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白い読点

作者: 炉谷義露

 諸氏は白点を知って居らっしゃろうか。読点の中を白く抜いた物であり、句点を読点の形状に改めた物であるとも云い得る。

 其の効果は、セミコロンを和訳為た物であると云えば、近いであろう。読点より強く文章を切り、句点より弱く文章を限る。此の妙技は私を酷く悩ませた。

 私が此れを初めて見た時、手に持って居た書籍は二葉亭四迷の『浮雲』であった。私は惑うた。隠された日本語の約物であった。

 此の時から私は約物に疑念を抱き始めたのである。

 日本語に見られる約物は句点、読点、括弧、疑問符、感嘆符、ダーシ、三点リーダが多い。私は此れを見詰め直し、疑い始めた物が疑問符と感嘆符であった。

 疑問符と感嘆符は舶来の物である一方、日本語に染み込んだ約物であろう。然し乍ら、疑問符と感嘆符を用いた場合、空白を続ける習わしが在る。此れであった。果たして此の空白は何であろうか。

 私は思った。

 疑問符と感嘆符が敷く点はピリオドである。ピリオドは和訳を経て、句点と為る。句点は空白を伴うか、否である。

 其れでは何が空け果せて居るか。其れは他国の約物であると云う事であった。此れは如何に。言い知れぬ愉快ならざる感情が、私の頭脳を圧迫為る。

 約物は文字に非ず記号である。記号が増え行く中、其れは文学であろうか。然う、文学である。然し乍ら記号で行う表現は余りに淡泊であろう。否、表意文字と記号の何が違おうか。文章である以上は安易に記号を用いず、文章を以て説明を為さねば好けない。然し乍ら、冗長であろうか。抑々である、何の故に他の約物が染み込まなかったか、果たして約物とは何か。文章が読み易ければ良いか、否、然し乍ら……。

 煩悶を続け乍らも私は黙然と読書を続けた。

 然う為て居ると、私は図らず思った。日本語には疑問形が存在為る。

 私が今、確然と言い放ち得る事は、疑問の重複である。日本語には疑問形が在る。疑問形を用いた上で疑問符を連ねる文章は多い。此れは誤謬であろう。

 其れと同時に、日本に於いて疑問符を発音記号と捉える向きが有る。此れは既に疑問符に非ず。疑問符は死んだ、然うに違いない。

 然う為ると、私が私へ語り掛ける。

 其れでは感嘆符は何か、ダーシは何か、果たして短剣符とは何か。長音符、重字も約物であろう。日本と他国の約物は何が違う。約物は記号であろう、然し乍ら何れも文学である。撞着は要らぬ、文学に於ける約物とは何か……。

 未だ約物との闘争は終わらず、私は然し乍らを繰り返し、唸り続けて頭を抱える許りであった。

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