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魔眼姫戦記 -Record of JewelEyesPrincesses War-  作者: ひろすけほー
下天の幻器編
192/329

第十四話「徒花不実(あだばなふじつ)」前編(改訂版)

挿絵(By みてみん)

 第十四話「徒花不実(あだばなふじつ)」前編


 ダダッ!!


 久井瀬(くいぜ) 雪白(ゆきしろ)の駆る白馬は彼女諸共に白き閃光と化す!


 「い、イケる!!久井瀬(くいぜ)さんなら、あの”最強の武神”木場(きば) 武春(たけはる)にも勝てるっ!!」


 第一砦から見上げる形で戦況を覗っていた内谷(うちや) 高史(たかふみ)は確信する。


 まさかの旺帝(おうてい)軍守備側による逆落(さかお)としの奇襲を受けて窮地に陥っていた臨海(りんかい)軍だが、それを率いる将、木場(きば) 武春(たけはる)を華々しく一騎打ちにて討ち取れれば流れは一気に変わるだろう。


 それほどまでに、あの木場(きば) 武春(たけはる)という男は敵味方に(かか)わらず影響を与えるほどの”大英傑”なのだ!


 「うおぉぉっ!!」


 対して――


 閃光となって迫り来る白金(プラチナ)の騎士姫を迎え撃つ英傑は、馬上から手にした槍を……


 ブゥォォォン!


 地面スレスレ、下段から一気に振り上げて迎撃の態勢をとった!


 ガッ!ガリガリガリ!!


 ――否!


 地面スレスレどころか槍先は地面に激突し、地表を削りながら土塊(つちくれ)諸共強引に振り上げられ――


 バフゥッ!!!


 破裂したかの如くに砂と砂利が一気に巻き上がって、それは騎士姫の視界を遮り飛び散った!


 「……」


 しかし騎士姫、雪白(ゆきしろ)は些かも怯むことなど無かった。


 愛馬である白馬”細雪(ささめ)”の手綱を僅かに動かし、土塊(つちくれ)の煙幕を最小限の動きで躱して、そして必殺の抜刀を準備する。


 ガゴォォォォッ!!


 「っ!?」


 突如!回避したはずの砂埃から現れる巨大な”黒塊”!!


 巻き上がる砂塵の中から、人の頭部ほどの岩塊が泥を纏って雪白(ゆきしろ)の視界を黒く塗り潰す!!


 ――う、うそだろっ!?


 その瞬間を見た内谷(うちや) 高史(たかふみ)は驚愕した。


 あの木場(きば) 武春(たけはる)という男は(わざ)と地面に接するように槍を振り回した。


 それは雪白(ゆきしろ)の超速剣を防ぐための煙幕……では無く!


 地中の岩を削り出して、それを”凶器”として利用するためだったのだ!!


 「に、人間(わざ)じゃないっ!!」


 砂や小石程度ならともかく……


 地面に埋没したあの大きさの岩を!槍の一振りで苦もせず削り出し”(つぶて)”と化すなんて!?


 そして、それだけでも脅威的な膂力と驚愕するのに……


 シュパァァ!


 雪白(ゆきしろ)の顔面を襲った凶器は真っ二つになって墜ちる!


 「こ、こっちもこっちで”バケモノ”だっ!!」


 完全に不意を突かれて飛来したはずの岩塊を(やす)く斬り落とす剣の極み!


 ――っ!!


 唖然とするばかりの内谷(うちや) 高史(たかふみ)ほか敵味方の兵士達だが……


 「お!おおぉぉぉぉっ!!」


 ”化け物”二人の本当の戦場はここからっ!!


 そうだ――


 地面に埋没した岩を槍の一振りで苦もせず削り出し”(つぶて)”と化した木場(きば) 武春(たけはる)は、それだけでも脅威的な膂力と驚愕するのに……


 この男の振るった槍先はそれでも全く速度を落とすこと無く、雪白(ゆきしろ)の絶技に斬り落とされた岩塊に殆ど遅れること無く彼女を襲っていたのだ!


 自然の岩塊を凶器の”(つぶて)”に変え、続く本命の凶刃に対する露払いとして利用する。



 ()わば居合い斬りとは早抜きの銃手(ガンナー)の如きものだ。


 間合いで抜かれたら最後、防ぐのは困難極まりない。



 つまり先行した(いし)(つぶて)の一撃は、雪白(ゆきしろ)出端(でばな)の”一刀”を消費させ無防備に……


 (やっ)(きょう)を消費し、(カラ)になった回転式銃(リボルバー)薬屋(チャンバー)が回転し再び弾が装填される隙を狙った、居合い使いの虚を突く木場(きば) 武春(たけはる)の豪槍だ!!


 「く!久井瀬(くいぜ)さんっっっっ!!」


 絶対必中!


 回避不可能な一撃を前に内谷(うちや) 高史(たかふみ)は叫んでいた!


 「……」


 しかし白金(プラチナ)の美少女は――


 カッ!


 自らの細首を刈りに迫る死の穂先を……


 振り切ってしまったはずの抜き身の刀身、その柄尻を巧みに操り軽く接触させて見事に豪槍の穂先を上方へと弾き逸らしたのだった。


 「お!?……おおおおおおっ!?」


 そして今度は!槍を振るった木場(きば) 武春(たけはる)自身が思わず感嘆の声を上げる。


 飛来する岩塊を斬り落とすため振り下ろした刀身では対処に間に合わない、避けられる間合いもとうに過ぎている……


 ――これぞ絶対必中!!


 誰もがそう確信した瞬間に、彼女は握った柄尻を(もっ)て首の皮数センチに迫った敵の穂先を(はじ)いて()なし、軌道を逸らせたのだ!!


 「……」


 それは角度とタイミングが数ミリ、数十分の一秒……


 その”どれ”を損ねても為し得ない”神業(かみわざ)”だった。


 ザザッ!!


 ズザザァァッ!!


 そのまま、お互いが馬を交差させ、入れ違って……


 二人は再び対峙する。



 「人の子か?……”終の天使(ヴァイス・ヴァルキル)”」


 志那野(しなの)の”咲き誇る武神”が問いかけに、


 「……」


 (りん)(かい)の”終の天使(ヴァイス・ヴァルキル)”は無言だった。


 「まあ良い。いや良いな……見えぬ刃、超高速の剣技……実に手強いぞ」


 しかし討ち漏らした結果とは裏腹に、必殺の一撃を回避された”武神”の大きめの口は(まこと)に屈託無く、好奇心に心躍らせる童子の如き純粋なる笑みを浮かべていた。


 ――


 ――な、なんだよ、これ?こ、こんな異次元の一騎打ちって……


 「とても……勝敗予測のしようが無いじゃないか」


 第一砦より傍観していた臨海(りんかい)軍参謀、内谷(うちや) 高史(たかふみ)は頭を抱え立ち尽くす。


 ――撤退か?進軍か?


 自身の器量を遙かに越える戦場に、彼は決断を出来ずにいたのだ。


 「……」


 ダダッ!!


 だがそんな事はお構い無し、再び駆け出す白い閃光!!


 「(おう)よっ!そうでなければなぁぁっ!!」


 そして迎え撃つ”武神”!


 「ちょっ!ちょっと!久井瀬(くいぜ)さんっ??」


 内谷(うちや) 高史(たかふみ)の苦悩を()()に、異次元の一騎打ちは再び幕を開ける!


 「背筋が凍るほどの殺気!これぞ戦場の醍醐味だっ!!」


 馬上で木場(きば) 武春(たけはる)の豪槍が豪快に掲げられ、()()へ舞い込む小柄な”白金(プラチナ)の騎士姫”を一気に押し潰そうと待ち構える。


 「……」


 そして久井瀬(くいぜ) 雪白(ゆきしろ)の閃く白刃が白馬と共に瞬時に間を詰め、”最強の武神”が首筋に……


 ――キンッ!


 「なにっ!?」


 「っ!?」


 しかしそれを遮ったのは……第三の剣!!


 「……貴様?」


 瞬時に動きを止めた両雄……


 「……っ!?」


 いや、特に雪白(ゆきしろ)の端正な顔の眉間に僅かに影が落ちていた。


 同時に――


 白馬の上で僅かに右肩を下げた様に見える彼女の右手の甲には、鮮やかな(あか)が一筋流れ伝って滴る。


 「く、久井瀬(くいぜ)さんっ!?」


 驚きに声を上げる内谷(うちや) 高史(たかふみ)だが、この距離ではどうすることも出来ない。


 「…………」


 「誰だ?貴様」


 美少女と偉丈夫、馬上の英傑二人は同じ方向を向いていた。



 ――二人の戦士が対峙する中央辺りの僅かに奥……



 「神速応変の出口は一瞬の間に在り……」


 ――ふらりと人影が在った


 「打抜きの生命は電瞬に在り。変幻自在の妙、剣禅一味の無応剣を至極とす」


 いつの間に……というにはあまりにも当然の如く。


 「”武”に(まみ)れて尚、執着無し」


 そこには旺帝(おうてい)一般兵士の格好をした初老の男が独り……


 「何処(いずこ)にも心を(とど)めぬ”無の領域”……」


 その人物の素性は――


 「せ、せんせい……」


 白金(プラチナ)の騎士姫が口から発せられていた。


 「我が求道を体現せし唯一の剣……久鷹(くたか) 雪白(ゆきしろ)。なれど」


 ――ザシッ


 旺帝(おうてい)兵士の鎧を身につけてはいるが正体(なかみ)は別物!


 ――ザシッ


 寡黙に先を見据えて歩を進める男の両の(まなこ)には感情の(たぐ)いがまるで薄弱で、


 ――ザシッ


 如何(いか)にも独特の剣気を纏う、この初老の男を現す言葉が在るなら……


 「貴公……武芸者か?」


 そう、この雰囲気、常に生死を纏う緊張感……


 それは”()の武に(こだわ)り、()の武に取り付かれた者”の総称。


 いま、木場(きば) 武春(たけはる)が察した通り……


 その男は”武芸者”であった。


 ――ザ……


 そして物騒な面魂の武芸者の足が()()で止まる。


 「…………久鷹(くたか) 雪白(ゆきしろ)……剣禅一味、無応の剣に()のような駄剣では成らぬ」


 感情の薄弱な(まなこ)をした初老の武芸者は、白馬の上にて抜き身の白刃を下げた白金(プラチナ)の騎士姫の前にて、手にした”一振り”の刀を差し出して言った。


 ――納刀(のうとう)したままの刀


 後に解るだろう、この”居合い刀”が所持する性能(スペック)は……



 切先から峰側の棟区(むねまち)まで2尺3寸5分、


 それは身長百六十センチ中頃の雪白(ゆきしろ)に最も適した長さといえる。


 そして、その刀の最たる特徴である六百グラムを切る驚異的な軽さ……


 鞘内のやや青みがかった刀身はどのような金属でどのような加工を付加されているのだろうか?


 軽量化の代償である脆さと引き換えに”有り得ない”ほどの切れ味であるという。



 「…………」


 刀を差し出された馬上の騎士姫は、雪白(ゆきしろ)は無言のまま馬上にて男を見下ろしていた。


 「手に取れ、久鷹(くたか) 雪白(ゆきしろ)。貴様が持つべき剣ぞ」


 「…………」


 更に責付(せっつ)く男を見据える白金(プラチナ)双瞳(ひとみ)は、対面の最初こそ動揺の色を見せていたが……


 現在(いま)は目前の武芸者以上に感情の無い光りを宿していた。


 「(めい)は”川蝉(かわせみ)”。貴様用に(あつら)えさせた剣だ。剣禅一味の無応剣、神速応変の至極を良しとするならば、この”(とう)”しかあるま……」


 「久井瀬(くいぜ)!」


 「?」


 「久井瀬(くいぜ) 雪白(ゆきしろ)っ!!この名とこの”白鷺(しらさぎ)”は!さいかに貰ったわたしの一番大切なものだからっ!!」


 刀を差し出す武芸者の言葉を遮って、白金(プラチナ)の軽装鎧を身に(まと)った少女は普段の彼女からは想像できない感情むき出しでキッパリと拒否する!


 陶器の如き白き肌の頬を感情の朱に染め、彼女は(かつ)ての師に断言する!


 「せんせい、わたしはもう南阿(なんあ)の”純白の連なる刃(ホーリーブレイド)”じゃない!臨海(りんかい)の……鈴原(すずはら) 最嘉(さいか)の……」


 髪といい瞳といい肌の色から鎧の色まで白金(プラチナ)……


 (とろ)ける様なプラチナブロンドと輝く銀河を再現したような白金(プラチナ)の瞳が美しい美少女、久井瀬(くいぜ) 雪白(ゆきしろ)


 その希有な容姿と感情薄いことから、(かつ)ては人形だと揶揄された”輝く純白の騎士姫”が生まれて初めて自分で選択したのは……”それ”なのだ!


 あの時……


 謎の包帯男、幾万(いくま) 目貫(めぬき)なる怪人に面白半分に揶揄され提案された名。


 それでも……


 ――”他人(ひと)の作ったルールで勝手に不自由気取って死んでんじゃねぇ!”


 白金(プラチナ)の騎士姫、彼女が最も大切にする男性(ひと)の言葉。


 (すず)(はら) 最嘉(さいか)と出会わなければ彼女は人形のままだった。


 ――さいか……


 ――あの男性(ひと)と過ごせなければ、わたしは人形のまま


 ――生きる”まねごと”をして人形のまま壊れていくだけだった……


 だからこそ!


 ――だから、わたしは……


 ――ただの雪白(ゆきしろ)は、それを忘れないために名前はこれで良い!


 それは雪白(ゆきしろ)の人生で彼女自身が初めて選んだ大切な大切な”自分”


 ”久井瀬(くいぜ) 雪白(ゆきしろ)”……


 それは彼女にとって一番大切な男性(ひと)(すず)(はら) 最嘉(さいか)と並んで生きるための新しい生命(いのち)そのものだった。



 「貴様の呼称などどうでも良い。詮無き事柄だ。それよりも貴様は、この林崎(はやしざき) 左膳(さぜん)が見い出し“至高の剣”なれば、()れを成す“(とう)”を備えるだけ、只々(ただただ)そう言う道理ぞ。その無我に汚色を垂らすなど(もっ)ての外、愚の骨頂」


 「っ!」


 ――汚色!!


 武芸者、林崎(はやしざき) 左膳(さぜん)による、彼女の生命(いのち)を汚す言葉で雪白(ゆきしろ)双瞳(ひとみ)に殺気が宿る!


 だが――


 「其所(そこ)っ!」


 バシ!


 「っ!」


 咄嗟に手にした刀を振るおうとした雪白(ゆきしろ)の右手を、左膳(さぜん)が手にした刀……


 納刀したままであった”川蝉(かわせみ)”なる刀の鞘尻で抑えられる!


 「くっ……」


 雪白(ゆきしろ)の美しい眉が(ひそ)み、剣を持つ右手は元在った位置からピクリとも動かない。


 「先に我が太刀如きに後れをとったのがその証拠!非を認めるのだ」


 ――先に我が太刀如きに後れを……


 つまりは先ほど割り込みによる一撃の負傷……


 林崎(はやしざき) 左膳(さぜん)が抑えた雪白(ゆきしろ)の手の甲にまで先ほどの傷から赤い血が伝い、白い肌を滴っていた。


 「…………」


 険しい表情(かお)のままそのまま、(かつ)ての師を睨む雪白(ゆきしろ)だが――


 現に木場(きば) 武春(たけはる)との一騎打ちに割り込んだ林崎(はやしざき) 左膳(さぜん)の一刀は彼女の二の腕を掠り、利き腕は負傷していた。


 「(わらべ)の如く聞き分けが無い様なら、力尽くで連れ帰るが……」


 カチャリ……


 鬼気迫る刀気を纏って林崎(はやしざき) 左膳(さぜん)は、彼女の利き腕を押さえた刀の鞘から(かわ)(せみ)を抜き放……


 「待て待てまてぇぇーーいっ!」


 睨み合っている師弟……


 しかし()えて、その氷の殺気が渦中に躍り込む人馬があった。


 「我が一騎打ちを邪魔するとはどういう了見だ?謎の武芸者よっ!」


 言わずもがな……


 それは、槍を手に馬に跨がった偉丈夫、木場(きば) 武春(たけはる)だ!


 「貴公が何処(どこ)の誰かは知らんが、ここは引いてもら……っ!?」


 師弟の間に勢いよく割って入る馬上の武春(たけはる)に向け、地上から武芸者の感情の無い眼光が向けられていたが――


 「…………匹夫が」


 キン!


 武春(たけはる)言葉(セリフ)途中にも鍔鳴る甲高い金属音っ!


 それは”剣聖”と呼ばれし程の武芸者、林崎(はやしざき) 左膳(さぜん)が居合いの一刀だった!


 「おっ!?」


 棒立ちに見えた武芸者の、体幹に一切のブレ無く放たれる超速の薙ぎ払い。


 それは(かつ)て――


 ”南阿(なんあ)三傑”と称えられた”武”の織浦(おりうら) 一刀斎(いっとうさい)に次ぐ実力の剣士、


 南阿(なんあ)でも指折りの剣術使い吉良(きら) 貞泰(さだやす)にして……


 ――”刀身は(おろ)か抜刀の気配さえ捉えられなかった”


 と言わしめた必殺の剣技だ。


 ――――が!?


 ガシィィン!!


 地上から馬上に在る自分の首を刈りに来た、視認出来ぬ程の高速な刃を、


 木場(きば) 武春(たけはる)は右手の豪槍にて撃ち落とし、そしてそのまま槍の穂先を逆に物騒な(つら)(だましい)の武芸者が首元へ突きつけていた!


 「…………」


 「…………」


 そのまま高低差のある位置で鋭い眼光を交わす二人の武人。


 「……………………見えぬ……はずだが?」


 暫し睨み合った後に、


 ダラリと右下に抜刀した刃を下げた”武芸者”林崎(はやしざき) 左膳(さぜん)が感情薄い表情(かお)のまま問うた。


 「だな、殆ど見えぬぞ?……だが、戦場では予想外の力が宿ることもあるっ!」


 受ける馬上の”武将”木場(きば) 武春(たけはる)は、大きな口をニッカと開き自信たっぷりに答える。


 「予想外の力だと?」


 林崎(はやしざき) 左膳(さぜん)は今回、初めて僅かに表情を見せ、


 「………?」


 そして同じく、その光景を間近で観察していた白金(プラチナ)の騎士姫も不思議そうな瞳になる。


 ――修練を極めて得し剣技に応戦するだけの事象……


 ()()に多少なりともの興味が生まれたのだ。


 「(おう)さっ!!」


 ヒュバッ、ヒュバッ――


 ニカッと太陽の笑顔で手にした豪槍を一振り!二振り!


 ――ブゥォォォン!


 派手にグルグルと振り回してからピタリと脇に挟んで停止、颯爽と構える英傑!


 「そ・れ・は・なぁ!それは……”(かん)”だぁぁっ!!」


 「…………」


 「…………」


 神速の絶技を修める事のみ、死生を代償にしてまで血の修練で研磨してきた二人の剣士を前にして――


 旺帝(おうてい)最強の武将、


 志那野(しなの)の”咲き誇る武神”……


 木場(きば) 武春(たけはる)は大いに自信たっぷりに戯れ言にしか思えない理由を言い放ったのだった。


 第十四話「徒花不実(あだばなふじつ)」前編 END

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