生い立ち
理不尽な不幸ってのは極限まで振り切ってる事がある。
ある目的地に友人と遊びに行く約束をしたら、休日が仕事に変わったり予定を変えたら目的地が休みになったり、何故か友人が来なかったり。その目的地が無くなったり。
あーあー。
少し昔に生まれつき呪われた子が産まれた。その子は、あまり目が見えず、微かに耳が聞こえ、僅かに話す事が出来た。家族や他人には、見えない物が見えて触れないものが触れた。その子は、少年になり怯えて暮らす事になる。悪鬼達は常に少年に、ちょっかいをかけてくる。夢の中で悪鬼は囁き、現実的な幻覚を見せては少年を破滅の方へ誘導する。
なんとか生きていた少年に転機が訪れた。
身体の成長により耳がまともに聞こえるようになった。それからある空手の道場に通うことになる。偶然、すれ違った爺さんに呼び止められたのだ。
「まじないってのは、運命を変えるもんだ。俺についてきたら変えてやる」
その爺さんのボソッと掠れた声で呟いたその声に何故か涙がこぼれた。
古い路地裏にある道場に住み込みで教えを乞うことになり、その爺さんは師匠になった。高校を卒業したあとで、自分は師匠から空手と呪いという魔術を習うことになった。
修行と真っ当な生活を始めて5、6年が過ぎたある日の朝。
目覚めると見知らぬ公園で寝ていた。数日ぶりに実家に帰ると、実家が無かった。働いていたはずの会社にいくと、会社も無かった。
過去の記憶だけを残して、関わる全てが消え去ってしまった。なんとなく納得したのは師匠が何かをやったのだということ。それだけの力を持つ人だったのだろうと思う。
自分は、誰でもなくなり生まれ変わったんだと悟った。なんとなく世界も生まれ変わった気がした。
それから、数日後にとある会社の社長と知り合うことになる。ここから、今の自分の話に繋がっていく。