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南溟の艦隊  作者: 飛龍 信濃
トラック沖海戦 レヴァイアサンの宴
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第7話トラック沖海戦 艨艟達の初陣

ついに、戦艦たちが話の中心点に!

「着弾今!」

その報告が、「伊勢」の艦橋に入る。

「近2!」

「伊勢」の第五射は、2発が敵艦の至近に落下したのだ。

「一斉打ち方!畳み掛けろ!」

武田艦長が、すかさず命令する。

しばらく、砲弾を放った一番砲への装填が行われる。

その間「伊勢」は完全に沈黙する。

その間にも、敵の修正射が着弾する。

「まだ遠いな」

敵弾は艦の後方のかなり離れた位置に、着弾したのだ。

至近弾炸裂による衝撃すら、感じない。

相手は「伊勢」の格上だが、まだ精度を出せていないようだ。

それよりも早く、「伊勢」が斉射に移れたのは僥倖と言っていいだろう。

これなら30秒に1回の割合で放たれる、12発の36センチ砲弾が敵、コロラド級戦艦を粉砕するだろう。

当初はおよそ50秒に1発の割合だったが、条約期間中に行われた大改装によって、装填時間を大幅に短縮することに成功したのだ。

1発の威力はともかく、670キロもの巨弾を12発一気に打ち込むのだ、防御力が完璧ではない相手ならば、たとえ格上でも数の力で圧倒できるだろう。

「打ち方始め!」

ようやく装填が終わった、一番砲も仰角を掛けられいつでも打てる態勢にある。

武田艦長の下令と同時に、12門の砲口から発砲炎が噴き出す。

それと同時に「伊勢」を今までにない衝撃が襲う。

艦が後ろに押されたのではないか、そう思うほどの衝撃である。

それが、12門を一気に放ったときに来る衝撃である。

「伊勢」が第一斉射を放つと同時に、敵艦もまだ交互打ち方のため4発だが射弾を、「伊勢」に向けて放つ。

「当たってくれよ」

武田艦長がそう呟くのとほぼ同時に、「伊勢」の第一斉射が敵艦の周辺に相次いで着弾する。

すべての砲弾が敵艦の周囲に落下した。

しかし、直撃弾を得るには至らない。だが、射撃精度はこれほど無いほど、いい。

これならば、それほど斉射を行わなくても直撃弾を得られる。

「伊勢」の第一斉射が着弾した少しのちには、敵艦からの射弾が着弾する。

先ほどまでとは違い、艦が揺さぶられる。敵も照準を合わせてきたのだろう。

いくら最初が見当違いだからといって、諸元を修正すれば必ずや当たる。

ただそれが速いか遅いかである。

その点、乗員の技量で勝る日本側が有利なようだ。

「出来るだけ早く命中させろ。速いだけ本艦がやられるリスクが減るぞ!」

「分かってます!もう2〜3斉射で命中弾を出してみせます!」

そう言ったのは、方位盤手である。

彼が、全主砲の発射を司るのだ。

「分かった。敵に先を越されることだけはないようにな」

武田艦長はそう言うと、艦橋に取り付けられている双眼鏡で、敵艦を睨めるように見つめる。

「やはり強烈だな」

主砲斉射に伴う衝撃を受けて、艦長が呟いた。

彼はこれまでも、重巡をはじめとする戦闘艦艇を乗り継いできた、強者であるがそれでもこの「伊勢」の主砲12門による斉射の衝撃は、慣れないらしい。

重巡などとは比べ物にならない、衝撃が襲いかかるのだから仕方ないとも言えるが。

そして「伊勢」の第二斉射が着弾する。

「命中弾1!」

見張り員が、弾んだ声で報告する。

「伊勢」は生涯初めての直撃弾を、得たのだ。

直撃弾は艦前部に生じていた。

だが、艦首部の非装甲部を破壊しただけだった。

もちろん、艦橋からはそんな事は見て取れないが、敵艦がなんの打撃も喰らわなかったかのように、次弾を放った事から、砲塔に打撃を与えるに至らなかったであろう事はすぐに分かった。

今度は、「伊勢」の前方に4本の水柱が屹立する。

つかの間水柱によって、敵艦が隠され見えなくなる。

だが、次の瞬間には再び敵艦が姿を見せる。

「てっ」

砲術長の合図とともに「伊勢」はこの日3度目の斉射を放つ。

再び艦は斉射に伴う衝撃を受け、激しくわななく。

だが、それを意に介さないかのように、航行を続ける。

それに遅れること後、敵艦もさらなる射弾を放つ。

射撃に伴う光量は、先ほどまでと変わらない。

まだ敵は、修正射を放ち続けているのだ。

「着弾今!」

計測係が、着弾時間を言う。

その瞬間敵艦の2箇所から、射撃とは異なる光が発生する。

命中弾が炸裂した瞬間である。

今回の着弾は、艦中央部から後部に集中したようだ。

中央部付近に命中した一弾は、水平装甲を貫通するには至らなかったが、近くに存在した副砲や対空砲を弾き飛ばす。

また後部に命中した一弾は、非装甲部に命中しており大きな破口を穿っている。

そのため、敵艦後部から煙が湧き上がっているのがよく見えた。

だが、主機には被害を与えなかったようで、敵艦は今の打撃がかする傷であるかのように、航行を続ける。

重巡クラスの艦なら数発で、廃艦に追い込む巨砲も若干格上の相手には、なかなか被害を与えられない。

根本的な防御力が違うのだから、当然とも言えるがやはりアメリカ戦艦が頑強なのに変わりはない。

しかし今の命中弾で照準が狂ったのか、次の射弾は1発が「伊勢」の進路上に着弾した以外は、すべてが遠弾になっていた。

そして「伊勢」は第四斉射を、矢継ぎ早に放つ。

もう「伊勢」は敵艦を、圧倒し始めていたのだ。


「一斉斉射始め!」

「大和」艦長松田大佐の声が、艦橋に響き渡る。

「大和」は既に夾叉弾を得ており、あとはそのデータで撃ちまくれば良い、という状態になっている。

敵サウスダコタ級戦艦はまだ「大和」に対して、至近弾を放つ事さえ出来ていない。

日米新鋭艦対決は、「大和」が先手を取っていたのだ。

そして次の瞬間、「大和」は猛烈な発射炎と衝撃に襲われる。

これまでの艦で考えると、直撃弾を喰らったかのような衝撃である。

46センチ9門の斉射は、それほど強烈なものなのだ。

事実公試には、射撃時の衝撃を見るためにモルモットを入れた籠を幾つも甲板上に配置した事があった。

結果は大半のモルモットが内臓破裂や眼球を飛び出させてたりした。

その結果、とても人間がいられる空間ではないことが、はっきりしたのである。

それほどまでに凶悪な、エネルギーを秘めた9発の砲弾が敵艦めがけて、飛翔していく。


「まだ夾叉弾を得れ無いのか?」

第一任務部隊長官ハルゼー中将は、「サウスダコタ」艦長トーマスギャッチ大佐に向けて言った。

「もう少し待ってください。着弾修正を確実に実施してますので、もう数回打てば斉射に移れると思われます」

ハルゼーは焦っていた。

それは、相対する敵一番艦の射弾が着弾した時からである。

事前情報では、敵の新型艦も16インチクラスの主砲と思われるとなっていた。

しかし、ハルゼーたちの目の前に屹立した、水柱も大きさは明らかに16インチを超えていた。

「なんだ!奴らは何インチの主砲を打ったんだ!」

ハルゼーはこの時若干錯乱したようにそう言った。

「おそらく18インチクラスでは無いでしょうか」

ギャッチ艦長が冷静に言った。

ハルゼーはそれを聞いて幾分か、平静を取り戻したようだった。

「ならば先手を取らないとまずいな。敵より先に斉射を放つんだ。いいな?艦長」

「了解です。任せてください!」

そんな会話が懐かしく思えるほど今の「サウスダコタ」の状況は悪かった。

今敵艦は丁度斉射に入った。

その証拠に、艦上に煌めく発射炎の光量は今までよりも大きいものだったのだ。

しかし「サウスダコタ」は夾叉弾どころか至近弾すらも出せていないのだ。

このままだと、口径で一回り大きな敵に一方的に蹂躙される恐れがあったのである。

そして「サウスダコタ」は、再び射撃を敢行する。

「今度こそ」

その呟きがハルゼーから、漏れる。

大艦巨砲主義の信奉者として、負けるわけには行かない。そう言いたげだった。

サウスダコタ級をはじめとする4隻の新戦艦があれば、日本海軍に遅れを取ることは無い。

そう思っていたが、日本海軍はそれらの新戦艦を一撃で地獄に叩き落す事も出来るのではないか?

そう強気のハルゼーに思わせるほどの、強さを持っていた。

特に主砲口径で18インチと思われる主砲弾を喰らったならば、サウスダコタ級と言えども耐えられないだろう。

そして「サウスダコタ」は今、その巨弾に夾叉されたのである。

「サウスダコタ」が先ほど放った射弾が、敵一番艦の周囲に着弾する。

「目標夾叉しました!」

射撃指揮所から待望の報告が、入る。

「次から斉射!」

ギャッチ艦長が、即座に命令を下す。

うかうかしては、敵の巨弾の前にひれ伏すしかない。そう言いたげだった。

「サウスダコタ」は、目標に対し少し遅れる形で、斉射を開始したのだ。


「本艦夾叉されました!」

「大和」艦橋に見張り員と、電探室からの報告が同時に入る。

その頃には、「大和」の第一斉射が着弾する。

「近4遠5!」

観測機から、報告が入る。

「大和」の第一斉射は、敵艦を捉えることなく終わったのだ。

「「加賀」斉射に移行しました!」

後部見張り員から、歓喜の声を交えて報告が飛ぶこむ。

「大和」と前後して、「加賀」も夾叉弾を得ていたのだ。

「加賀」と相対しているのは「大和」と同じサウスダコタ級である。

いくら門数で「加賀」が有利といっても、艦齢が15年に上る「加賀」は老朽化が進んでおり、41センチ砲対応装甲は耐えられるろうが、その他の強度の落ちた部分は予想外の損害を被る恐れがある。

それに相対しているサウスダコタ級も16インチ砲に対応した防御力を持っているし、しかも2〜3年程度しか艦齢を重ねていないはずだ。

老朽化が進んで無いという面では、「加賀」が不利であった。

だが「加賀」は、たった今敵艦に先んじて、斉射に移った。

これならば、「加賀」の搭載する10門の41センチ砲が、敵を手数で圧倒するだろう。

「みんな良くやってます。これなら勝てるでしょう」

そう各艦の報告を受け取り、言ったのは参謀長の小林謙吾大佐である。

「ああ、この調子なら勝てるだろう。今の所敵に遅れをとった艦は無いようだからな」

高須四郎第一艦隊長官は、そう言うと「大和」と相対している敵戦艦を、睨めるような視線で見る。

貴様らに負けはしない。そう言っているようだった。

「大和」は第三斉射を放つ。

第二斉射は、第一斉射と同じく敵を捉えるには至らなかった。

「敵斉射に移った模様!」

見張り員から、悲痛な思いを含んだ報告が、伝声管を通して舞い込む。

敵一番艦の、射撃に伴う閃光がこれまでよりも大きかったのだ。

「ようやくか。だが遅い!」

松田千秋艦長が、そう言うのと同時に敵一番艦に「大和」の第三斉射が覆い包むように着弾する。


その瞬間、「サウスダコタ」の艦橋は激震に襲われた。

「何!」

ハルゼー長官はが、叫ぶ。

「艦後部に喰らったようです」

ギャッチ艦長が、冷静に言った。

言外に「まだ、この程度なら大丈夫です」と言ったようにも聞こえる。

事実「サウスダコタ」野戦闘力は落ちていなかった。

敵の放った砲弾は、3番砲塔のさらに後ろに命中したのだ。

その為、駐機場と左舷側のカタパルトが吹き飛ばされた。

だが「サウスダコタ」は、何事もなかったかのように航行を続けている。

幸いにも被害が、機関や舵機室に及ばなかったのだ。

そして、「サウスダコタ」は衝撃から立ち直った直後、第二斉射を放った。

第一斉射は、命中弾を得られなかったのだ。


「命中1!」

の報告が入った時、「大和」艦橋は歓喜に包まれた。

「長官、やりました!」

松田艦長が、そう高須長官に言った。

「良くやった。我が艦隊で最初の命中弾を我艦が得たのだ。旗艦の名に恥じぬ活躍だ」

高須長官も、そう気分を高揚させて言った。

彼らは、一発轟沈なるか?

そう思って敵艦を見るが、さすがにそこまでの幸運は無く、敵艦は整然と何事もなかったかのように、航行を続けている。

少なくとも、機関には被害を与えられなかったようだ。

そうこうしていいる間に、目標が第二斉射を放つ。

だが、「大和」も第四斉射をやや遅れて放つ。

その瞬間やはり、強大な衝撃が「大和」を襲う。

今の所「大和」は自艦の放つ、衝撃だけを浴びていた。

やばい、松田艦長がそう思った瞬間だった。

敵弾の飛翔音が最大になり、今までにない衝撃が「大和」を襲う。

ついに、「大和」も被弾したのだ。

だが、敵主砲弾は弦側一番厚い部分に当たったらしく、水面に落ちてから炸裂した。

敵は、主砲弾が命中したとは思っていないだろう。

「早い!」

松田艦長は思わずそう叫んでいた。

敵サウスダコタ級は、「大和」に先立って第三斉射を放ったのである。

「大和」が主砲弾の装填に、40秒かかるのに対しサウスダコタ級は、30秒で装填を終える。

その差が、今現れたのである。

だが、「大和」も敵砲弾が着弾する前には、第五斉射を放つ。

だがそれからわずかに遅れて、敵弾が「大和」を包み込むように着弾する。

今回は直撃弾を喰らわなかった。

敵もそこまでの射撃精度は持っていないようだった。

そして「大和」が、敵砲弾の立てた水柱を突き崩した頃、第五最初が着弾する。

今度は敵艦の前部に、閃光が光る。

「大和」は連続して命中弾を、浴びせかけたのだ。

第7話完

ようやく戦艦まで来ました

まだまだ終わりません

自分はやっぱ伊勢が好き

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