守るべき者
第1章俺が守る
長良川の戦いの後濃姫は自分の部屋に閉じ籠っていた。
「濃の様子はどうだ?」
信長は濃姫づきの侍女に聞いた。
「まだお部屋から出てきませぬ」
「そうか」
信長はうつむいた。
その夜信長は藤吉郎の部屋を訪ねた。
「濃が部屋から出てこんのだ」
信長は悲しそうに言った。
だめだ完全に途方に暮れている。
これじゃ信長の気が参りそうだ。
そういや俺は父親とはそんな仲が良くなかったな。そんな俺にしてみれば何か羨ましい。
「どうした?」
信長は疑問そうに俺の顔を覗きこんだ。
「あぁすいません。ちょっと父のことを思い出してて」
「父の?お主の父はどんな男だったんだ?」
「俺は父とはそんな仲が良くなかったんです。何かこう俺とは真逆何ですよだからいつも意見の違いでぶつかって。だから少し濃姫が羨ましいです」
信長は俺の顔を見つめていた。
俺はハッとして
「そういう意味じゃないですよ!素直に父親の死を悲しめるっていう」
「分かっている。だが悲しみすぎだ」
そうか?普通の反応だろ。まぁその内出てくると思うんだけど。
俺は
「大丈夫じゃないですか。その内整理がついてまた外に出てきますよ」
「そんな簡単な話ならばお主を頼りなどしないわっ!」
信長は怒鳴った。
まぁそれもそうか。
でも俺にどうしろと?
いくらなんでも長良川の後濃姫がどうなったか何て習ってないしな。
信長は続けた。
「このまま濃が出てこなかったら俺はどうすれば良いんだ…」
信長ってたまにこういう所見せるんだよな。
たまに本当に信長なのかって思うときもあるしな。
信長はこのまま泣き出しそうな勢いだ。
あぁもうっ!
俺は半分キレ気味に
「分かりました一緒に考えましょう」
「そうかありがたい」
本当に単純だなこの人 。
結局昨晩眠れなかった。
信長に朝まで濃姫を外に出すための作戦会議で拘束されたのだ。
でも結局決まった作戦は単純なものだった。
それは俺がどうにか濃姫様を説得して外に出すから後は信長が散歩に連れてってどうにかするというなんとも投げやりな物だった。
俺は濃姫の部屋に向かった。
俺は侍女に
「濃姫様は?」
と聞いた。
「まだお部屋のなかに」
「そうか」
俺は濃姫の部屋の襖の前に立ち。
「濃姫様っ!出てきて下さいっ!外で信長様がお待ちです」
そう叫んだ。
返事は無い。
まぁそんな簡単では無いと思っていたが。
俺はなおも叫んだ。
「濃姫様っ!濃姫様っ!」
「うるさいっ!わらわは外にはでとうないっ!」
中から怒鳴り声が聞こえてきた。
よし、作戦通りだ。
これで濃姫様は俺の声を無視できない。
「何故ですか?何故濃姫様は出たくないのですか?」
返事は無い。
俺は続ける。
「お父上が亡くなったことは確かに悲しいと思います。でもそこまでかたくなに外に出るのを拒むことないじゃ無いですか」
「そっそれは…」
中から小さな声が聞こえた。
やはりそうか予想通りだな言いにくい事なんだろうだとしたらその理由は一つだけだ。
「信長様じゃ怖いんですか?信長様が果たして自分を守れるのか否か」
俺は遂にその言葉をはっした。
「そっそんな事は無い。わらわはただ…」
図星だな。
俺は声を弱めた。
「俺はいつも信長様の背中に大海を見ていますそして信長様は俺達を運ぶ大船。信長様について行けば大丈夫、世界を見れるいつもそう思っています。確かに今はまだ小国尾張の一大名です。でもいつかこの日本を統一し世界へと歩を進めるのです」
「まるで未来が見えている様な口振りだな」
濃姫は言った。
「はい。俺は信じてますから信長様は絶対に天下を取る絶対に志半ばでおれたりなどしない、絶対に…」
そうだ大丈夫だ俺がここに来たのはきっと歴史を変えるためなんだきっと…
その時襖が開いた。
「殿はどこだ?」
濃姫様は呟いた。
「はいっ!こちらです」
俺は笑った。
信長は外で落ちつかない様子でうろちょろしていた
俺は信長に
「信長様っ、濃姫様をお連れしました」
「お濃…」
俺は信長に近づき
「じゃあ後は…」
と耳打ちした。
「わかっ、分かっている」
信長は小声でそう答え濃姫に近づき
「お濃行くぞ」
そして濃姫の手のひらを取り城下に向かって行った
大丈夫かぁ本当に?いいや後をついて行ってやるか
もう随分と無言で城下町を歩いている。
ヤバイよこのままじゃ本当に部屋から出てこなくなるよ。
その時信長が口を開いた。
「良い天気だな」
は?いや確かにそうだけど。
信長は続ける。
「こんな日はやはり散歩が一番だないや昼寝も良いな」
何で天気について語るんだよ。
戦には強いのに女には本当弱いな。
だがその時
「フフっ、ハハハッハハッ、アハハハっ」
濃姫が笑った。
濃姫は笑いながら
「何故天気について語るのですか殿は?」
信長にそう言った。
笑ってるさっきまでものすごい仏頂面だったのに。
何か持ってるな信長は。
信長は
「ハッハハッ、そっそうだな何故だろうな?」
興奮気味に答えた。
まぁ結果オーライだな。
もう大丈夫か。
俺は城に戻った。
あれから信長と帰蝶は談笑しながら歩いていた。
「お濃、すまなかったな」
信長は言った。
「何がです?」
「良いのだ。そなたの父を俺は守れなかった、近づくことすら出来なかった。それどころか落ち込んだそちに何かすることすら出来なかった…」
信長はうつむいた。
濃姫はそんな信長に
「わらわは不安でした。今まで守ってくれた父が死にその代わりを殿が出来るのか?ですがあの者の言葉で気がつきました、わらわは殿についていって良いのだいやついていくべきだと」
濃姫は信長を見つめた。
「お濃…これからは俺が守る」
信長は呟いた。
第2章裏切りの予兆
「やはり殿は王の器ではない」
柴田勝家は呟いた。
「あぁそうじゃ」
そう答えたのは林秀貞。
「だがどうするというのだ?」
さらに林通具。
三人は今勝家宅で信長を廃する秘密の会議中である
夜なのに部屋には明かりがろうそく一本しかないので薄暗い。
「やはり織田家の当主は信行様だけじゃ」
勝家は言った。
三人は信長反対派で密かに信長の弟信行の擁立を企てている。
「だがどうやって?」
秀貞は呟く。
その問いに通具が答える。
「謀反しかあるまい」
「謀反!?」
二人は驚いた。
通具は続ける。
「だがそれしか方法は無かろう」
三人は黙りこんだ。
その静寂を破り勝家は口を開いた。
「まずは信行様を説得しよう…」
三人は静かに頷いた。
信行は前当主信秀の晩年の居城末森城を居城としていた。
「何?わしが兄上に謀反をおこし織田家の当主に?」
信行は驚いた様に言った。
勝家は昨晩の会議が終わるとすぐに信行の元へ向かった、そして朝方末森城に到着した。
「はい、そのとうりにございます。織田家の当主は信行様しかおりません」
勝家は答えた。
「わしとて兄上のやり方は気に食わん。だが謀反などと」
「家臣の多くが信行様が家督を継ぐことを望んでおります」
信行は困ったような顔になった。
「本当に家臣の多くがそう願っているのか?」
「はいそのとうりにございます」
信行は一瞬躊躇ったが決意を固めた。
「分かった、やろう。だが、やるからには絶対に成功させろ」
勝家は満足そうに
「はっ、しかときもに命じます」
そう言って去っていった。
勝家が去った後信行は
「兄上、貴方もここまでだ」
そう言って笑った。