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魔眼姫戦記 -Record of JewelEyesPrincesses War-  作者: ひろすけほー
王覇の道編
86/336

第十九話「”暁”最強部隊?と鋼の協力者?」後編(改訂版)

挿絵(By みてみん)

 第十九話「”(あかつき)”最強部隊?と(はがね)の協力者?」後編


 長州門(ながすど)の”両砦”が一角、菊河(きくかわ) 基子(もとこ)率いる歩兵部隊と京極(きょうごく) 陽子(はるこ)天都原(あまつはら)軍が激突していた時と同時刻に――


 尾宇美(おうみ)城北側に展開する、対”七峰(しちほう)”軍防衛砦は……


 「くっ!次から次へと……きりが無いわね」


 突貫工事で築かれた幅二メートルほどの堀代わりの溝と、腰まで積み上げられた()(のう)の壁に仕切られた向こうに設置された陣にて女は苛立った声を漏らす。


 「これまで……陽子(はるこ)様の策で七峰(しちほう)軍の再三に(わた)る突撃を撃退してはいるけれど、それも何時(いつ)まで持つか……」


 長い黒髪を簡易的に後ろで束ねた背筋がスッと伸び凜とした女は、簡易的な金属製の()()臑当(すねあて)という戦場ではやや役不足ではと思われる申し訳ばかりの軽装鎧姿であった。


 「ここを抜かれれば後は……陽子(はるこ)様の居られる尾宇美(おうみ)城までは八月(はづき)が守る最終防衛ラインしかない……いざとなれば」


 決意に満ちた瞳でそう呟いた女は、そっと立てかけてあった槍に手を伸ばす。


 「うぎゃぁぁーー!!」


 「ぐあっ!」


 「っ!!」


 そして彼女が槍を掴んだまさにその瞬間、陣内に雪崩(なだ)れ込む人影が五人!


 ガギィィーーン!


 目前で金属同士の火花が散り、刀を折られて押し返された男が後方へ弾け飛ぶ。


 「六実(むつみ)っ!ごめん抜かれたぁ!もう”この陣”まで七峰(しちほう)軍が迫ってる!」


 雪崩(なだ)れ込んで来た人影のひとつ、男を弾き飛ばした三つ編みの女が剣を片手にそう叫んで槍を握った女の前に背を向けて立つ。


 ザザザッ!!


 そして直ぐにそこには……


 残った三人の敵兵だけで無く、後続として十人以上の兵士が二人の女を包囲するように集結していた。


 敵兵と共に剣を構えて飛び込んで来た三つ編みの女は、天都原(あまつはら)王家に仕える特殊精鋭部隊、”王族特別親衛隊(プリンセス・ガード)”が一枚、三堂(さんどう) 三奈(みな)


 そしてその後ろで槍を手に取った、長い黒髪を後ろで束ねた女は、同じく六王(りくおう) 六実(むつみ)


 共に天都原(あまつはら)国軍総司令部参謀長、紫梗宮(しきょうのみや)京極(きょうごく) 陽子(はるこ)付きの精鋭であった。


 ザザザッ!


 ザザッ!


 (たちま)ち囲まれる二人。


 彼女達を取り囲む武装した兵士達の数は瞬く間に膨れ上がり、今はその数二十人以上……


 「…………これまでね、なら」


 六王(りくおう) 六実(むつみ)は槍を低く構え、陽光をキラリと反射する穂先を敵兵士達に向けた。


 「そだねぇ、後はちょっとでも()っちゃって後ろの八月(はづき)の負担を減らすっきゃないかぁ……」


 血塗られた剣を握った、散々に返り血を浴びた三つ編みの少女。

 三堂(さんどう) 三奈(みな)は諦めたように笑って剣を構える。


 「ええ、三奈(あなた)もこの際だから”制御弁(リミッター)”外していいけど、私は巻き込まないでよ」


 「うーん、それは六実(むつみ)が私の前にでなきゃいいことだよ」


 「はぁ……」


 「えへへ!」


 生真面目と不真面目、正反対の女二人は恐らく最後と言葉を交わし、お互い命の捨て所だと確認していた。


 「……いざっ!」


 王族特別親衛隊(プリンセス・ガード)が一枚、六枚目、六王(りくおう) 六実(むつみ)が槍を手に覚悟を決め!


 「あはっ、いくよぉっ!」


 王族特別親衛隊(プリンセス・ガード)が一枚、三枚目、三堂(さんどう) 三奈(みな)が心なしか寂しく笑って剣を振り上げた。


 ――時だった


 シュォォーーン!!


 「なっなに!?」


 「うひゃっ!」


 自らの役目の終わりが近いことを自認した女達の目の前が一瞬で白く染まって――


 ――

 ―


 「うがぁぁっ!」


 「ぎゃふっ!!」


 「がふぉっーー!」


 間を置かず、白んだ視界(ゼロ)の景色の中……

 その場には幾つもの悲鳴が重なっていた!


 「……三奈(みな)


 槍を用心深く構えながら六王(りくおう) 六実(むつみ)は、次第に戻る視界の中で同僚の名を呟いた。


 「…………」


 血糊でベッタリな剣を構えた三堂(さんどう) 三奈(みな)も張り詰めた空気のまま、無言で頷く。


 何が何だか解らない状況……


 一瞬で奪われた視界から徐々に復帰していく世界で、瞳を必死に凝らせて槍を握り直す六王(りくおう) 六実(むつみ)と剣を緊張のまま構える三堂(さんどう) 三奈(みな)の前には……


 「っ!?」


 「……六実(むつみ)!誰かいるよ」


 ようやく戻った彼女達の視界の先には独りの男の姿があった。



 「驚かせて悪かったな、俺は……」


 「……」


 ――この男は初見だと


 ――さっきまでの七峰(しちほう)兵士達の中には居なかったと


 それどころか、見た目上は七峰(しちほう)軍でさえ無さそうだ。


 六王(りくおう) 六実(むつみ)は瞬時に思考を巡らせるが……


 「おいおい、物騒だな」


 (おど)ける正体不明男に向けて、依然と槍を構えたままで、六王(りくおう) 六実(むつみ)は殺気を消さない。


 彼女にとって、この状況を安全だと判断するには余りにも場違いな風景が()()に広がっていたからだ。


 「うう……」


 「……」


 倒れた七峰(しちほう)軍の兵士達が散乱し、立っているのは自分達、王族特別親衛隊(プリンセス・ガード)である二人と、目前の正体不明男だけ。


 そして――


 キュイィーーン


 シュゴォォーー


 謎の男の背後には、数人の……

 いや、”数体”の得体の知れない影が三つ!


 二メートルはあろう人型の影……


 キュイィーーン


 シュゴォォーー


 そう、人型……


 一目見て理解出来る。


 決して”人”では無い存在が、

 関節の隙間などからピコピコと何色もの光を明滅させて、おかしな音を漏れさせてい異形が……


 ()()に存在したのだ。


 ――”鋼鉄(はがね)”の……兵士?


 頭部に赤く光る二つの円形のモノは、この異形の双眼なのだろうか?


 六王(りくおう) 六実(むつみ)は目前の怪異を考察しながら槍を突き出す。


 「珍妙な……何者!」


 緊張感を保ったまま、いや(むし)ろ敵兵に囲まれていた時よりも険しい表情で六王(りくおう) 六実(むつみ)は槍を突き出すが……


 「おぉっ!!」


 彼女の相棒である三堂(さんどう) 三奈(みな)は剣を下げてすっかり戦意を置いて、興味本位のキラキラした瞳と驚きの声を漏らしていた。


 「こ、答えなさいっ!」


 六王(りくおう) 六実(むつみ)は相変わらず能天気な相棒に内心、(いら)(いら)しながらも、槍先を更に男に向けて突き出した。


 「お?お?いや、ちょっと待てって、俺は別に敵じゃ無い……てか、これは機械化兵(オートマトン)っていって俺の造った……」


 「……機械化兵(オートマトン)


 慌てた様子で、敵意は無いとばかりに両手を万歳する男を注意深く見ながら、槍を構えた六実(むつみ)はその”異形”を更に注意深く観察する。


 「そうそう、俺はちょっとな、お前らの主人、紫梗宮(しきょうのみや)京極(きょうごく) 陽子(はるこ)殿に会いたくて遠路はるばる”恵千(えち)”からやって来た……だからその物騒な(モノ)を下げてくれ」


 「…………」


 六王(りくおう) 六実(むつみ)は臨戦態勢のまま、再び考える。


 ――”恵千(えち)”?


 ”恵千(えち)”とは旺帝(おうてい)領内の半島にある僻地の地名だ。


 ――東の最強国”旺帝(おうてい)”絡みで異形の兵士、機械化兵(オートマトン)?と若い男……

 ――それにあの”右目”は……


 六実(むつみ)は何度も目前の男と後ろの異形に対して交互に視線を移していた。


 ――年の頃なら陽子(はるこ)様と変わらないくらいの男で、あの右目の光……

 ――眼鏡越しに見える僅かに鈍い光りを放つ右目は恐らく……”義眼”


 「隻眼で、異形の兵士を従えた若い男……つまり貴方は……」


 六王(りくおう) 六実(むつみ)の中で知識と情報が繋がってゆき、やがてそれはピタリとパズルのピースが()まるようにある結論に辿り着く。


 「つまり貴方は旺帝(おうてい)の……」


 「おおっ!旺帝(おうてい)の”独眼竜”!!穂邑(ほむら) (はがね)じゃないのぉ!ねぇ?ねぇ?六実(むつみ)!そうだよね?ね?」


 「…………三奈(みな)


 自身の台詞尻を強引に奪ったばかりか緊張感も無く、半ば有名人にあったミーハーのように騒ぐ同僚。


 そんな三堂(さんどう) 三奈(みな)を呆れた様に一瞥してから、六王(りくおう) 六実(むつみ)は油断なく問いかけた。


 「敵で無いとは?旺帝(おうてい)の貴方がどういうつもりですか、穂邑(ほむら) (はがね)!」


 そして殺気を(まと)った穂先をグイッと突き出す!


 「いや、だから先に槍を……」


 「(かつ)ての”旺帝(おうてい)二十四将”に最年少にして名を連ねし”独眼竜”は確か、失脚した旺帝(おうてい)の前女王である”黄金竜姫(おうごんりゅうき)”……燐堂(りんどう) 雅彌(みやび)の騎士だったと聞いていますが……」


 「へぇ、博学だねぇお姉さん……まぁな、とりあえず天都原(あまつはら)一と評判の美姫”無垢なる深淵(ダークビューティー)”に会わせてくれよ、話はそれからだ」


 穂邑(ほむら) (はがね)と呼ばれた右目の光りが少し鈍い義眼の若い男は緊張感無く笑うと、


 パチンッ!


 指を鳴らして、その場に膝を折った。


 「っ!?」


 「わぉ!」


 殺気の残る相手の前にて、異国の男が取った大胆な行動に二人の”王族特別親衛隊(プリンセス・ガード)”は意表を突かれる。


 ブゥゥーーン…………


 ブゥゥーーン…………


 ブゥゥーーン…………


 さっきの指音が男の指示であったのだろう。


 男の後ろに控えていた機械化兵(オートマトン)と呼ぶらしい異形の赤い双眼から不気味な光は消えて、それらは微動だにしなくなっていた。


 そして(くだん)の人物自身は……


 両手を万歳して頭の後ろに組み、地に両膝を着いたまま、降伏の意思を露わに、さも平然と無防備に身を晒す。


 「旺帝(おうてい)の”黄金竜姫(おうごんりゅうき)”、燐堂(りんどう) 雅彌(みやび)の使者として来た穂邑(ほむら) (はがね)だ。天都原(あまつはら)国軍総司令部参謀長、紫梗宮(しきょうのみや)京極(きょうごく) 陽子(はるこ)殿に目通り願いたい!」


 そしてそう言って、旺帝(おうてい)の”独眼竜”、穂邑(ほむら) (はがね)という男はニヤリと不適に微笑(わら)ったのだった。


 「ふふふ……」


 「……」


 「……」


 両手は万歳で膝立ちという、誰がどう見ても情けない状態で……


 第十九話「”(あかつき)”最強部隊?と(はがね)の協力者?」後編 END

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