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魔眼姫戦記 -Record of JewelEyesPrincesses War-  作者: ひろすけほー
王覇の道編
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第十一話「混迷する?六大国家会議」後編(改訂版)

挿絵(By みてみん)

 第十一話「混迷する?六大国家会議」後編


 「ペリカ・ルシアノ=ニトゥ!」


 ここは戦場で戦闘はまだ終わっていない。

 だからこそ、俺は内心の心の動揺をおくびにも出さないで冷静に問いかけ続ける。


 「ふっ……」


 目前の赤い石榴の唇が怪しげに角度をつけた。


 トン!


 「お、おいっ!?」


 天井を見る俺、その顔を挟むように床に手を着いた彼女の両肘が、ゆっくりと腕立て伏せでもするかのように曲がり……


 ――ちょちょちょ、ちょっとぉぉ!……


 紅蓮の美姫の美貌が降りてきた。


 「なんのつもり……」


 内心ではこれ以上無いくらいに焦りながらも、表面上の俺はそれを冷静に……


 「臨海(りんかい)王、いいえ、鈴原……最嘉(さいか)……いいわ、あなた凄くいい」


 ――は?


 紅蓮の美姫は、俺の唇と彼女の朱い石榴のような唇の……

 息が触れるくらいの距離で紅玉石(ルビー)双瞳(ひとみ)を揺らせて囁いた。


 ガタンッ!


 「!?」


 少し離れたところで何者かが席を立つ音が聞こえた。


 「ふふっ……」


 チラリと、一瞬だけ、紅蓮の双瞳(ひとみ)がそれに対して視線だけ移動し、直ぐに俺の顔に戻って来る。


 ――そして、


 ――そし……


 ――


 ―


 ……………………触れた。


 「むっ……うぅ……」


 朱い妖艶な唇、それが俺の口に触れ、そのまま貪るように何度も何度も抱擁して奪う。


 「くっ……はっ!」


 ――熱い……何て熱い口づけだ……まるで……炎のような……接吻(ベーゼ)……


 さっき、向こうで響いた音の主は解っている……


 顔が動かせなくて、確認しなくてもそれが誰なのか……


 ――俺には解っている


 ――だが……


 「は……む……ん……んん……」


 紅蓮の美女は俺を貪り続け……俺はそれに翻弄されていた。


 陽子(はるこ)がそれを……


 俺をどんな瞳で見ているのか……


 そんな事を気にしながらも、その時の俺は紅蓮の美姫が強引に与える熱い接吻(ベーゼ)を享受し、脳髄が痺れて……いたのだ。


 「…………」


 「……うっ……は……」


 そして、熱い……熱い唇は情熱的な抱擁とは真逆にそっと優しく離れた。


 「……なんの……つもりだ」


 「……」


 女は答えない。


 「勝者の気まぐれかよっ長州門(ながすど)焔姫(ほのおひめ)っ!」


 俺の苛立ちを含んだ問いかけに……


 「…………」


 紅蓮(あか)い美女はゆっくりと、心持ち頬を朱に染めて、俺に紅玉石(ルビー)双瞳(ひとみ)を絡ませる。


 「勝者?ふふっ……真実をねじ曲げて勝ちを拾う趣味はないわ」


 「…………」


 やはり、陽子(はるこ)と同じだ……

 同じ……異質なほど魅入らされる双瞳(ひとみ)……


 「残念だけどここまでね……でも、いいわ、”強敵(あそび)”よりももっと興味深い”焦がれる男(アモール)”に出会えたから」


 「お前……」


 深紅の髪の女は、その後直ぐに俺の言葉を待たずに、スッと立ち上がる。


 「……」


 同時に俺の腹の上から圧迫感と、実のところわりと感触の良かった肌が遠ざかる。


 「賛成よ」


 そして、視線を会議の面々の方へとに向け、そうとだけ宣言した。


 ――くっ!


 俺もその女の背後で、未だ鈍痛のする右膝を庇いながらゆっくりと立ち上がる。


 突如立ち上がって宣言する女に、一部始終を興味深く見ていた面々が注目していた。


 「なんのことだ?……焔姫(ほのおひめ)よ」


 六大勢力のひとつ、”(あかつき)”最大の権勢を誇る”旺帝(おうてい)”の燐堂(りんどう) 天成(あまなり)が面々を代表するように訪ねた。


 深紅の髪の女は石榴の朱い唇の端を上げて”ふふん”と笑う。


 「っ!」


 燐堂(りんどう) 天成(あまなり)が口元のヒゲに手をやり、顔を(しか)めて女を睨んだ。


 「……」


 「……」


 ”句拿(くな)”の柘縞(つしま) 斉旭良(なりあきら)も、”可夢偉(かむい)”連合部族王、紗句遮允(シャクシャイン)も、無言のプレシャーでそれに続く。


 ”七峰(しちほう)”の神代(じんだい)六花(むつのはな) (てる)という少女は……

 オロオロと紅蓮(あか)い女と厳めしい男共の間で視線を何度も往復させて狼狽えている。


 そして……


 そして、”天都原(あまつはら)”国王代理、京極(きょうごく) 陽子(はるこ)は……


 「…………」


 俺が最も気になる暗黒の美姫は……


 深淵の冷たい双瞳(ひとみ)で、紅蓮(あか)い女では無く、俺を見据えていた。


 ――陽子(はるこ)……


 「何のことだと問うている、長州門(ながすど)焔姫(ほのおひめ)!貴様、我々が黙っていてやれば、余りにも勝手が過ぎるのではな……」


 「野暮ねヒゲ、我が長州門(ながすど)臨海(りんかい)臨海(りんかい)王……いえ、“最嘉(さいか)”をこの”七大”国家会議に歓迎するって言っているのよ、お解り?」


 「ヒゲ……だと……」


 俺の勝手知らないところで、またもや話題は当事者を置いてきぼりに、絶賛!爆進中だ。


 「このっ小娘!」


 「なにかしら?ヒゲのおじさま」


 またもやり合い始める長州門(ながすど)と”旺帝(おうてい)”の支配者達。


 これでは最初と何ら……


 「………………」


 ――くっ!


 (きょう)(ごく) 陽子(はるこ)の俺に向けられる闇の絶対零度な視線は継続中で……


 ――さ、最初より悪化してるっ!?


 俺はもうどうして良いやら……


 「あっ?あぁぁぁっーーーーーーーーーーっっ!!」


 と、空気が嫌な緊張感で最高域まで張り詰めた時だった。


 突如、室内に響き渡る、可愛らしくて場違いな少女の叫び声……


 てか、緊迫する空気をぶち壊す、見事に間抜けな声だ。


 「あ、あ、あなたっ!も、もしかして、朔太郎(さくたろう)くんにも”口付け(そんなこと)”したんじゃないでしょうねっ!ああっ!この色魔!泥棒猫っ!猫女っ!なっなっ……にゃぁぁーーーっ!!」


 ちょこんとした可愛らしい鼻と綻んだ桃の花のように淡い香りがしそうな優しい唇。

 毛先をカールさせたショートボブが愛らしい容姿によく似合っている少女。


 大きめの潤んだ瞳は少し垂れぎみであり、そこから上目遣いに他人を伺う様子はなんとも男の保護的欲求がそそられる魅力がある……はずだった、控えめで大人しげな少女が……


 ――そっちが地かよ!ってか、”にゃーー”って意味不明だし、猫は(むし)ろ”猫かぶり”のお前だろう、六花(むつのはな) (てる)とやらよ!!


 「どうなのよっ!この色魔っ!」


 「”七峰(しちほう)”の神代(じんだい)よ、黙れ!今話しているのは我だ!」


 「ふふ……あははっ、ちょっと驚いたけど、そっちの方が良いわよお嬢ちゃん、で(わたくし)、強ければ誰でも良いっていうような軽い女じゃないわ……ふふふ、ねぇ最嘉(さいか)ぁ」


 傍らで立ち尽くす俺の首に、とてもあの拳を繰り出す腕とは思えない白く華奢な両腕を絡ませて、余裕で妖艶に微笑んだ石榴の唇を寄せる紅蓮(あか)い女。


 「いやっ!ち、違うってこれは!はる?陽子(はるこ)っ!!俺はぁぁっ!!」


 慌ててそれを振り払って、俺はテーブルで佇んだままの黒い装いの美少女に向けて叫んだ。


 「…………」


 「って無言!?無視ですかっ?はる、はるさぁぁーーんっ!」


 ”六大国家会議”改め”七大国家会議(仮)”の場は……


 俺の予想とは全く違った意味で、大いに大荒れだった。


 第十一話「混迷する?六大国家会議」後編 END

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