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あなたへ...2015年12月

泣かせてはいけない

作者: あずま

電話の向こうでおばちゃんが泣いていた


おばちゃんに贈った洋梨のお礼の電話だったのに


時間がたったら楽になるかと思ったのに


ちっとも変わらない


毎日寝る前になると


あなたのことを思い出して泣いてしまうって


おまえは


80歳を越したおばちゃんを毎日泣かせているんだよ


保育所が開く7時より前に仕事に出かけるお母さんが


働き続けるには


誰かにあなたたちの面倒を見て貰わなくてはいけなくて


近所の人が良いと評判のおばちゃんを頼った


優しいおばちゃん


縁もゆかりもないあなたたち兄妹を


暑い日も寒い日も


大切に大切に育ててくれたおばちゃん


あなたに箸の持ち方を教えてくれたよ


あなたに包丁の持ち方も教えてくれたよ


小学校から帰ってきたら


毎日音読も聞いてくれたよ


運動会には毎年早起きしていなり寿司を作ってくれたよ


やさしいやさしいおばちゃん


もう80歳になるのに


あなたに先に逝かれて


毎日泣いているって


あなたが逝ってからもう7ヶ月がたつのに


ああ


やっぱり


あなたは逝ってはいけなかったんだよ


あなたを預け始めた頃


人見知りをして


火のついたように泣いたあなたを


一日中あやして


それこそ倒れそうになるまで


だっこしてくれた優しいおばちゃん


その優しいおばちゃんを


毎日泣かせているなんて


それでも死を選ぶほど


あなたは苦しんでいたから


きっとおばちゃんが


年を取って頼りなくなったおばちゃんが


あんなに苦しむなんて気がつかなかったんだよね


もし


もし


これから苦しみを終わらせようとする人がいたら


考えて欲しい


あなたが苦しむのは


あなたが優しいからだよ


優しくなければそれほど苦しむことはないから


その優しいあなたが選ぶ道は


たぶん


あなたが傷つけたくない全ての人を傷つける道だよ


お願いだから


気がついて


分からないけど


きっときっと道はある


お願い


死なないで

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― 新着の感想 ―
[一言] かなり自分を削って書いた詩ですね。生きるために文学は必要だと私は考えます。もしよかったら私の小説を読んでください。お願いします。
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