牢獄の中で
ドサッ!!
気を失っている颯太は大男に床に投げ捨てられた。
鉄格子の扉が閉じられて鍵がかけられた。
そのまま大男は去っていった。
「うぅ・・・」
颯太は目を覚ました。
側頭部が痛む、手でさすったところコブができているようだ。
颯太は立ち上がり辺りを見回した。
洞窟の中に作られた広い牢屋のようだ。
一緒に20人ぐらいの人が入れられている。
子供から老人まで男も女も様々な人がいる。
ただ、みんな外国人のようだ。
ほとんどの人は農民のような恰好をしている。
「おい、お前大丈夫か?」
他とは違い身なりの良い服装をした10歳ぐらいの子供が声をかけてきた。
(言葉は通じるようだな。)
(つか、『お前』ってどう見ても子供じゃないか。
俺はもう高校生だぞ、金持ちの子供は生意気だな。)
颯太は心の中で悪態をつきながらも、笑顔で答えた。
「大丈夫だよ。ここはどこかな?」
「ターリッツ村の近くだと思う。」
「ターリッツ村?
えっと・・・外国のようだけど、ここは日本ではない?」
「ニホン?それは国の名前か?
だとしたら違う、ここはバウヘミア王国だ。」
(どこだよ!?そんな国聞いたことないぞ。)
颯太は困惑した。いきなり聞いた事も無い国にいるのだ。
「自己紹介がまだだったな。
俺はメイソン フェルナンデスだ。メイソンでいいぞ。
お前の名前は?」
「ソウタだよ。 ソウタ クルキ。」
「ソウタかよろしくな、
俺は9歳だ、お前はいくつだ?」
「17だよ。」
ソウタはもう少し尊敬しろという思いを込めて答えた。
「おいおい、そんな訳ないだろ。
どう見ても俺と変わらないじゃないか。」
メイソンが呆れながら言った。
「何言っ・・・!?」
ソウタはある事に気づいて言葉を飲み込んだ。
メイソンと目線が変わらないのだ。
9歳の少年と目線の高さが同じなのだ。
ソウタは驚きながら、急いで自分の両手を見た。
(小さい、明らかに小さくなっている!?)
そして自分の胴から足にかけて確認する。
(やっぱり小さい、そして、俺の服はボロ切れじゃないか・・・)
「おい、お前大丈夫か?」
おかしな行動をしているソウタを見て、メイソンが怪訝な表情をうかべながら聞いた。
「あ、ああ・・・」
ソウタが気のない返事をする。
心ここにあらずといった感じだ。
「まあ、落ち着け。」
そう言うとメイソンは奥へ何かを取りに行った。
戻ってくると左手にコップが握られている。
そのままメイソンは、右手の人差し指をコップの入口に向けた。
「ウォーター!!」
メイソンが唱えると、指先から水が出てきてコップに注がれた。
ソウタはそれを呆然と見つめた
色んな事が起こり過ぎてもう驚く事さえできない。
「まあ、遠慮せずに飲め。」
ソウタはメイソンに勧められるまま、水を飲みほした。
「どうだ、驚いたか?」
メイソンは自信たっぷりに聞いてきた。
「俺はもう魔法を使えるんだぞ。お前はどうだ?」
「使えない・・・です。」
ソウタは無表情のまま答えた。
(魔法、魔法、魔法・・・魔法って使えるものだっけ?)
「そうだろ、魔法を使える奴は限られているし、俺ほど早い歳で使える人間もそうはいないからな!!」
メイソンは誇らしく、いやとても偉そうに言い放った。
どうやら自慢したくてソウタに水をあげたようだ。
「へぇー すげえじゃねーか」
ソウタの後ろから声がした。
振り向くと鉄格子の向こうに、さっきの大男と異様な雰囲気の男が立っていた。