学に入ってから一人暮らしだったんだから。
で、休みに実家に帰っていたときに、お姉ちゃんに拉致られてこのザマというわけです。
「夏川さんおはようございます」
「有紀ちゃんおはよー」
おおお、お姉ちゃん結構人気者じゃん。
なぜかモコモコした格好には誰も何も言わない。いつもの事なんだろう。
モコモコしたお姉ちゃん...ああ面倒くさいからモコモコでいいや...と一緒にショッピングモールの中を歩いてると、次々に挨拶してくる。
私も「おはようございます」とペコリと挨拶しました。
「ええええっこんなトコにモコモコのお店があるの!」
もうね、周りブランドのお店ばっかり。
ブランドのブティックや宝石店、化粧品店。たっかそうなランジェリーショップとか。
セレブだ。ガチセレブ。
で、何でこんなトコでファンシーショップなんてやってるんだ?モコモコ。謎だ。
いやね、今更なんだけど「お姉ちゃんのお店って何やってんの?」って聞いたのよ。
そしたら「ファンシーショップよ」だって。
まぁ別にいいんだけどね。私が口出す事でもないし。
ちなみにさっき思わず「モコモコ」って叫んじゃったけどスルーされた。慣れてるのね。きっと。
「でっか」
クリスマスだからツリーがあるのはおかしくないんだけど、モコモコのお店にあるのは高さが3メートルくらいある。
限度ってもんがあるでしょうが!それも売り物。買う人居るの?こんなでっかいの。
でも、確かにファンシーショップらしいものもある。可愛らしい文具とか。来るのか?こんなセレブなトコに中高生が?
パワーストーンとかもある。占い師さんが使う水晶玉もある。スイカぐらいの大きさがあるけど...
でもこれはおかしい。
「......カップラーメン......」
ないわー
これはない。
思わず「ドラッグストアか!」と叫びそうになってしまった。
だって、トイレットペーパーとか歯磨き粉もあるのよ。何なんだこの店?
「ドライヤーとかもあるわよ」だって。
あっそ。もう驚かんぞ!いちいち気にしてたら心臓がもたんわ。
「でさ、私は何をすればいいの?」
「店員」
「は?」
「お客さんの相手する人」
知ってるわ!
てか、何でこんなセレブセレブした所にある店で店員???
まぁ、コンビニとかカフェでバイトした事はあるから、接客の経験はあるけど...
それに、こんな謎な店で...何の罰ゲームなんだ!
あくまで「手伝い」だからお給料はでない。
バイトではないんだから。
くっそぅちゃんと聞いとけば良かった。
てっきり雑用とかと思ってた。や〜ら〜れ〜た〜
でも、制服とかあるの?え、ある。さいですか。
もぅえーわ。好きにして。
「..................」
......パーカー......オレンジ色で店のロゴが入っている......
あはは...うん、深く考えるのはやめよう。
ー開店5分前ー
店の前に立ってお客様をお出迎え。
他の店の店員さんは、かっこいいスーツみたいな制服を着てる。
私達は。
パーカー...
それもオレンジ色...
まぁそれはいいんだけどさ、何でモコモコはモコモコのままなの?
店内暖房してんのにさ。どんなけ寒がりなの?てかマフラーはとりなさいよ!
で。モコモコの上からパーカーって?
特注よね?5Lとかそんなサイズじゃないよね?
お客様が入ってきて「いらっしゃいませ」店に、じゃないよ。通過しているお客様。
ほらぁ〜ビクってするお客様が居るじゃん!はぁぁもう帰っていいかな...
こんなセレブなトコでも結構お客様が来るのね。ウチにはまだだけど。
モコモコ?うんチョロチョロ、いやポテポテしてる。何してんだ?アイツ。
「っらしやい!!」
うおっ!ビックリした。言ったのは私じゃないよ。居酒屋じゃないんだからさぁ。
もちろんモコモコ。いきなりデカい声出さないでよね。ったく。
結構お客様来るのね。セレブなトコなのに。
ウチにもマダムが来てお買い上げ。「ありがとうございました」シャンプーだけどね。
「あれ、モコモコは?」
知らない間にモコモコが居なくなった。
何やってんだアイツ。
「えええええっ」
モコモコがキャスターの付いてる台を持ってきて、クリスマスケーキを売り出した。
「だって今日はイブでしょ」って何でもアリだな。自由すぎるでしょモコモコ。
まぁモコモコの店だし、モコモコの好きにすればいいんだけどさ。
モコモコの、モコモコによる、モコモコのためのモコモコ。うん、くだらん。
でもさ、モコモコの上に更にサンタのコスプレってどーなの?
無視だ。付き合ってられん。トナカイとかさせられたらたまらん。
へぇ〜高校生とかも結構来るのね。可愛い小物とかお買い上げ。「ありがとうございます」
で、何で習字セットとか売ってんの?お正月に書き初めとかするのかな?やりそうだ!モコモコだし。
「おばちゃんこれください」...お姉さんだからね、って誰がおばさんじゃ!
子供も来るのね。このクソガキがぁ...怒
結構お客さん来るのね。結構忙しい。でもあのスイカ大の水晶は絶対売れないと思う。
モコモコ?もちポテポテしてる。クリスマスケーキ完売しよった。信じられん。
「な、な、何してんのぉぉぉ」
食事に行って帰ってきたら、モコモコがとんでもない事していた。
なんと!店の奥でコタツ出して鍋してるの。セレブなおばさま達と。
「亜紀も食べる?」
っていらんわい!私はそっち側にはいかんぞ。
「やっぱ冬は鍋よね〜オホホホ」ってファンシーショップで鍋はせんぞ。笑い方だけセレブにしてもダメだぞ!
いやぁ〜この異常空間にはだいぶ慣れてきたけど。これにはかなり驚いた。
「有紀ちゃんの鍋美味しいのよ」っておばさまコタツの常連さん?まぁ鍋奉行だからねモコモコは。
しかし何て店だ。まぁ皆さん来るお客様は常連さんみたいだしね。慣れてる、私より。
売り上げとか結構あるんじゃない?高額のものはモコモコがするから、分からないけど。
でも、ココの店舗の家賃とかめちゃくちゃ高そうだし。
ま、私が考えることじゃないな。モコモコが何とかするだろうし。
「お疲れ様」
疲れたわ!色々と。マジで。
とりあえず終わった。
はぁぁ今日は大変な一日だったなぁ。モコモコのせいで。
「うん、寝よう」
夢を見た。
小さい頃の夢。
『さむい...』
『たすけて』
ー亜紀ー
『モコモコさん』
「はっ」
目が覚めた。
何だ?
そういえば。
私、小さな頃雪山で遭難したことがあるんです。
家族でスキーに行って、コテージに宿泊しました。
夜中に目が覚めて、好奇心で外に出て...
実際にはコテージからそんなに離れてはいなかったのですが、命に関わるところでした。
私は今初めて真実を知りました。
「あの時助けてくれたのはお姉ちゃんだったんだ」
あれ?何で涙が出てるんだろう...
「ううっ寒い」
今日はちらちらと粉雪が舞っている。
雪景色というわけではないけど、見ようによってはスターダストみたいで綺麗だな。
でも...
やっぱり冬は寒い!
いや
「冬はモコモコでしょ!」
おわり
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
メリークリスマス♪←これ、イブの日に投稿したので残しておきます(^^)