盗賊と貴族
その異様な雰囲気の男は、銀髪に赤い瞳をしていた。
そして赤と黒のマントに身を包んでいる。
牢屋の中を静かに見つめている。
「ボス、こいつっす。」
大男が異様な雰囲気の男に話した。
「金は持ってそうだな。」
「そうでしょう、身代金がたんまりですぜ。」
お金の使い道を想像しているのだろうか、大男はニヤつきながら答えた。
「おいガキ、名前は?」
異様な雰囲気の男が質問する。
「ソウタ クルキだ」
ソウタが答えた。
「おめーじゃねーよ!!クソガキが!!」
大男がソウタに向かって怒鳴った。
(クソガキだと・・・)
ソウタはムカつきながらも黙った。
「そっちのキレイな方のガキだ。答えろ。」
大男がメイソンに向かって言った。
「名前を聞くなら本来そちらからでは?
まあ、良いだろう。
メイソン フェルナンデスだ。」
大男は驚いたのか一瞬止まった。
そのあと、歓喜の表情を浮かべながらしゃべりだした。
「フェルナンデスだと!?テメーは四大貴族フェルナンデス家のガキか!?
こりゃーすげー!!身代金ガッポリじゃねーか!!」
(こいつ良いところの子供だと思ってたけど貴族だったのか。しかも四大貴族とかすごそうだし。)
ソウタはこの世界の事はまだ分からなかったが、メイソンが格式の高い家柄の子供だということは理解した。
大男は喜びのあまりはしゃいでいる。
しかし、異様な雰囲気の男は今だ静かにたたずんでいた。
「俺はアッシュだ。こいつはウド。お前ジェイミーとの関係は?」
「ジェイミー フェルナンデスは伯父だ。」
(アッシュだと? 強盗、人殺し、放火、人身売買、何でもする残虐非道の盗賊じゃないか・・・)
メイソンは冷や汗を垂らした。
「ジェイミー フェルナンデスが伯父だって!?こいつ本家のガキかよ!!
やべー、やばすぎるぞ、金がガッポリだぁぁぁっっ!!!」
ウドが大喜びで叫んだ。
「うるせーぞ!!」
アッシュがウドを一喝した。
その瞬間、ソウタはゾっとした。
アッシュが全身から憎しみのオーラを滲ませながら、おぞましい表情でメイソンを睨んでいたからだ。
「このガキは金には変えねー。処刑だ。
一枚、一枚、丁寧に生爪を剥がした後、生きたまま皮を剥いで吊るしてやる。」
アッシュは怨念と喜びが入り混じった不気味な表情を浮かべながら言った。
「でも、ボス」
「これは決定だ、変わらねー。」
アッシュはウドの言葉を遮った。
「おいウド、連れてくぞ。早速お楽しみだ。」
「ヘイ」
ウドはしぶしぶ牢の扉を開けて入ってきた。
そして、腹いせにいきなりソウタを蹴り飛ばした。
「ぐぅぅぅ」
ソウタはそのままうずくまってしまった。
「おい、」
メイソンがソウタに声をかけようとした瞬間、ウドに担ぎ上げられた。
そのままウドは牢の外に歩いて出た。
その時、別の男が血相を変えて走ってきた。
小屋にウドと一緒にいた男だ。
「どうした、デク?」
ウドが聞いた。
「兵士だ!!兵士が入ってきた!!しかも滅法強い剣士がいて恐ろしい速さで侵攻されてる!!」
その時、遠くの方から叫び声らしきものが聞こえてきた。
ズシャッ!!
「グァァァ!!!」
「ヒィィィ!!!」
人を斬る音や斬られた者の断末魔がアッシュ達にだんだんと近づいてくる。
ドシャッ!!
とうとう斬られた盗賊がアッシュの足元まで吹っ飛ばされたきた。
アッシュは顔色一つ変えずに斬られた盗賊が飛んできた方向を見つめていた。
ウドとデクは完全に怯えた表情を浮かべている。
暗がりから一人の騎士が姿を現した。
「アレクサンダー!!」
その姿を見て、ウドに担ぎ上げられているメイソンが叫んだ。