現れては消える"あれ"
君たちは、知っているか。あの、魔法の呪文を。
いないいないばあーー
とても退屈なこの世界に、突如現れた大きな影。魔法の呪文と共に、現れては消えていく。
最近、それがしは筋トレをしている。何故か、よくうつ伏せにされるのだ。その状態だと苦しいため、それがしは必死になって顔を上に上げている。頭が重くて左右に揺れるが、このリズムが心地よかったりする。
そして、時々失敗して顔からそのまま枕に突っ伏してしまうのだ。そうなると、驚きや痛み、色々な気持ちから、生理現象が起こる。大きな声を上げて泣いてしう。
本日の筋トレ中、それは現れた。
「いないいない、ばあ!」
「っ!」
魔法の呪文とともに、突如目の前に顔が現れた。思わず、固まってしまう。
「あれ、面白くなかったか。いないいない……ばあ!」
何故だ。さっきまでいなかったのに、急に顔が現れる。何故、そこまで必死に呪文を唱えるのか。現れるのは毎回違う、工夫を凝らしたのであろう顔。変な顔。
「ふきゃっ」
「あ、」
「きゃっきゃっ」
「笑った! 母さん、笑ったよ!」
単純な呪文なのに、何故か癖になる。その呪文を唱えられると、ついつい笑ってしまう。
それがしが笑うようになってからというもの、皆が代わる代わるに呪文を唱えるようになった。退屈しのぎに丁度良い。筋トレ以外に新たに出来た暇潰しだった。
ただ、ひとついいたい。
「いないいない、ばあ!」
「きゃっきゃっ……あぶっ」
「あ!ぶつけた」
筋トレ中にするのは止めていただきたい。ただでさえ不安定なのに、あの呪文で笑ってしまうと必ず顔から床にダイブしてしまうから。