episode 1
教室で話してたらできた新作です
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罪なき償い
緑の光が重い瞼に当たり、強引に現実に引き戻される。
ガタンと体が揺れて、視界を取り戻そうと目を擦る。
「……電車?」
木を主体とし、緑のシートが並ぶ景色が見えてさっきの揺れと結びつけ電車と判断した。なんで電車に乗ってるんだっけ?というか……名前も思い出せない……あれ?
「にいちゃん起きたかい?随分長く寝てたね!そろそろ目的地だから起こそうと思ってたんだよ」
誰?垂れ目が特徴的な男の人が向かいの席から話しかけてきた。45歳前後のおじさんという雰囲気だ。クリーム色の帽子を被り、黒縁の眼鏡をかけている。顔を上げて次の目的地を確認すると、電光掲示板には「次は水仙村」と書かれていた。水仙村……?
「寝てて覚えていないんですけど、俺はどこに向かってるんですか?」
するとおじさんの垂れ目が細くなり、口元がニヤリと動いた気がした。だが思い過ごしだったのか?瞬きをした瞬間に変わってしまった。少しガヤガヤしている車内はクーラーがないのかとても暑かった。シートは少し綻びてて、電車自体もかなり使い込まれているようだ。
「あんたは桧田涼介だろ?お前は水仙村に引っ越すんだろ?寝ぼけすぎだよ、あそこにいる少年も一緒のところに行くんだ、一緒に行きなさい」
そうだ……俺は桧田涼介で25歳。水仙村に引っ越すことになって電車に乗ってるんだった。なんでこんな簡単なことを忘れていたんだ?上を見ると、荷物置きにはお気に入りの鞄があった。それを立ち上がって取ろうとしたら、背中に痛みが走った。寝すぎたのかな?けど激痛だったんだよな。動作をゆっくりにして再び立ち上がる。
「じゃああっちに移動しますね。お世話になりました」
男の人に手を振って斜め右の席に移動する。おじさんは手を振ってくれた。二つの席が向かい合っているかたちの配置で、乗車客は多いわけでも少ないわけでもない。けどカーテンは一つもあいていない。そして俺と同じようにぐっすり寝てる人が沢山いる。だが同じ場所に行くという男性は起きていたので都合が良かった。
「こんにちは、桧田涼介です。同じ場所に行くと聞いたので挨拶に来ました。隣いいですか?」
すると男の人は顔を上げた。爽やかな青年だったが目元のクマが酷かった。けどそれを感じさせない整ったパーツ。簡単に言ってしまえばイケメンだ。
「いいですよ!僕もさっきそこの人に聞いたので挨拶に行こうと思っていたところでした。宮川希と言います。年は24歳です」
差し出してきた宮川さんの手を握る。自分と同い年か一個下ということだ。握手を交わした直後、電車が止まり、到着の放送が入った。
「到着みたいですね、後は降りてから話しますか」
二人で荷物を持って立ち上がるともう腰は痛くなかった。けど宮川さんは少し腰をおさえる動作をした。やはり長時間座っていたからだろうか?
ホームは石でできていて、屋根があるだけで外がよく見えた。電車が通り過ぎたのを確認してから疑問を持つ。
「どこに行けばいいんでしたっけ?」
すると宮川さんも首を横にふる。
すると前から男の人が歩いてきて俺らの前で止まった。小太りで低身長、白髪と眼鏡が特徴的なおじさんという感じだ。
「お待ちしてました!宮川希さんと桧田涼介さんですね!水仙村村長の相川です。お二人の住居まで案内させますね。宮川さんはこの徳永が、桧田さんには大園がつきます」
二人とも明るく印象のいい女性で、俺は大園さんについて行くことになった。
駅を出ると自然が広がった村で、木々や花々が豊かで、見たことのない虫も沢山いる。
「この村では初めはテントで暮らしていただきます。お金を稼いでもらい敷金が貯まりましたら家を購入していただきます。お金の稼ぎ方は自由です。果物を収穫するなり、バイトをするなり、虫を捕まえるなり、魚を捕まえるなり。あとスマホは持っていないでしょうけど使えませんパソコン等も使えません。禁止というより電波がないですし。電気も照明以外は対応していません。家具等は特殊な電池で動きます」
マニュアルに目を通す大園さん。特に特徴があるわけではないが緑のセーターを着ているのが印象的だ。テント内での説明だが二人入っても決して狭くはないため、不便は無さそうだ。家具は揃っていないが、小型冷蔵庫とラジオは設置してある。
何故自分はここに引っ越してきたのか?その答えはすぐ思い出せた。確か巷で話題の田舎でのんびり暮らすてのに影響されたんだ。
そうこう考えているうちに説明は終わり、分厚い説明書をいただいた。
大園さんが出て行くと、職を探す前に村探索をすることにした。が地図があったので妥協してどこになりがあるか決めて金を稼ぐことにした。所持金は10万円。とりあえず家を建てるのには100万の敷金と500万円。ローンを組めるから取り敢えず100万貯めるしかない。
マニュアルを見てわかったんだがこの村はどういう仕組みか給料がなかなかに高い。けど職の選択肢は結構少ない。というか施設が少なすぎる。
靴屋、服屋、コンビニ、小売店、不動産、役所、博物館、本屋、リサイクルショップ。工場も働き口としてはある。
この辺は魚などが多いからリサイクルショップでそれらを売るのでも結構高額になるようだ。そこで俺は考えた。
朝は工場、夜はコンビニ、空き時間や休みの日は虫や魚を取り、果物などを育てる。けど果物も種や苗を買わないと行けない。
家を出ると空を仰いだ。
ここでなら楽しい暮らしができそうだ。
小売店で釣竿とスコップを買えると書いてあったので歩いていて気づく、一切車がない。道路すらないのだ。見渡す限り草である。
そして一部石になっており、川が流れている。そこを渡ると店が並んでいる。歩いていると宮川さんにあった。
「あっ宮川さん!」
声をかけると、宮川さんが駆け寄ってくる。
「同い年ですから希でいいですよ!」
「じゃあ俺も涼介で。希も買い物?」
呼び慣れない下の名前をたどたどしく呼ぶ。決して人とのコミニュケーションが上手いわけではない。
「うん。職は手にするけどそれ以外でも稼げばいいと思ってね。取り敢えずテントとは早くおさらばしたいよ。所持金が10万て言うのもね。郵便局しかないみたいだから預け入れもそこでしかできないみたい」
うん、イケメンで頭もそこそこキレるようだ。
スペックが違うな。申し遅れました、平均的なモブ顔の桧田涼介です。
冗談はさておき、俺は特別にイケメンなわけではない。髪も黒だ。運動神経もぼちぼち、勉強もやらんとできん。服も黒Tシャツにジーンズとシンプルだ。
「まぁすぐたまるさ。じゃあ取り敢えず買い物しますか!」
俺ら二人は小売店の入り口をくぐった。
小売店の店長は少し背は小さいが、甘いフェイスだった。ふぇいすかな?すごい童顔。幼過ぎて迷子かと思った。
「えーと、あった!スコップと釣竿と、虫取り網。結構するな……300,1000,600,1900……残り8万1000円か……」
ブツブツ呟きながら会計を済ませようとする俺に宮川は提案を持ちかけてきた。
「どう?この際道具は共通で買ってルームシェアするのは。土地を売ればお金になるし。なーにお金が貯まるまでの間だがら問題ないだろう?」
「いいな!それで行こうか!」
本は本屋かな?一冊も置いてない……本ねーじゃん
俺がルームシェア案に乗った理由は二つ……
一つはこの村での生活は正直不安ていうのとテントで暮らしたくないていう二つ。
俺ら二人は希の土地を売ってワンルームの家を購入する手続きを行うことにした。
こうして俺の水仙村生活が始まった。