表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高い所が死ぬほど嫌いな俺が、空中ダンジョンの下級貴族の子に転生した話  作者: きたぼん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
33/83

33 迷いの森に。内緒で


俺は、アラモスとサムロスの親子を連れて、レリアのいる台所へと押しかけた。

驚くレリアが、かき混ぜ中だったボウルを、がらんごろんと、落とす。

「せっかくのクッキーがあ」と、涙をためてる彼女に、もっと(・・・)美味しいものをごちそうすると、なだめる。

すると今度はなぜか怒りだす。女心の意味不明さは、子供にも適用されるらしい。


やれやれと肩をすくめたのは、指南役を務めていたセバサだ。

コイツはお菓子作りもできるのか。万能だな。


ちょうど、かまどには火がはいっていた。

水を張った鍋にジャガイモを入れて、グツグツ茹でる。

熱が通って、ほどよく軟らかくなったジャガイモを皿にと移す。

塩をふれば完成だ。


「鍋を置いたぞサムロス」「水を張ったぜ父さん」「茹でるぞサムロス」


俺が何かやるたび、いちいち反応してくる親子が面白い。

どうやら本気で食べるつもりだぞ、とカチコチに固まってる。

さっき、アンタら、死ぬつもりだっただろうが。


「それでルミナスさま、これはなんですかな?」


湯気をたてる、できたて熱々の茹でジャガが5個。

目が釘付けになってる俺に代わり、アラモスが執事に返答。


「ジャガイモです」

「ジャガイモ? あの毒の?」


小さなヤツに串を挿してみる。

うっし、ちゃんと中まで火が通ってる。

毒身させようと企んだが、も、待ちきれん。

あつあつを、口の中に放り込んだ。


「あ、ルミナスさま!」


セバサが制止的行動をとったようだが、気にしない。

んんんまいっ!


「ほふっほふっー。ぶ、ぶあたーがあれば、ほふぁっはんらけど、ね」


バターがあれば良かったんだけど。

塩辛もいいなー。


「仰ってる言葉はわかりませんが。皮をむくと印象が激変しますね。どれ」

「執事さま!」

「ほふ、ほれ、ほれは……イケますな」

「わたしもわたしも。あちゅっ、おーいしいっ!」

「……マジかよ? ほむ……父さん……美味いぞ」


軽く塩をふっただけの、天然素材100%のジャガイモは、予想以上に美味かった。

臭い堆肥場から拾い上げてきなんて、どうでもいいこと。出自は問わない主義なのだ。

味は、危なっかしいレリアのお菓子よりも上。


「レリアさま、サムロスも……そうなのか…………おおおお!」


とうとう食したアラモスが、イモの味に奇声をあげる。

ジャガイモは、万能野菜だと思う。


煮る、焼く、炒める、蒸かす。シンプルゆえに深い。

カレーにシチューに肉じゃがに。ポテサラなんかも最高だ。

どんな料理にも合って他の食材との相席を嫌わない。

さらに、ポテチのようなお菓子にもなる。完璧である!


アラモスはサムロスともども、何回も頭を下げた。

ぜったいに作らねばと、種芋を捜しに、自身の畑へ帰っていく。

ほかのシタデル農民にも教えて、シタデル全土に広げてもらいたい。

味、量、栄養ともに抜群な、飢饉に強い食材なのだから。


少しでも食事情が、改善するといいな。

あと連作障害だけは、注意してね。

漏らしそうになるくらいビビったけど、まあるく治まったな。


「ルミナス坊ちゃん、これは、いったいどういうことですかな?」


どうと言われてもなぁ。

一言じゃ、説明できないんだよ。


「なんと言うか。ま。サムロスくんの功名です」

「ほう、サムロスの。そうなのですか」


疑わし気だな。でも実際サムロスの功績だ。

単に食べようとしたなら”毒が”と制止されていたと思うし。

サムロスパンチの、反動のおかげだ。


「ふぅ。眠くなりました。お昼寝します」

「そうですか。ごゆっくり」


幼児にとって昼寝は権利。レリアも時々寝てるし、フレッドなんか毎日だ。

俺が、寝るなんて言うのは珍しいが、寝落ちしたことは何度もある。

ドアノブに札を掛けた。


”お昼寝ちゅう、起こさないでね”


ベッドにゴロリ。【アーキテクチャ】で部屋を魔改造にもどす。落ち着くなぁ。

HPの謎についても解けたと思う。これもサムロスのおかげだ。

でもやっぱ、検証はやっておかないとだな。


6歳の掟か。なあにバレなきゃいいのよ。

行った場所をマッピングし表示する”マップ”は【アーキテクチャ】の子スキル。

”ルミナス”のドッグタグを首にかけて、転移する。


この前は、家ごと転移して驚いた。

マップで位置を換えるだけだから、物体じゃない人だって瞬間移動できるのだ。

つーか、質量が小さいから、そっちのほうが断然省エネ。


ダンジョンのど真ん中に転移できるといいんだが、ダンジョンの内部は”行った場所”なのに表示できない。転移不可エリアってことだ。

一瞬後、迷いの森の”廃坑ダンジョン”入口に俺はいた。


「この芳しい香り、まさにダンジョンの匂いだな!」


右手は腰。左手でまぶしい光を遮り、ひさびさ――数日ぶりだが――の帰還にうきうきが止まらない。


「遅かったじゃないの、テ・ル・ア・キ」

「は、は、は、はなみずブラン、どほっ」


その声はブランチェス……なのはマップでわかっていた。

ふり返ろうとした脇腹に、彼女の右ひざが命中。会心の一撃(クリティカルヒット)

い、息がうまく、つけない。


「ヴィェ……★◎てぁじゃねーか! この、ぶぉー力女が!」

「美女水よ! 相変わらず生意気な幼児ね。目を覚ましてあげる」


そう言うなり、冷水をびしゃびしゃかけてきやがった。

水魔法かよ。使い方が適切じゃねー。


「なにが”てるあき”よ。あなたグルーム家の子だったんじゃないの」

「それがダンジョンデバフだろうが。忘れてたんだよ」


言えるはずがない。ホントは転生者で元の名前の記憶が明瞭だったなんて。


「忘れてた、ねぇ」

「ルミナスになって日が浅いんだよ」


本気とも冗談ともとれそうな台詞を吐いて煙に巻いとく。


「……まぁいいわ。さっそく攻略といきましょうか」

「なんで? 一人でいくつもりだが」

「ふーん。ガラにもなく照れているのかな? 時間がもったいないわ。アタックゴーよ」


いやいや。照れてないから。


「ブランって公爵の娘だよな? 俺みたいな下級貴族が同行するのはどうだよ」


アラモスの振る舞いが頭にこびりついて離れない。

身分制度は侮れないと知らされた。

彼は農民長という立場もあって、グルーム家に出入りの多い人物。

鍵もつけない門とはいえ、しょっちゅう訪問し、領主と近い関係を築いてる。


俺ら子供らにすれば近所の楽しいオッサン、てなポジション。

そんなアラモスでさえ、子供のケンカで、死ぬの殺すのと命をかけるのだ。

平均的な令和人の俺は、狂気じみた真剣さにひいてしまう。


支配階級である男爵と、非支配階級である領民の長。

ブランチェスと俺にも、この関係は、あてはまりそうだ。

前にあった、素の時とは、状況が違ってしまってる。


貴族同士ってどう付き合ってんだろ。とくに、上級と下級は。 

挨拶ひとつ、俺は知らん。無礼打ちもありそうな気がする。

まぁ、俺のほうはともかく、下級貴族と二人でダンジョンへ潜ることで、ブランが咎めを受けるってのは、ツラいし忍びない。


正直言えば、どう接したらいいのかわからん!

腕を組み、うんうん小首を左右にひねり回す俺。


「らしくないわね。要らないことを考えるなんて」

「そう言うけど。一人のほうが安全だ。面倒ごとを背負いこむ危険がない」


面倒ごとその人(ブランチェス)に、ズビバっと、人差し指を突きつけた。

遠くでガチャガチャという金属音がして、それがずんずん近づいてきた。


「お嬢様! ブランチェスさまー!!」

「ほら来た! 行くわよ」


ブランチェスは、俺の指をぎゅっと鷲掴み。

ダンジョンの入り口である、廃坑へと突進、というより逃避した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ