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成り行きだけどいいですか?

 成り行きで付き合った彼女……春日真魚かすがまおさん。歳は俺と一緒の同学年だ。ただ、眼は死んでいる以外は普通に美少女だ。


「なぁ。東条とうじょう。お前の彼女の春日さん、めっちゃ美少女だけど死んだ魚の眼をしていないか?」


 おい!! 西川にしかわ!! 俺はそれを認めた上で付き合ってるんだから百も承知だよ。なんて言えないから無難に返しとく。


「なぁ……死んだ魚の眼って可愛いだろ? 俺はそう思うよ。ほら、お前もよく見てみろよ? 可愛いぜ」


「えっ!? お前大丈夫か?? なんか悟りを拓いてないか!?」


 失礼な奴だな。悟りなんて付き合ってもう3日目だから当然拓いたよ。春日さんは周りの人間に嬉しそうに俺と付き合い始めた事を語るし完全包囲網を建てられてるんだよ!! 見た目が可愛いで付き合ったらとんでもない地雷だったよ。この娘!!


「あら。東条くん。何のお話をしているの?」


 と思ったら俺のマイハニー登場。


「春日さんが美少女だって話だよ」


「まぁ! そうなんですか? 光栄です。ありがとうございます」


 ……本当に笑った顔は可愛いよ。まぁ……彼女の性格はまだ完全に把握してないけどさ。


 少し性格にも難アリな気はするがちょっと眼が死んでいるくらいで別れることもないとは思うんだよな。だから別れた前の彼氏って奴はなんで1週間で別れたんだろ?


 まぁ成り行きで付き合った俺が思うのも何だけど。3日間付き合って見て、初めて感じた彼女に対する怖さとかは薄れていってるし。







 さて。次の日の休日ですが。休日にデートと言えばカラオケやショッピングとかを想像するだろう? 俺もそう思ってた。だってここ……


「ねぇ。なんでデートなのに魚市場なんだ?」


 しかも早期朝5時に待ち合わせ。俺、その為に起きたの4時起きだぞ!? 有り得ねぇよ!!!!


「だって魚をこんなに見られるお店ってここしかないじゃないですか?」


「いや!? 水族館とかがあるだろ!!!!!!」


 いやいや! 朝5時に待ち合わせでデートってだけでおかしいのに魚見るのに魚市場っていろいろおかしい!! そんな女、中々居ねぇよ!!!!


「だって! 死んでいる生きの良い魚は水族館では見られませんよ!?」


「そこ重要なの!?」


「重要ですよ!! 私の同族がこんなに見れて安心するんですよ」


 同族とか!! 完全に眼の事じゃねぇか!!!! 逆に安心出来ることに不安を感じるよ!!!!


 そんな彼女……もとい春日さんと共に魚市場で色々な魚を見に回った。マグロとかあってちょっと美味しそう何だけど。見てると腹減ったし。


「腹減らない?」


 色々歩き回ったしそう聞くと春日さんは「そうですね」と微笑んだ。うん。やっぱり可愛い。眼の光彩はないけど。


「朝食は海鮮丼食べましょうか。そこのお店の海鮮丼美味しそうですし」


 そうそう。早朝5時から来てるからお腹減ったと言っても朝飯になる。だいたいデートで待ち合わせが朝5時なのが本当におかしいだけなんだけどさ。


 まぁ、そこら辺は別にどうでもいいとして1つ俺はツッコミたい事がある。それは……


「普通に魚食えるんかいっ!!!!!!」


 あれだけ同族だの死んだ魚の眼が可愛いだの言ってた奴が普通に魚食えるのかよ!!!!!!!!


「それとこれとは話が別ですよ?」


 キョトンとした顔で当然の様に言う春日さん。


「いやいや! だって魚市場で魚買わなかったし、てっきり食べるのはダメなのかと!!」


「だって、今買っても持って帰るには今からはきついですし、送るにしても近くの魚市場で送って貰うのも送料が無駄ですし。それに私は魚嫌いとは一言も言ってませんよ」


 ……ぐぬぬ。その通り過ぎて言い返せねぇ。ぐうの音も出ない程正論だと、人間言い返せないのな。


 なんて会話しながら近くで海鮮丼とか出してる店に行き、店員さんに海鮮丼を2つ頼む。しばらく何でも無い話をしていると海鮮丼を店員さんが持ってきた。そして今の時間は7時15分。本当に朝食の時間だ。


 やはり取れたての魚は美味しくて、新鮮な素材ってやっぱり凄いなと感心しながら料理を噛み締める。俺、いくらが凄い好きだからいくらも入ってる海鮮丼最高!


 だなんて思いながら前の春日さんを見ると春日さんは上品に海鮮丼を食べていて食べる姿も様になっていた。……やっぱり春日さんって育ちが良いのかな? 見た目の容姿も眼が死んだ魚の眼をしている以外、かなり良いし。


 まぁでも眼の他にも性格にも難有りなのは否めないけど。


 そしてなんだかんだ。魚市場でやっぱり魚を見て回って過ごしてお昼くらいになったら、流石に魚市場をこれ以上回るのは俺的にはキツイので春日さんには悪いが街中の映画館に行こうと誘った。少しごねるかと思いきや春日さんは「今まで私の行きたい所に付き合って貰ったから良いですよ」とあっさり承諾を得た。


 街中の映画館に着くと色々なジャンルの映画が放映している。


 ……春日さんは何のジャンルが好きかなぁ? やっぱり女の子だし恋愛映画? それともホラーとかが好きなのかな?


 なんて気を使って悩んでいる俺の横で春日さんはキラキラといつもは眼の中に光彩なんて消え失せている眼の光がこの時ばかりはあった。


 春日さんがそんなに眼を輝かせる程みたい映画ってなんだと思い見るとその映画のタイトルは「漁船VSサメのジョージ」とパッと見、意味のわからない映画だった。


「これにしましょう。4DXもあるし」


「えっ!? まぁ……いいけど」


「じゃあ、私チケット買ってきますね!!!!」


 と俺の気が変わらない内にとでも思っているのか高速でチケット売り場に行っていた。……あのバイタリティを眼の光に宿せば良いのになぁ。


 という事で映画を見ていると本当に訳が分からなかった。サメのジョージは人と会話出来るし、途中漁師の誰得な凄いアクションあるし、最終的に漁船と和解するし。何故これを4DXでやろうと思ったのか理解出来ない作品だった。


「この作品、面白かったですね!!」


「う……うん」


 正直理解は出来なかったが4DXだしとりあえずアトラクション気分で見れたのでそこまで退屈な作品にもならなかった。ってのが本音だけどね。まぁ、春日さんが楽しいならいいや。好きな事には普通の女の子と同じだし、春日さんも案外普通なんだなってわかったし。


 なんて思っていると映画館のロビーで誰かに呼び止められた。


「ねぇ。春日さんでしょう? 何、春日さんデート?」


 呼び止めた男は爽やかそうなイケメンだった。って待て待て。もしかしてこの男……


「えーと。何の用です? 貴方とは前に別れましたよね?」


 春日さんも関わるなと言いたげな表情。……やっぱり一週間で別れたという春日さんの元カレかぁ。まさか映画館で出くわすとわ。


「いや、春日さんみたいに眼は死んでるし、性格に難アリな人がまた彼氏出来るとはね。その彼とは長持ちするといいね? 俺は無理だったけど」


 ……はぁ。ここまで言われたせいで、隣の春日さんは少し涙目だし。


 正直俺も春日さんの内面を俺より見ていないコイツにも腹がたった。


「おいおい。言いたい放題だね。アンタ。春日さんは確かに眼は死んだ魚の眼みたいにソックリだし性格に難アリかも知れないけどな。慣れればそんなことないんだよ!!」


「……はっ?」


 春日さんの元カレは唖然としたように口を開けたまんま固まっている。


「それにな。好きな事にはちゃんと眼の光彩は戻るし、普通の女の子みたいに楽しめるんだよ! 少なくとも俺は春日さんと付き合えてラッキーだったぜ」


 ドヤ顔でそう言い放つと春日さんの元カレは「ふーん。それはそれはお幸せに」と嫌味たっぷりに捨て台詞を吐いて俺達の前から去った。


「……半分私の事ディスってましたよね!? ディスってましたよね!?」


「いやー。あれは言葉のアヤって言うか……」


「でも、さっきはありがとうございました。正直、見直しました」


 顔を赤らめて恥ずかしそうにする春日さんは本当に可愛いかった。やっぱり死んだ魚の眼してるけど。







 夕方になり、俺は春日さんとまた明日と別れる間際に彼女を呼び止めた。


「春日さん」


「……なんですか?」


 春日さんは怪訝な表情をしつつも俺の次の言葉を待ってくれていた。


「別れよう。まだ1週間経ってないけどさ。こんな短期間で春日さんの性格とかわかる訳ないだろ」


 そう告げると春日さんは以外にも微笑んでいた。なんだか初めから分かっていた様な表情にも見えた。


「そうですよね。やっぱり1週間な上に私が今、この人に付き合って貰わなきゃ2度と次は無いつもりで無理矢理付き合って貰ったので、やっぱりこんな関係……不毛ですよね」


「違う!! だから、友達から始めよう!!」


「……えっ?」


 鳩が豆鉄砲でも食らったような表情をする春日さん。そんな春日さんを安心させるように落ち着いて冷静に俺は言う。


「だって、付き合うならちゃんと春日さんの事を知った上で改めて俺から告白したいなって思ったんだ。……ダメかな?」


 そう。こんな成り行きで付き合って、1週間で付き合うか付き合わないか決めろだなんて俺には無理だ。だからそう思ってそう決断したんだ。


 すると春日さんはぷっと可愛らしく笑った。


「なんですか。それ。良いですよ。そうしましょう。友達になった上で改めてお付き合いの告白お願いします。どうやって振るか考えておきますね」


「えっ!? 振るの!!!!!?」


「ふふっ……冗談ですよ」


 だなんて言われて、ホッと安心したのと同時に俺は改めて死んだ魚の眼をした春日さんと友達からスタートした。

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