0-2 三十人目の勇者、未だ生まれず 2
自分でも分かるほど、1-6.5までの文章はクオリティが低いのでいずれ書き直します。それまでの文章は殆ど日常だから飛んで問題ありませんので、初めての方は1-7から1-10までを見ていただいてから続きを読むかを判断してくださると嬉しいです。
この世界の魂は死後ミキサーに掛けられて【平均的な魂】、つまり無色の魂の元になる。
では何故タイトルは真白かと言うと、水にインクを垂らすと全体に色がつくのに対して、彼女は白い紙のように全体に色がつくわけではないからだっというのと、外表が白い髪だからです。
勇者が元男だからといってTSかと言うと実は違ったりする。と言うのも記憶を抜かれると性別の認識もまた曖昧になるので、どちらかと言うと彼に男としての意識はない。
いずれにせよ、どうぞ本編を~
三十人目の勇者は最も多くの知識を持っており、誰よりも死を恐れる。
そしてなまじ知識を持っているだけに、彼は直感的に思った
「これ、不味いんじゃ?
こんなヤバイことやるところに転生したらぽっきり死ぬじゃ?
ていうか記憶を抜かれるあの喪失感ヤバすぎるから嫌だし
私のような現代社会の中でも安全なほうの国で生きてきた者に何やらせるきなの?」
実は天龍帝国の想定と異なり、扉が開いたのは初日の一回きり。世界からしたら三十回も穴を開けられたらたまったのもじゃない。
だから初日の勇者は直ぐに死んだのは三十人分の穴を開けたせいでリソースが足りなかったことが原因だが、それはさておいて。
三十人目の勇者は29日以上の思考時間を与えられた。
人と言うのはは本来29日も何も感じられないままでいると狂うものだ。
ほかの勇者は魂がボロボロだから意識そのものが無いおかげで問題にはならなかった
でも彼はそうではない。
とは言え、人の精神はそもそもの話として死を知ってはならないもの。死の感覚を覚えている彼は既に狂っている。
『何を持っても死よりは遥かにマシ』と言う事は彼の中では知識となり、すなわち彼は死以外のものの殆どを受け入れることに他ならない。
だから彼は29日以上も考えた。
『山河は改めやすいが,人の本性は移し難い』自分は既に人格を確立している。ましてや死への恐怖のせいで戦おうものならひるんでしまい、そのまま死ぬこと待ったなしであろうと。
自分は危険に合っている瞬間、固まって動けないからこそ死んだのだから、死への恐怖が強まった今尚更無理であろうと。
自分の知識が新しい世界の常識と合わないせいでヤバイ目に合うではと。
恐怖は彼をネガティブにする
だからこそ彼は考えれば考えるほどマイナス方向へ思考が傾いでしまう。
故に、30日目、最優にして最大の器を前にして彼は抵抗した。
彼にとって怖い【死】とは肉体を失うことによって記憶を抜かれる【自分が自分ではなくなる】喪失感
故に肉体に入らなければ失うこともなく、【死】と言う感覚を感じることもないからだ。
ともかく、彼は抵抗した。それはそれは必死に抵抗した。
そして器の完成が遅かったのも合ってなんと、彼は30日が終り告げてもなお二割位しか肉体に入らなかった。
そして二割満たされた肉体は産まれる準備を整えて母体が産気つき
そのまま殆ど空っぽの器は世界のルールに則り無色の魂によって満たされる。
その間彼はずーーっとずーーっとなりふり構わず抵抗していた。
とは言え、三十人目の生贄、その数一千万超え
そんな多くな贄によってなされた邪法が彼の逃亡を許す筈もなく、満たされた器に残りの八割が無理矢理詰め込まれようとした。
それはさながら風船に想定された倍の空気を注ぐように
「ちょ、待てよ
これってどう見ても入れないだろう?
ストップ!ストップ!ストッッッッッッップぅぅぅぅぅぅ!
うああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!
だめらめらめ~~~~~~~」
まあ、もしもそのまま一気に入ったら流石の最高傑作でもダメになったでしょう
でも彼の抵抗が意外にも強く、まるで食料を無理矢理詰め込んでいけば胃袋が広がるように
彼の抵抗によって3日を掛けて器が広がっていくお陰で器は無事とは到底言えない状態でどうにか踏みとどまった。
そのせいで器は無色の魂とも彼とも上手く繋がれず、五歳になってから漸く自我を得始めることになる。
彼の魂はと言うとこの時のダメージで七年位意識を失ってしまうことになる。
でも、彼女が勇者認定されなかった理由もその時の状況が勇者ではないお陰だったりする。
ともかく器はなんと一般的な勇者の三倍の大きさを誇るのだから、終わり良ければ総て良し。めでたしめでたし
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実のところ彼は知らないが、肉体がないと魂は本来世界にごちゃごちゃとジュースのようにミキサーに掛けられて
すべての魂が混ざったりした無色の魂の元になってから転生するので、ホントに肉体入らなかったら残った知識と自我までなくなる恐怖を味わうことになるが
まあ、それを知る機会は彼には永遠に訪れないでしょう。
何せ超越者になれば寿命が無くなり、魂は死後元のまま保留する
最も力を持つ勇者が超越者にならないはずもなく、故に彼…いえ、彼女は恐れている【死】から解放される宿命にあるのです。
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