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南溟の艦隊  作者: 飛龍 信濃
トラック沖海戦 レヴァイアサンの宴
9/66

第8話トラック沖海戦 艨艟達の咆哮

盛大な艦砲戦まだまだ続きます

その瞬間、「サウスダコタ」を衝撃が2回続けて襲いかかる。

「やられた・・」

ギャッチ艦長がそう呟いた。

「サウスダコタ」は艦の前部と後部に連続して、「大和」の46センチ砲弾を喰らったのだ。

「大和」からは先ほどの被弾による煙で見えなかったが、後部にも被弾したのだ。

この被弾でも、「サウスダコタ」あ奇跡的に機関や主砲などの重要区画(バイタルパート)を破られることは無かった。

「被害僅少!」

その報告がダメコン長から入る。

「まだやれるな」

「はい、やれます!」

ハルゼー長官が言うと、ギャッチ艦長任せてください。そう言いたげに言った。

そして30秒たったのか、今度は主砲射撃の衝撃で艦が震える。

その咆哮は「サウスダコタ」が、まだ戦闘力を失っていないことの証明であるかのようだ。

それに遅れて、敵戦艦も射弾を放ってくる。


「また遅れたか!」

松田艦長はそう悔しそうに言った。

「大和」は先に斉射に移行したが、回数で敵艦が猛追してきたのだ。

「大和」が負けるという事は無いだろうが、下手をすれば相当な損害を被ってしまうだろう。

「次どこまで、被害を与えられるか・・・」

松田艦長は、ぽつりと呟いた。

「本艦は負けはしない。そうだろ?」

高須長官が、突然そう言った。

「そうです。本艦に負けはありません!」

それで気合を入れ直したかのように、松田艦長が咆哮した。

そして先に、敵の砲弾が9発「大和」の周りに落下してくる。

今度はさすがに、全弾回避という訳には行かなかった。

松田艦長たちの目の前に、強烈な閃光が煌めく。

敵弾は、「大和」の前部甲板に命中したのだ。

それによって、「大和」は錨を吹き飛ばされ、大きなシアーを持った艦首は、敵戦艦に向いていた右舷側のそれが衝撃で、大きくめくれ上がっていた。

しかし、水面下は無傷であり浸水も発生していない。

「大和」にとっては、かすり傷でしか無かった。

その衝撃から「大和」が立ち直った頃、敵艦の周囲に水柱が立ち上る。

先程放った第六斉射が、着弾したのだ。

そこまでくれば、一斉射につき1発の命中弾を期待できる。

そして今度も期待に違わず、敵艦に火柱が立ち上る。

「敵艦中央に命中弾1!」

見張り員から、報告が飛び込む。

うまく行けば、機関を破壊できる。

皆そう思ったが、敵艦の動きに変化は無かった。

当たりどころが、よく無かったのか?

そう艦橋要員が思っている間に、敵艦は第六斉射を早くも放つ。

それに数十秒遅れて「大和」も第七斉射を、放つ。

発射の瞬間「大和」を直撃弾命中のそれに劣らぬ、衝撃が襲う。

そして先に、敵艦の射弾が落下する。

今度は、後部に被弾した。

敵弾は、飛行甲板の鋼材を引き剥がし、射出機を弾き飛ばす。

被害はこれだけだが、少しずつ「大和」にも被害が蓄積していく。

そして「大和」の放った第七斉射も、敵艦を包み込むように落下する。


その瞬間「サウスダコタ」は激しく揺さぶられた。

敵の1クラス上の砲弾を2発まともに喰らったのだ。

1発は上手く弦側装甲が持ってくれたが、後部に命中した1発が「サウスダコタ」の破局《カタストロフィ》の序曲だった。

「3番砲塔被弾射撃不能!」

その報告が、砲術から入ったのだ。

簡単に言ってはいるが、「サウスダコタ」の3番砲塔は真上から、46センチ砲を喰らっており、押しつぶされたスクラップとかしていたのだ。

「遂にやられたか!」

ハルゼー長官が、叫び声を上げる。

「まだ2基の砲塔が残っています。幸いにも被害は主砲弾庫に届いてません。これなら、沈没はしません」

「そうだな、ギャッチ艦長。だが追い込まれたことには変わりないだろう」

そうハルゼーが言った瞬間、「サウスダコタ」は残された6門の主砲で砲撃を行った。

まだ致命傷は受けてない。そう思える咆哮だった。


「敵の主砲塔を破壊した模様!」

その瞬間は、艦橋にいたものは皆見ていた。

閃光が上がった、そうおもうと同時に細長い物体が3本吹き飛ばされるのが、見えたのである。

「敵の砲塔を1基破壊した!本艦は戦闘を優勢に進めているぞ!」

そう松田艦長は、艦内放送で全乗員に伝えた。

その瞬間、艦内を歓喜の叫びが覆い包む。

就役したばかりの「大和」が、敵戦艦を圧倒しているのである。

嬉しくないはずが無い。

その証拠に敵艦の砲撃時の閃光が、前部からしか見えない。

打撃を受けたのに関わらず敵は、残った砲を使い「大和」に砲撃をしてきたのだ。

敵の第七斉射が着弾する寸前、「大和」は第八斉射を放つ。


「着弾今!」

「伊勢」の計測員が、そういうのと同時に敵艦の艦上に1つの閃光が上がる。

「行けるぞ!」

そう武田艦長は言った。

「伊勢」が得た命中弾は、「伊勢」からは見えなかったが、炸裂時の衝撃によってコロラドの第4砲塔の砲身を、あらぬ方向に押し曲げ射撃不能に陥らせていたのだ。

「敵戦艦の主砲塔1基破壊した模様!」

敵の射撃時の閃光を見ていた、見張り員が言った。

全部に比べ後部の閃光が少なかったのだ。

そしてその直後「伊勢」は第五斉射を、敵艦めがけて放つ。

射撃速度は、あまり変わらないようだ。

先に敵弾が「伊勢」の周囲に落下するが、立ち上る水柱は3本だけである。

見張り員が言った通り、敵主砲塔を射撃不能に陥らせたのだ。

伊勢は、敵が斉射に移っていないこともあり、4倍もの砲弾を放ったのだ。

敵の射撃精度、は門数を減らされたこともあり先ほどよりも悪かった。

そして「伊勢」の放った12発の、巨弾が着弾する。

今度は艦上から3つの閃光が、起こった。

「伊勢」は3発の命中弾を得たのだ。

1発はそびえ立つ煙突を吹き飛ばし、もう1発は射撃不能に陥っていた第4砲塔を、粉砕する。

そしてもう1発が艦橋上部に命中した。

そしてこれが、「コロラド」に取っての致命傷になった。

その1弾は、「コロラド」の測距儀を吹き飛ばしていたのだ。

これでは、正確な射撃を求めることなどできない。

だが、「コロラド」は引かない。

自身が戦線を離脱すれば、保たれている均衡が破られることがわかっていたのだ。

それに艦の主要区画(バイタルパート)は主砲塔1基を除いて、全て健在なのである。

だから、まだ戦えるとも艦長は考えたのだろう。

事実「伊勢」は目標を変更することなく、射撃をつづけている。

それは全主砲が沈黙したならともかく、3/4はまだ残っているのだから、命中弾を喰らわないとも限らないからだ。

ここは確実に沈黙させる。

そう武田艦長は、考えたのだ。

「少しでも早く、敵を落伍させろ! 早く「日向」の援護に向かうんだ!」

現在「伊勢」の同型艦である「日向」は、同時期に竣工し同程度の戦闘力を持つテネシー級戦艦と対峙していた。

どちらも36センチ砲12門装備であり、一斉射あたりの発射数は変わらなかった。

だがどちらかが、先に斉射に移れば受けた方が叩きのめされる。それが彼女らの攻防性能だった。

12発の36センチ砲弾を立て続けに浴びては、まともに照準を合わせられなくなる。

それに先に、被弾した方が不利になるのは仕方のないことだった。

現に「伊勢」は格上のコロラド級戦艦を、その手数で圧倒したのだ。

それを喰らえば、どっちにしてもタダでは済まないことはよくわかるだろう。

そして「日向」はテネシー級戦艦に先に斉射には入られたのだ。

技量は上かもしれないが、武運が足りなかったのか。

結果「日向」は自身が斉射に移るまでに、5発の36センチ砲弾を浴びた。

それが致命傷になる事は無かったが、「日向」は艦後部に集中的に敵弾を喰らったのだろう。

「日向」の艦後部は業火に包まれていた。

そして「日向」は残った1番〜4番砲塔を用いて射撃を敢行していたが、業火に隣接している第4砲塔の射撃ペースは、かなり落ちていた。

そもそも砲撃をしている事が奇跡なのかもしれない。

そんな妹を窮地から救うためにも、「伊勢」はいち早くコロラド級を、完全沈黙させる必要があったのだ。

そしてその「コロラド」は各砲塔照準によって、射撃を続けていた。

精度は良くないが、たまにひやりとする場面はある。

すでに何発もの36センチ砲弾を浴びせかけているものの、上手く当たってないようだ。

そして「伊勢」第十斉射を放つ。

再び12門の36センチ砲斉射による衝撃が、「伊勢」を襲う。

だが直撃弾命中の衝撃が来ることはない。

もう敵はまともな照準が出来てないらしく、全て明後日の方向に飛んでいた。

しかし「伊勢」の砲弾は確実に敵を捉えていた。

そして第十斉射が着弾した。

その瞬間、敵艦の前部と後部に、直撃弾炸裂の閃光が煌めいた。

それと同時に、細長い筒状の物体が吹き飛ぶのが見えた。

敵艦はなお射撃を敢行したが、着弾時に上がった水柱は1本だけだった。

おそらく被弾と同時に放ったのだろう。

「 敵砲塔は残り1基と認む!」

との報告が射撃指揮所から、飛び込む。

「あと一歩だ。気を抜くな!全力で叩き潰すんだ!」

その艦長の咆哮に合わせたかのように、「伊勢」は第十一斉射を放った。

「くう」

その衝撃に艦長も、苦悶の表情を浮かべる。

「やってくれ」

艦長はたった今放たれた12発の砲弾に向けて、言った。

「伊勢」の妹である「日向」の損害が、そうしている間にも、増加しているのだ。

更に後部に命中弾を喰らった「日向」は遂に、艦首部に装備されている、第1、第2砲塔しか射弾を放っていなかった。

そう先ほどまで射撃を続けていた、第3、第4砲塔が射撃不能に陥ったのだ。

これによって「日向」は主砲火力の3分の2を失ったのだ。

残るは僅かに4門。

敵との門数差は、3分の1である。

これでは、煙路に砲弾が飛び込むなどの僥倖が、起こらない限り逆転は不可能だろう。

そして、いち早く妹を救おうと奮闘している、姉の「伊勢」の放った第十一斉射が、敵艦を覆い包むように着弾する。

そして前部に2つの命中弾炸裂の閃光が、巻き起こる。

そして再び細長い筒状の物体が、吹き飛んだ。

「伊勢」は遂に格上である「コロラド」を沈黙に追い込んだのである。

全砲塔を失った事により、敵艦は艦列から離脱するだろう。

だが致命傷を与え今後帝国海軍に、今対峙している艦が歯向かうことを無くす。

そう武田艦長は考え、「次の斉射まで実行する。あとは敵艦が致命傷を負ったかで判断する」 という命令を下した。

確かにいち早く「日向」の救援に赴きたいが今は、戦略的に考えて帝国海軍に有利になる方を、選択したのだ。

そして「伊勢」は第十二斉射を、これでとどめを刺すとでも言いたげに放った。

そして着弾を迎えた。

今度も水柱が立ち上るが、命中弾炸裂の閃光は見えなかった。

「砲術早く蹴りをつけろ!」

そう武田艦長は、砲術長を怒鳴ったが後部見張り員から入った報告は、それとは正反対のものであった。

「敵艦行き足止まります!傾斜増大中!」

「本当か?」

武田艦長は疑念を込めて聞く。

直撃弾は得られなかった筈だが?そう言いたげだった。

しかし改めて見ると敵艦が、急速に速度を落としているのが見えた。

「おそらく九三式徹甲弾が、水中弾効果を発揮したのでしょう」

「伊勢」の副長が言った。

「そうか。水中弾効果を発揮するところを初めて見たが、外れ弾の立てる水柱と見分けが付かんのは、問題だな」

「ですが、敵艦が速度を落としていれば、それでわかります」

今度は、砲術長が割り込むように言った。

「それはそうだ。目標変更敵七番艦!」

艦長が遂に「日向」を救援すべく命令した。

「伊勢」は妹の「日向」を叩きのめした怨敵を、叩きのめすべく砲塔を旋回させる。

ゆっくりとした動作に、「日向」の仇は絶対に取る。

その意思が感じられる。


「ここまでなのか?」

ここでやられてしまうのか?「日向」の艦橋で艦長石崎昇大佐は、呟いた。

砲戦開始時は互角かと思われたが、敵に先制を許したところから、一気に奈落の底へと叩き落された。

「日向」乗員の技量に絶大の信頼を置いていた、艦長はそれがショックだったのだろう。

「それにしても、まるで落城の様だな」

彼は自嘲するように言った。

「日向」の後部はすでに、業火に覆われており消火も追いつかない。

艦橋にも、その熱が伝わってくる。

艦首部に置かれている2基の、主砲塔は射撃を続けているが、それがいつまで持つか、それも分からない。

このまま「日向」は、業火に包まれて沈む。そう思った時だった。

敵艦の周囲に6本の水柱が立ち上った。

「「伊勢」より無線です!」

艦橋に、無電用紙を持った受信室の報告員が、飛び込んできた。

「読め!」

艦長はすかさず言った。

「我敵六番艦を撃破せり。これより敵七番艦を砲撃す」

興奮気味に報告員が読み終わるのと同時に、艦橋を歓喜の声が包むこむ。

「やった!「伊勢」が来てくれたぞ!」

艦長は、乗員に聞こえるように艦内放送で、言った。

その瞬間、絶望に包まれていた艦内に、希望の光が生まれた。

「日向」は姉の助太刀によって、一応は窮地を脱したのだ。

第8話完

かなりの展開です

さてさて、どうなるのでしょう

トラック沖海戦まだまだ終わりませんぜ

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