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魔眼姫戦記 -Record of JewelEyesPrincesses War-  作者: ひろすけほー
独立編
46/336

第三十三話「最嘉と好まざる奥の手」前編(改訂版)

挿絵(By みてみん)

 第三十三話「最嘉(さいか)と好まざる奥の手」前編


 「それで……この娘はどういった娘なのかしら?」


 京極(きょうごく) 陽子(はるこ)がウェーブのかかった美しく輝く黒髪を優雅に掻き上げながら問いかけてくる。


 「さっきの話で大体の事は察しがつくだろ?それ以上は国家機密だ」


 俺はさして隠す必要も無いが、答える義務も無いのでそうはぐらかした。


 「……」


 「……」


 ――ごめんなさい!嘘です、ホントは怖くて誤魔化してます!ごめんなさい!!


 「へぇ…………最嘉(さいか)の大切な(ひと)?」


 俺のパニック状態の胸中を察したかのような冷たい視線……


 「は……はぁ?なに言って、さ、さっきのはあくまでも雪白(こいつ)を引き留めるための……」


 ――いつものように茶化して俺の反応を楽しんでいるのか?


 ――それとも真剣(マジ)モノの……不機嫌??


 俺は昔からよく知る、暗黒の美姫の心中を(はか)りかねていた。


 「…………最嘉(さいか)


 陽子(はるこ)の漆黒の双瞳(ひとみ)……

 視線を絡め取られ、魂が引きこまれそうになる奈落の……


 「?」


 ――その深淵の果てで、頼りなげに揺れる……なにか?……なんだ?


 京極(きょうごく) 陽子(はるこ)との付き合いは長いが、彼女のこんな……なんていうか、自信を喪失したような頼りなげな光は初めてだ。


 「そ、そんなわけ無いだろ、雪白(コイツ)は……って、ええっ?」


 「……」


 陽子(はるこ)の唐突な言葉に、再度言い逃れしようとする俺の袖口を”ちょん”と摘まんで俯く純白(しろ)い少女。


 久鷹(くたか) 雪白(ゆきしろ)の白い頬はほんのり朱に染まり、やり場が無さそうに白金(プラチナ)双瞳(ひとみ)を伏せていた。


 ――なんだなんだ?この”白金(プラチナ)娘”……ヤケにしおらしくて、可愛い……


 「最嘉(さいか)っ!」


 「うっひゃいっ!!」


 突然大声で名を呼ばれ、俺は陽子(はるこ)の前で直立不動になった。


 「……だいたい……理解(わか)ったわ……じゃあ”白金娘(コレ)”は処分ってことで良いかしら?」


 何が”だいたい”理解(わか)ったというのか……

 そう言うが早いか、両手の指に装着した異質な指輪を雪白(ゆきしろ)に向け(かざ)陽子(はるこ)嬢。


 キィィィーーーーーーーーン


 陽子(はるこ)の両手の指に装着された”九個”の指輪から、なにやら怪しいオーラが溢れている?


 「処分ってなに?なに?なにするつもりですかっ!?陽子(はるこ)さんっ!!」


 「……」


 ――無言っ!ってか無視!?


 「お、お前……(はる)……ちょっと、それって神話の……」


 ――いやいや、しっかりしろ俺!災厄の魔獣?十二邪眼のバシルガウ?そんな与太話、きっと気のせいだ……


 京極(きょうごく) 陽子(はるこ)の白魚のような指に装着されているのは”十戒指輪(クロウグ・ラバウグ)”。


(あかつき)”の古代史文献に登場する”戒めの指輪”で、昔、俺が彼女に無理矢理プレゼントさせられた……


 十個の指輪、宝石の類いが装飾されていないシンプルなデザインの指輪。


 素材がそれぞれ違う、五対で計十個の指輪だが……だが、その佇まいが普通では無い代物。


 陽子(はるこ)が現在その指に着けているのは九個?……一つ足りないな……っていいや!今はそんなことより!


 キィィィーーーーーーーーン


 ――いや、だとしても……そんな怪しい伝説(おとぎばなし)が現実に存在する訳が無い!


 「……」


 ――けどっ!


 「まてまていっ!良い訳ないだろ!なにしてんのっお前!?」


 俺は陽子(はるこ)(かざ)した両手のうち片方の手首を掴んで強引に下げさせていた。


 「……ちょっと!」


 そのまま俺の顔を不満そうに見る”無垢なる深淵(ダークビューティー)京極(きょうごく) 陽子(はるこ)


 ――いや(はる)よ、止めるだろう普通……


 「…………さいか?」


 そして、何故か頬を染めたままその様子を見守る”純白の連なる刃(ホーリーブレイド)久鷹(くたか) 雪白(ゆきしろ)


 ――それから、純白(しろ)いお前っ!いつからそんな乙女チックになったんだよ……


 「最嘉(さいか)!」

 「さいか?」


 二人の見目麗しき乙女が俺の名を呼ぶ。


 「……ふぅ」


 ――ったく、一体どういう状況だ……


 ツッコミたい気持ちを抑えつつ、陽子(はるこ)雪白(ゆきしろ)をあきれ顔で眺める俺は、取りあえず攻撃的で直接的に害のある陽子(はるこ)の方を向いて牽制する。


 「…………………………冗談よ」


 ――()(なが)っ!?……ってか、全然目が本気だったろうがっ!


 「……」


 「なにかしら?」


 「いや、なんでもない……デス」


 しかし当然ながら、俺にはそこにツッコむ勇気は無かった。


 「で?」


 再び問いかけてくる陽子(はるこ)


 「……」


 とは言え、先ほどと変わらず俺は明確な返事を返すつもりは……


 スチャッ


 「ゆ、雪白(ゆきしろ)!!久鷹(くたか) 雪白(ゆきしろ)南阿(なんあ)の将軍で現在(いま)は我が臨海(りんかい)の客将だって!」


 「……」


 陽子(はるこ)は再び雪白(ゆきしろ)に向けていた両手の指輪をすっと静かに降ろした。


 「冗談よ……」


 「……」


 ――いや……だからそれのどこら辺を信じろと?


 俺は冷や汗を(ぬぐ)いつつ、暗黒姫様の俺をからかう調子がいつもより数段攻撃的だと感じていた。


 「只の客将って訳じゃないでしょう?……最嘉(あなた)にとって」


 「うぅ……」


 ――そこはどうあっても見過ごしてくれない訳か……


 陽子(はるこ)の美しい眼差しが刺すように俺を見ていた。


 返答に俺は頭を抱え、当の雪白(ゆきしろ)は耳まで真っ赤にして俯いている。


 「……いや、つまりな……えっと」


 「さっきの貴方の庇い方、”あんな”場違いで外道、卑劣で不快極まりない方法を選択したのだから、それなりの答えを聞かせて貰えるのでしょうね?」


 「げ、外道……」


 そこまで言うか?

 てか、京極(きょうごく) 陽子(はるこ)嬢はかなりご立腹のようだった。


 「私……多少なりとも傷ついたのよ?」


 「……」


 それは言葉通りの瞳……


 陽子(はるこ)の暗黒の魔眼が少し揺れているのが解る。


 ――駄目だ……俺はこういう風に陽子(はるこ)に言われてしまっては、洗いざらい話すしか無い


 つまり……


 京極(きょうごく) 陽子(はるこ)がこんな風に執拗に糾弾して来るには勿論それなりの理由があった。


 南阿(なんあ)の王、伊馬狩(いまそかり) 春親(はるちか)との交渉……あれからここに至るまでの経緯、相応の理由だ。


 ーー

 ー



 戦後処理……俺の提案した内容で大方の交渉が終わり、伊馬狩(いまそかり) 春親(はるちか)達が此所(ここ)を去ろうとした時だった。


 「なに呆けてるがじゃ、(ゆき)っ、直ぐに貴様(きさん)南阿(なんあ)へ撤収……」


 「っ!」


 「……」


 華奢な肩をビクリと震わせる雪白(ゆきしろ)


 そして彼女の隣で、その時が遂に来たか……と、その流れを苦く受け止める俺。


 「……」


 ――そうだな……それはやはり避けられないか


 正直、雪白(ゆきしろ)を人形扱いするような輩と国には返したくはないが……


 今更当たり前だが、雪白(ゆきしろ)はもともと南阿(なんあ)の将軍、伊馬狩(いまそかり) 春親(はるちか)の家臣だ。


 日乃(ひの)攻防戦以降、一連の流れと、実は春親(はるちか)の密命で臨海(りんかい)に居た彼女なわけだが、取りあえず片が着いた今となっては母国に帰還するのは当然だろう。


 ――もし、雪白(ゆきしろ)本人がそれを望んでいないとしても……


 ――たとえ俺がそれを好ましく思っていないとしても……


 流石にその常識に抗うとすれば準備が足りなさすぎる。


 今は目を(つぶ)って流れに任せるしか……


 「貴様(きさん)の役目は終わりじゃき……命令じゃ、久鷹(くたか) 雪白(ゆきしろ)、供に南阿(なんあ)に帰還する……」


 ――ちっ!この場は仕様が無い


 そもそも当の雪白(ゆきしろ)の心をいまいち掴みかねている上に、雪白(こいつ)は今まで通り命令には絶対服従するだろうし……い?


 「ああぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーっ!!」


 「なっ!」

 「ぬっ!?」


 ――な、なんだぁ!?


 俺も、春親(はるちか)も無愛想禿げも……陽子(はるこ)まで、その奇行に絶句する!


 「ああぁぁーーーーーーあぁーーーーあぁぁーーーーっっ!!」


 そこには、突然火がついたように奇声を発する純白(しろ)い少女の姿!


 「な?(ゆき)っ!?貴様(きさん)は……な、南阿(なんあ)へ返ると……」


 南阿(なんあ)の王たる伊馬狩(いまそかり) 春親(はるちか)も……咄嗟に対応に窮していた。


 「ああぁぁーーーーーーあぁーーーーあぁぁーーーーっっ!!」


 拘束から解放された両手で自身の両耳を塞ぎ、けたたましいサイレンのような声を上げ続ける奇特な少女……久鷹(くたか) 雪白(ゆきしろ)


 それは、自身の絶対支配者で逆らうことの出来ない伊馬狩(いまそかり) 春親(はるちか)の言葉が最後まで完成出来ないよう、妨害する行為。


 聞こえない命令は無いのと同じ……という稚拙な……


 「こ、子供かよ……」


 しかし絶対的不変な幼児最強理論の実践でもあった。


 「(ゆき)っ!!貴様(きさん)っこのっ……(めい)れ……」


 「あぁぁーーあぁぁーーあぁぁぁぁーーーー!!」


 「……」


 ――いや、しかし……この”駄々っ子戦法”……これはかなり恥ずかしい有様だが意外と有効かも?


 俺はその痴態を眺めつつそんな事を考える。


 「くっ……人形がっ!」


 てっきり感情の無い道具だとばかり思っていた雪白(ゆきしろ)による、まさかの駄々っ子戦法に、傍目にも対応に苦慮する南阿(なんあ)の英雄。


 今まで雪白(かのじょ)春親(あるじ)に対してこういう抵抗をしたことは無かったのだろう。


 だから、今のところ春親(はるちか)は怒りよりも戸惑いが先に立っているようだ。


 ――この機を逃す手は無いな……


 俺は即時決断する!


 正直使いたくない手ではあったが……


 本来なら準備をちゃんと整えて、外交交渉を織り交ぜた、何らかの手を打つつもりだったが……


 ――緊急事態だ……仕方ない……


 俺は本当に、真に不本意ながら……


 覚悟を決めざるを得ない状況の中、すぅっと息をのむ。


 「雪白(ゆきしろ)南阿(なんあ)には戻らないし既に春親(おまえ)の部下じゃ無いぞ!」


 ”鈴原 最嘉(オレ)”は、そう言いながら二人の間に割り込んだのだった。


 第三十三話「最嘉(さいか)と好まざる奥の手」前編 END


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