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寝返りって行ったら最後、帰ってこれないよね


皆々様、最近、わたくし、技を覚えました。

その名もーー


ローリングスター


頭を横に振って、手と足を精一杯伸ばして体を捻る。最後にふんっと力を入れたらごろりと体が回りますの。ローリングスターのお陰で、今までは少し届かなかったおもちゃにだって手が届くようになりましたわ。毎度毎度、届かなくて、泣いては母上様、父上様を呼ぶのが心苦しかったですもの。大人はわたくしとは違っていつも忙しそうにしているものね。


「あーーぶっ」


ふんっと力を込めて、手を伸ばす。

今回の目標は、すぐちかくにある四角い箱。白いひらひらがいつもわたくしを誘惑してきますの。シュッと引っ張るあの心地が大好きですの。一度遊んでからというもの、母上様はわたくしがいつも横になっているタオルから離して置いていますわ。まったく、近くに置いといてくだされば、勝手に遊ぶのに。

泣いて母上様を呼ぶのも忍びないので、仕方なく、わたくし自らローリングスターで取りに行きますわ。


「あ、ぶ、ぶ」


ごろりと転がると、うつ伏せになる。また、ごろりと転がると、見慣れた天井が見える。


「あぶーー」


最後の力を振り絞り、四角い箱に手を掛ける。


「あら、上手に寝返りできたのね」

「あうー」

「はい、じゃあお布団に戻ろっか」

「あ、ぶ?」


ひょいっと体が持ち上がり、元いた場所に体を下ろされる。

あら、母上様、わたくしは白いヒラヒラで遊ぼうと思ったのですけど。あら、その箱を高いところに持っていかれると、わたくし届かないのですけれど。


「危ないものは、下に置かないようにしてるつもりだったんだけど。寝返り出来るようになってきたし、特に気を付けなきゃ。ついついティッシュを下に置きがちなのよね」


代わりに、側にカサカサと音のなるおもちゃが置かれる。

仕方がないですわね。今回はこれで我慢しましょう。また、母上様が白い箱を床に置いているときは、ローリングスターで取りに行きますわよ。



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